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家族支援の現場から見た長期連休で意識してほしいこと。

工藤啓認定特定非営利活動法人育て上げネット 理事長
長期連休を理由に子どもにプレッシャーをかけないでほしい(写真:アフロ)

10連休が始まりました。友人と出かけたり、家族で旅行をしたり、または自宅でゆっくり静養するなど、それぞれのお休みを過ごされることと思います。

先日、内閣府が中高年ひきこもりの推計値(61万人)を発表したり、就職氷河期世代の苦境に対し政府が動き出したりと、何かと「ひきこもり」という言葉が頻出しています。

認定NPO法人育て上げネットでは、若者や子どもたちの支援だけでなく、悩んでいるわが子の状況に心を痛めている家族への支援事業を行っています。

さまざまな家族モデルがありますが、日中は職場や学校に行ったり、地域活動に参加している家族も、長期休暇に入るケースもあるのではないでしょうか。普段は自宅にいない父親がいたり、朝昼晩の食事時に家族が全員揃ったりするかもしれません。

それは学校に行っていない子ども、働けない状態にある若者にとっても同じで、日常が非日常空間に変わる可能性があります。長期連休は、何かと家族同士が顔を合わせる時間が増えやすいこともありますので、子どもがつらい状況にある方々に対して意識してほしいことを、支援現場から書かせていただきます。

1. 「休み」を理由にあれこれ提案しない

普段、伝えたいけれど遠慮しているようなことも、「連休なんだから」という理由に乗せて伝えたくなるかもしれません。本人が自ら連休を理由に何か始めることはよくても、日常の生活で言いづらいことを伝えるための理由にしてはいけません。これはお盆や年末年始も同じです。

自分にとっての環境の変化が、家族間の関係性の変化と結びつくわけではありません。むしろ、日頃からコミュニケーションを互いに取りやすい関係にしておくことが大切ですので、現状の関係性やコミュニケーションの状況を振り返ることのできる時間として位置づけられてはいかがでしょうか。

2. 自分のやりたいことをやる

家族相談でよく聞くのは、子どもが動けない状況だから、自分も好きなことをやらないようにしているというものです。趣味のゴルフや旅行、習い事など、家族が楽しみにしているものは本人も知っています。

いつもだったら長期休暇は友人と旅行に行くはずなのに、行かなくなったとなれば、本人は自分の責任であると考えてしまいます。それよりも、やりたいことはやる、行きたいところには行く、という自然な姿は本人の安心にもつながります。

本来は別の理由があっても、家族の急激な変化を本人は自分の責任と結び付けてしまいがちです。長期休暇を楽しむこと、いつものように時間を過ごすことが、本人にとっても安心な環境、安全な関係性につながります。

もし、この時期に本人が新しいことをやろうとしたり、どこかに出かけたりするようでしたら、積極的でも、消極的でもない自然な態度で見守っていただきたいです。

3. ゆっくりと情報収集をする

支援現場への相談は、少なからず切羽詰まった状況になってから来られます。両親の退職や体調不良、子どもとの関係が非常に悪くなってしまっており、うまく思考の整理ができないなかで支援機関に飛び込まれます。

家族の焦りは、本人の焦りにつながります。誰でもいい、どこでもいいという考え方になってしまうのは危険です。支援現場もすべてのケースで力になれるわけではなく、得手不得手があります。また、時間をかけていけばうまくいく可能性の高いケースなどは、「もう少し早くお話を伺えていれば」ということもあります。

いま、公的機関、民間団体に限らず、多くの相談窓口では家族だけの相談も真摯に受けられているはずです。家族のための書籍もたくさん出ていますし、インターネットではたくさんの情報が掲載されています。

情報があふれているからこそ、ゆっくりと情報を収集・整理する。そして「ここなら」と思ったときも、丁寧に周辺情報を加えながら、長期連休が終わったときスムーズに活動できる環境を整えておきたいところです。

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どのような観点で情報を見たらいいかはこちらを参考にしていただければと思います。長期連休は焦らず、押し付けず、落ち着いた環境で今後のことを考えてみられてください。

認定特定非営利活動法人育て上げネット 理事長

1977年、東京都生まれ。成城大学中退後、渡米。Bellevue Community Colleage卒業。「すべての若者が社会的所属を獲得し、働くと働き続けるを実現できる社会」を目指し、2004年NPO法人育て上げネット設立、現在に至る。内閣府、厚労省、文科省など委員歴任。著書に『NPOで働く』(東洋経済新報社)、『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『若年無業者白書-その実態と社会経済構造分析』(バリューブックス)『無業社会-働くことができない若者たちの未来』(朝日新書)など。

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