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史上初の「銀河系外惑星」となる有力候補天体を観測!?

どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。

今回は「史上初の銀河系外惑星の有力候補を観測か」というテーマで動画をお送りしていきます。

太陽系外惑星観測の難しさ

自ら輝きを放つ恒星などの天体と違い、惑星は基本的にそれが公転する主星である恒星の輝きを反射することでしか、光を放つことができません。

太陽系の惑星も全て太陽光の反射のおかげで明るく見えています。

そのため惑星はそれ自体が非常に暗く、しかも恒星と比べて本体自体も小さいので、地球からの距離が遠い太陽系外惑星にもなると、その観測が非常に難しくなってしまいます。

現に初めて中性子星を公転する系外惑星を発見したのが1992年、恒星を公転する系外惑星を発見したのが1995年と、長い天文学の歴史の中で本当に最近の出来事です。

それまではSFの世界の概念に過ぎませんでした。

今でこそ4000を超える系外惑星が発見されていますが、そのほとんどが地球から数光年~数十光年、遠くても数百光年と、宇宙スケールでいえば本当に近所の恒星系の惑星しか基本的には発見されていないんですね。

史上初の銀河系外惑星!?

それだけ暗く発見しにくい系外惑星ですが、今回なんと、私たち太陽系が属する天の川銀河の外にある別の銀河内でその候補が発見されたと大きな話題を呼んでいます!

新発見の惑星は「M51-ULS-1b」と命名されています。

従来から銀河系以外にある恒星系にも惑星があると考えられていましたが、実際にこれまで存在が確定した銀河系外惑星は一つもないので、今回の惑星が本物なら、改めて銀河系外の惑星の存在を示すこととなります。

そして特筆すべきはやはり発見された候補天体の距離です。

ほとんどの系外惑星は天の川銀河内どころか、銀河内でも非常に近所の領域からでしか発見されないので、それが銀河外ともなると本当に大きな発見になります。

それどころか新発見のM51-ULS-1bはその名前に入っている通りM51(通称子持ち銀河)という銀河内にあるM51-ULS-1という連星系内で発見されましたが、M51は地球から実に2800万光年も彼方にあると考えられています!

既知の太陽系外惑星のほとんどが地球から3000光年以内の距離で発見されているので、それらの何万倍も遠方の銀河で惑星が発見されたのは、本当に異例の出来事です。

ユニークな観測方法

Credit:ESO/L. Calçada
Credit:ESO/L. Calçada

そしてM51-ULS-1bは、その発見方法も一般的なものとは異なっていて、注目が集まっています。

観測手法自体は主星の光の周期的な減光から周囲を公転する惑星が前を横切ったと推測する、トランジット法に分類されます。

ですがM51-ULS-1bの場合地球から遠すぎるために恒星の光では弱く、減光を観測することは難しいのです。

そこで今回新発見をした研究者たちは、銀河系外で惑星を発見するためにさらに明るい「X線源」に注目しました。

X線源自体が非常に強力なX線を放つため、遠い銀河にあっても個別で見分けることができます。

さらにX線源は恒星と比べて非常に小さいため、惑星が前を横切るとX線源は大部分、もしくは全部が隠れ、その変化がより顕著に表れるという特徴もあります。

そのため遠くのX線源でもその増減を見分けやすいです。

X線を放つ天体としては、例えばブラックホールもしくは中性子星と、通常の恒星から成る連星系が例に挙げられます。

比較的身近なX線源の例でいうと、はくちょう座X-1がブラックホールと恒星との連星系であると考えられています。

このような組み合わせの連星系だと、通常の恒星から重力が強いブラックホールや中性子星にガスが流れ込み、ブラックホールや中性子星の周囲に超高温で輝く降着円盤が形成され、そこから非常に強いX線が放たれるんですね!

Credit:NASA/CXC/A. Hobart
Credit:NASA/CXC/A. Hobart

そして実際に新発見の惑星M51-ULS-1bが属するM51-ULS-1も、ブラックホールもしくは中性子星と、太陽の20倍程度の質量を持つ通常の恒星から成る連星系であると考えられています。

輝く降着円盤によって、M51銀河内でも最も明るいX線源として知られているそうです!

具体的にはM51-ULS-1は、太陽が放つ全波長の電磁波の10万~100万倍もの膨大なエネルギーを、X線だけで放っているそうです!

これだけ明るければ、遠い銀河でも区別ができるのも納得できます。

Credit:ESA
Credit:ESA

そんなX線源をチャンドラX線観測衛星で観測していたところ、なんと3時間にもわたってX線が何者かによって遮られる瞬間を捉えることに成功しました!

X線を遮ったのが惑星以外の天体である可能性や、降着円盤自体が暗くなった可能性も考えられそうですが、どの可能性もほとんど否定されているため、やはり銀河系外惑星の有力な候補として期待されているんですね!

仮にX線を遮った惑星M51-ULS-1bが実在していた場合、土星とほぼ同じ大きさのガス惑星である可能性が高く、ブラックホールもしくは中性子星から、太陽と土星間の二倍ほどの距離で公転していると考えられています。

候補自体はすでに幾つかある

Credit:ESO/M. Kornmesser
Credit:ESO/M. Kornmesser

実はこれまでにも、アンドロメダ銀河内で1度、そして地球から数十億光年も彼方にあるクエーサーでも1度だけ惑星の存在を示す兆候を観測したことがあります。

ですがそれらは全て、天体の重力によって背後にある天体からやってきた光の進路が曲げられ、瞬間的に本来よりも明るくなる、「重力レンズ効果」によって観測されています。

重力レンズ効果は、地球から見てレンズの役割を果たす天体と、その背後にある天体がドンピシャで一直線で並んだ時だけ起こる現象なので、1度観測すると基本的に二度とその天体でレンズ効果は起こりません。

Credit:NASA/CXC/A. Hobart
Credit:NASA/CXC/A. Hobart

一方今回のM51-ULS-1bは偶然発生した重力レンズ効果ではなく、X線源の減光を調べるトランジット法で観測しているため、再び観測の機会がある可能性もあります。

ただし公転周期の関係から、次に前を横切るのは今から約70年後とのことです。

その間は直接観測によってデータを得ることはできません。

いずれにしてもこれまでの系外惑星の観測例はどれも「候補」に過ぎないので、今回のM51-ULS-1bが確定されれば、史上初めて正式に認められた銀河系外惑星ということになります。

さらに遠い惑星を見つけられるほどに観測技術が高まり、銀河系外にある惑星も多数知られるようになるのが楽しみです!

https://www.esa.int/Science_Exploration/Space_Science/Could_this_be_a_planet_in_another_galaxy
https://www.nature.com/articles/s41550-021-01495-w
サムネイルクレジット:NASA/CXC/A. Hobart

「宇宙ヤバイch」というYouTubeチャンネルで、宇宙分野の最新ニュースや雑学などを発信しているYouTuberです。好きな天体は海王星です。

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