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ガムは20年で55%減…今世紀のお菓子の販売動向をさぐる(2022年公開版)

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
お店に並ぶ菓子達。その販売実績はトレンドにも多分に影響される(写真:イメージマート)

生活にうるおいを与えてくれる数々のお菓子たち。その販売実績はどのような変化を見せているのだろうか。全国菓子卸商業組合連合会と全日本菓子協会が共同で設立したe-お菓子ねっと製販代表会議運営による「e-お菓子ねっと」で毎年更新の上で公開されている、菓子統計データと報告書から確認する。

直近となる2022年においては新型コロナウイルスの流行と、ロシアによるウクライナへの侵略戦争を主な原因とする資源価格の高騰の影響でお菓子の売れ方が大きく変化した結果、チョコレートが小売金額の観点で最も売れていることに変わりはないが、次に第2位定番の和生菓子ではなくスナック菓子が続いている。

↑ 菓子小売金額(億円)(2022年)
↑ 菓子小売金額(億円)(2022年)

それでは過去はどのような売上高を示していたのか。その推移を示したのが次のグラフ。2001年以降の各種類別売上高を単純に折れ線グラフにしている。

↑ 種類別・菓子の小売金額推移(億円)
↑ 種類別・菓子の小売金額推移(億円)

今世紀の動向としては2007年夏に始まる金融危機、リーマンショックなどの不況、そして2011年の震災やその後の空前絶後な円高不況など、多くの経済的な揺り動かしをもたらす事象が発生し、その影響が多分に生じている。実際、2007年から2008年以降、右肩下がりを示している項目が複数確認できる。とはいえ、短期間で大きな変化は見られない。

一方、20年強の推移を見るに、各種類の好調・不調さが全体の雰囲気からにじみ出ているのが読み取れる。例えばチョコレートは震災以降成長期に入っている、スナック菓子や米菓は2004年以降成長を続けている(米菓は直近で大きく下げているが、主要メーカーの事故で長期にわたり生産が休止したため)、洋生菓子は2008年あたりから減少の動き、チューインガムは2003年以降下落の一途をたどっているなどである。

また2020年で新型コロナウイルス流行による社会様式の変化がもたらしたお菓子の需要変化は、複数の品目で劇的な減少を引き起こしてしまったことが確認できる。特に和生菓子と洋生菓子、飴菓子の減少ぶりが著しい。せんべいも突然失速したような動きとなってしまっている。

今グラフでは元々ベースとなる額面が異なるため、それぞれの種類を一度にまとめているが、個々の種類毎の状況が把握しにくいのは否めない。そこで個々の種類別にもっとも古い値の2001年の売上を基準値の100.0%とし、2002年以降はどのくらいの額に変化したか、つまり「2001年比(前年比ではないことに注意)」をグラフ化したのが次の図。これなら種類別の動向がよく分かる。また直近年の値との変化比率も計算した。

↑ 種類別・菓子の小売金額(2001年の額を100%とした時の値)
↑ 種類別・菓子の小売金額(2001年の額を100%とした時の値)

↑ 種類別・菓子の小売金額(2001年の額を100%とした時の増減率)(2022年)
↑ 種類別・菓子の小売金額(2001年の額を100%とした時の増減率)(2022年)

昔から世間一般に普及しているお菓子の代表格ともいえる「せんべい」は一様に下げ続ける動きがあり、ショックを覚えるものがある。2015年以降は下げ止まったのが幸いか。一方で類似品ともいえる「米菓」は年々順調な伸びを示しており、あるいはシンプルな「せんべい」から、より変化の富んだ「米菓」へと趣向がシフトしている可能性が見えてくる。

さらに2014年から2015年では多くの項目で増加が生じている。これは消費税率の引き上げや原材料の高等化に伴う値上げ、景況感の回復に連動したお菓子需要の増大など複数の要因によるもの。見方を変えればそれらの条件下においても下げ続けている洋生菓子やチューインガムの状況が、極めて好ましくないのも把握できる。

そして2020年の新型コロナウイルス流行で生じたお菓子業界へのダメージが、より鮮明な形で把握できる。折れ線グラフでは不自然な形で複数品目の値が落ち、中でも飴菓子やせんべいは急降下のような形である。特に飴菓子は2001年以降少しずつ伸ばしていた小売金額が、2020年の下落でほぼ吐き出される形となってしまった。それらの動きは2021年においてもほぼ続き、2022年になってようやく回復のきざしが見えてきた程度。

単純に区分をするのも問題かもしれないが、プラス圏とマイナス圏で区分すると、「飴菓子」「チョコレート」「ビスケット」「米菓」「スナック菓子」「油菓子」はプラス圏、「チューインガム」「せんべい」「和生菓子」「洋生菓子」はマイナス圏での推移となる。さらに直上で解説した2007年の景気後退開始以降、「ビスケット」「油菓子」のトレンドが下げに転じた雰囲気を見せ、「チョコレート」は逆にプラスに転じている。その後2012年から2013年以降は景況感の回復とともに、「チョコレート」は伸び方を加速化し(2018年の下げは猛暑によるもの)、「ビスケット」などは減少から横ばいに。景気はお菓子の需要にも少なからぬ影響を与えていることを再確認させられる。

また、「チューインガム」の下落傾向は深刻。20年の間に売上を6割近くも落としてしまっている。高齢化に伴う市場全体における消費性向の大規模な変化も一因だが、幼少期の子供達の間にもガム離れが生じており、原因は年齢構成の変化のみにとどまらない。昨今のガム業界ではしきりに大きなプロモーションを実施したり、奇抜な発想の新商品が送り出されているが、その理由の一端がこのグラフに表れている。

単価が安くて容易に心の安らぎを得られるお菓子類、特に甘味の強いチョコレートなどは、比較的不景気の影響を受けにくい。さすがに砂糖をはじめとする原材料の高騰などは要因として避けられないが、それでも他の小売商品と比べれば、景気による売上減は最小限のものにとどまっている。むしろ売上を地道に伸ばす種類もある。

企業としては利益を得なければならず、売上だけで万事OKではない(極論として売上高経常利益率がゼロなら、いくら商品を売っても利益は無しとなる)。しかし最低限の条件として、売上を得ることが欠かせないのもまた事実。その観点で考えれば、もちろん努力は重ねているとはいえ、「総額」の値がほぼ100%を維持しているお菓子業界は、比較的手堅い業界といえよう(ここ10年ばかりの間は上乗せすら示している)。同時に、ここ数年の上昇は原材料の高騰化や消費税率の引き上げも一因なため、市場規模の金額的拡大は果たしても、収益状況の改善が行えたかについては分からない。

他方、周囲環境の変化による影響も多分に受け、内部的シェアが大きく様変わりしているのも事実。売上を伸ばす種類と落とす種類が二分化する昨今、数年後に各お菓子の種類のシェアはどのように変化を遂げているのだろうか。そのような思いを抱きながらスーパーやコンビニのお菓子コーナーを眺めると、より楽しい買い物ができそうではある。

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(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項のない限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

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(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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