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梅田が「大阪梅田」に駅名変更 阪急阪神の狙いと変更の影響は

小林拓矢フリーライター
「大阪梅田」に改名される阪急の梅田駅(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

 阪急阪神ホールディングスが、傘下の阪急電鉄・阪神電気鉄道の「梅田」駅を「大阪梅田」に10月1日から改名するという。理由としては、沿線外の利用者や訪日外国人が多くおり、大阪の中心部に位置することをわかりやすく示すために改名するという。このこと自体は、異論はない。

 しかし改名はコスト増につながる。駅の案内などを作り直すための費用なども必要だ。これまでは、どうしていたのか。

アナウンスで対応していた

「梅田」は駅のあるだいたいの場所の地名であり、「大阪」は大都市の名前である。このふたつの名前を冠した駅が、梅田エリアには多くある。たいていは「梅田」を名乗っている。梅田・東梅田・西梅田といったぐあいだ。ちなみに阪急と阪神の梅田駅の間に、JRの大阪駅があるという配置である。

 車内の放送などでは「大阪梅田」という案内を行い、それで現実に対応していたといえる。今回の改名は、それを追認したということになる。

利用してもらいたい?

 大阪エリアから、京都もしくは神戸方面に行きたい――その場合には、関西では複数の選択肢がある。京都方面ならばJRの新快速か阪急京都線、あるいは京阪。神戸ならばやはりJRの新快速か、阪急神戸線か、阪神。選択肢があるのだ。自社の鉄道を利用してもらいたいと、鉄道事業者ならば考えるはずだ。

 今回の駅名変更に合わせて、阪神電鉄は河原町を「京都河原町」に改名する。京都のターミナルであることを高らかに示すねらいがあるといってよい。大阪から京都へ向かうJR西日本か、大阪梅田から京都河原町に向かう阪急か。鉄道各社間の競争という背景が見え隠れする。

 一方で神戸方面は、北から阪急が神戸三宮、JRが三ノ宮、阪神が神戸三宮と、すでに名前を変えている。阪急と阪神は、神戸に向かうには自社の鉄道をと、すでにアピールしているのだ。

 こういったことを考えると、わかりやすさを示すと同時に、利用促進のための改名、ということもできるのだ。

興味深いネットの反応

 今回の改名に際して、ネットでは「乗り換え検索への対応なのでは?」という反応もあった。確かに、「大阪梅田」や「京都河原町」では、サジェストされる駅名が検索の段階で違ってくる。しかし、現在の駅名で「大阪から河原町」「梅田から京都」といった入れ替えを行って検索すると、大阪・梅田双方から歩かなければならないことはかんたんにわかってしまうのだ。いまの検索システムではそこまで細かくできている。

 単純にサジェストされるようにするのなら、乗り換え検索の利便性を向上させるのではなく、自社への誘導となってしまう。でも、それはすでに検索のシステム側で対応できている。

だれに便利な駅名であるべきか

 駅名はだれのものか。JR東日本が山手線の新駅を「高輪ゲートウェイ」としたことには、大きな反発があり署名運動も起こった。しかし今回の梅田から「大阪梅田」への改名には、大きな反発は起こっていない。

 駅名は、利用者のものである。決して鉄道会社のものではない。利用促進という側面は見え隠れするものの、「大阪梅田」ということばは普段から車内放送などでは使われ、「大阪梅田」としたほうが利用者にも混乱がないということがある程度理解されているからこそ、広く受け入れられているといえるのではないだろうか。

 利用者にも、毎日のように利用する人、初めて利用する人など、いろいろといる。どの人にも便利な駅名で、わかりやすいということは重要である。検索への対応などの側面もあるけれど、それも「わかりやすさ」という点では、必要である。その意味では、今回の改名は必要だったのではないだろうか。

フリーライター

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒。鉄道関連では「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」などに執筆。単著に『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。共著に『関西の鉄道 関東の鉄道 勝ちはどっち?』(新田浩之氏との共著、KAWADE夢文庫)、首都圏鉄道路線研究会『沿線格差』『駅格差』(SB新書)など。鉄道以外では時事社会メディア関連を執筆。ニュース時事能力検定1級。

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