大臣辞職レベル!上川法相の大暴言―「拷問」政策を推進、入管法「改正」問題
迫害から逃れてきた難民や家族が日本にいるなど、母国に帰れない事情がある外国人の人々を、法務省・出入国在留管理庁(入管)が長期拘束している問題で、上川陽子法務大臣から驚愕の発言が飛び出した。現在、無期限に行われている収容について、期間の上限を設定すべきとの国連や弁護士会等の国内外から指摘に対し、上川法相は「収容期間の上限を設けると、送還忌避を誘発するおそれもある」と拒絶。難民その他の外国人を心理的・身体的に追い詰めて心を折り帰国させることが収容の目的ということは以前から当事者や支援者が言っていたことだが、それを暗に認めたかたちだ。これは、本来、逃亡を防ぐ等である送還の収容の目的から大きく逸脱したものであり、「拷問」として憲法や国際法に抵触する可能性がある。
○無期限の収容を容認
日本において、入管がその収容施設での外国人の収容を、裁判所など独立した機関からの判断なしに、無期限に行っていることについて、国連人権理事会の恣意的拘禁作業部会は、国際法で禁じられている「恣意的な拘禁」であるとの意見を昨年9月にまとめ、日本政府に対し改善勧告を行っている。だが、先月閣議決定された入管法「改正案」では、収容期間の上限は設定されていない。これについて、筆者が今月5日の定例記者会見で、上川法相に質問したところ、
との回答だった。だが、これは非常に由々しき問題発言である。まず、収容とは、入管法上、退去強制令書が発令された外国人を送還する際に、逃亡を防ぐため必要に応じて行う措置であるし、入管のマニュアルにも「飛行機待ち・船待ちのため」に行うものであると、書かれている。ところが、帰国を促すために期限を設けず、収容するというのであれば、本来の目的から大きく逸脱しているだけでなく、憲法第18条が禁止する「意に反する苦役」や、拷問等禁止条約第1条第1項が禁止する「拷問」に該当するものであって、この点からも明確に違法であるとの指摘*もある。
*退去強制令書による収容に期間の上限を設けるとともに、人権条約に適合する方法で出国が困難な外国人の問題の解消を図ること等を求める意見書(東京弁護士会)
これまで筆者がいくつも記事を配信してきたように、入管の収容所では被収容者の身体的な自由を奪うのみならず、様々な人権侵害が頻発してきた。被収容者に対する暴行や虐待、セクハラ、差別的な言動や屈辱的な扱いなどのモラハラ等の問題が恒常的に続いている。そのため、精神的に崩壊する被収容者も少なくなく、自殺未遂が頻発し、実際、亡くなってしまった被収容者もいる。
また、収容施設内で適切な医療が受けられないことも深刻で、つい最近も名古屋入管に収容されていたスリランカ人の女性が死亡した件でも、支援者側は体調悪化が著しかった女性への対応を、くりかえし入管側に求めていたのだという。
○そもそも収容してはいけない人々を収容
こうした入管側の対応に対しSNS等ネット上では「不法滞在する方が悪い」と擁護する意見もあるが、そもそも帰国することが事実上無理である人々に対し、法務省及び入管が個別の事情を認めず、収容で精神的・身体的に追い詰めていることが問題なのである。法務省・入管側は「送還忌避者が増えている」と主張するが、2014~2018年までの退去強制の決定における送還率は99.8%だ*。つまり、在留が認められず「不法滞在」であるとして帰国を命じられた外国人の大多数が、実は自ら帰国しているのである。
*「収容・送還の在り方に関する意見書」(日本弁護士連合会 2020年3月18日)
では、劣悪な環境の入管の収容施設に長期収容されてもなお、送還を拒んでいる人々にその理由を聞くと、難民認定申請中であるから、日本人や永住権のある外国人と結婚し、家族が日本にいるから、というものが大多数を占める*。
難民条約に加盟している日本は難民を助ける義務がある。また、日本で結婚していたり子どもがいたりする等の場合は、自由権規約23条1項の「家族の保護」、児童の権利に関する条約3条1項の「子どもの最善の利益」といった日本が加盟している国際条約の観点から、在留を認めるべきなのだ。
つまり、法務省・入管はそもそも収容すべきではない人々を、彼らにとっては事実上無理である「帰国」を強要するため、本来の目的から外れて、著しい心理的・身体的な苦痛を伴う収容を行っており、それはもはや「拷問」に等しいということだ。そうした観点からすると、「送還のためには無期限収容は必要」との上川法相の発言の趣旨は、外国人差別と拷問を政策として容認するものであり、法務大臣を辞職した方がよいレベルの問題発言なのである。
○難民認定審査等の改善が必要
先月、閣議決定された入管法「改正」案は、上述した恣意的拘禁作業部会からの改善勧告は無視する一方で、難民認定申請者を強制送還できる例外規定を新設する(難民条約等、国際法に違反)、送還を拒むことに刑事罰を科すとしている。だが、そもそも「送還忌避者」という前提自体が問われてなくてはならない。上川法相がやるべきことは、他の先進国と比して桁違いに低い難民認定率が問題視されている、日本の難民認定審査のあり方を見直すこと、自由権規約や児童の権利に関する条約に基づいて、在留を認めるべき人の在留を認めることなのだ。
(了)