『仮面ライダージオウ』で注目された紺野彩夏。和太鼓に打ち込む少女たちを描く『藍に響け』で初主演
『仮面ライダージオウ』の敵役で注目された紺野彩夏が映画『藍に響け』で初主演する。人とうまく繋がれない女子高生たちが和太鼓で自分を変えていく青春ストーリーで、誰にも言えない想いを抱えながら部活に加わる役を演じた。クールなイメージの彼女にはハマリ役だったのか? 撮影の裏側と合わせて聞いた。
普段はずっと無表情ではありません(笑)
――紺野さんは子役からキャリアがありますが、最初はモデル志向だったんですか?
紺野 直近の記憶しかないんですけど(笑)、小さいときはモデルの仕事が多くて、ちょっと年齢が上がってから女優と半々くらいになりました。『Seventeen』モデルになりたくて、気持ち的に大きな変化があったわけでなく、スルッと今くらいの比率でできるようになりました。
――何かで女優業への意欲が高まったわけでもなく?
紺野 もともとやりたかったんですけど、もっと演技をしたいと思ったのは、『仮面ライダージオウ』が終わってからですね。同じ役を1年やっていたので、違う役もいろいろやりたい気持ちになりました。
――自分で映画やドラマを観たりは?
紺野 はい、観ます。最近だと『天国と地獄』で、魂が入れ替わる前と後でお芝居が全然違うなと思って。私も『ジオウ』でオーラを演じていたとき、擬態とか派生でいろいろなことをして、そういう演技の面白さは感じていたんです。声やしゃべり方ひとつで全然違う人に見えるのがすごくて、勉強になりました。
――『藍に響け』で演じた松沢環のようなクールであまり笑わない役は、紺野さんの得意なところですか?
紺野 声はもともと高いほうではないですけど、普段はずっと無表情なわけではありません(笑)。もの静かなタイプでもなくて、むしろ笑いのツボが浅くて、1回ハマっちゃうと抜け出すのが大変です。でも、なぜかあまり笑わない役が多くて。
――環はキャラクター的にはハマりました?
紺野 モノをはっきり言うけど、自分の想いは全部内側に隠す子で、気持ちを伝えるのは苦手。私はコミュニケーションは全然取れますけど、人にいろいろ言わないで内に秘めるタイプなので、自分とちょっと似ているかなと思いました。
緊張せずに部活みたいにできたらと
一昨年の冬に撮影された『藍に響け』。松沢環(紺野)はミッション系のお嬢様学校に通う富裕層だったが、父の会社が倒産してバレエをやめることに。友人にも言えず行き場のない想いを抱え、ふと聞こえてきた和太鼓の音に引き寄せられる。叩いていたのは、声帯損傷で言葉を話せない新島マリア(久保田紗友)。和太鼓部に誘われて心を動かされ、入部することになったが……。
――今回は初の主演で、勝負作みたいな感覚もありました?
紺野 いろいろな人に観ていただけたらいいな、というのはありますけど、プレッシャーはあまりなかったです。もともと緊張しないタイプなので。しかもW主演の紗友ちゃんが引っ張ってくれる感じで、私もやることはちゃんとやりつつ、ストーリー通り部活みたいにできたらと思いました。
――その部活でやる和太鼓の習得は難関でした?
紺野 そうですね。部員役の誰も叩いたことがなくて、撮影が始まる前に3ヵ月練習しました。叩く姿勢によって音が変わったり、バチを振り下ろすタイミングや型で音の響きが全然違うことを、まず叩き込まれました。そこから曲を練習していくので、完璧に音が揃うようになるまで結構時間がかかりました。
――劇中のように素振りから始めたんですか?
紺野 素振りはそんなにやっていません。時間がなさすぎて。本当は3ヵ月で仕上げられるものでなかったみたいで、最初から太鼓を前に置いて、鏡で姿勢を見ながら練習しました。
和太鼓で背中が痛くなったり腕が上がらなくなったり
――紺野さんは呑み込みは早いほうでした?
紺野 もともとピアノをやっていたので、音やリズムを取ることには慣れていました。ただ、私は途中まで他のお仕事の関係で、手にマメを作ったらいけなくて、気をつかいながら練習していたんです。環は太鼓を叩いたことがない子だったから、設定的にも最初はマメがあったら良くなくて。スタッフさん全員に「最後の追い込みで持っていった」と言われました(笑)。だから、呑み込みが遅くはなかったと思います。
――どこかが痛くなったりはしました?
紺野 手首とか二の腕から肘の下までが、すごい筋肉痛になりました。あと、体幹を真っすぐにして立たないといけなくて、私は姿勢が悪いから、普段使っていない背中の軸が痛くなったりもしました。
――環が太鼓の音に惹かれた感覚はわかりました?
紺野 オーディションが2回あって、2回めで実際に太鼓を叩いてみたんですけど、稽古場で師匠の方が叩くのを初めて聞いて、「わーっ、すごい!」と思いました。音が体に響く感じで、惹かれるのは何となくわかりましたね。
――劇中ではまず、マリアとケンカしたあとに2人で叩くシーンがひとつの山場でした。何テイクくらいでOKが出ました?
紺野 あそこはリハーサルを何回かして、感情が大事なシーンだったので、本番は1回か2回で終わりました。でも、最後の大会のシーンは、自分たちで吹き替えなしで全部叩いて、朝から夜までずーっと撮っていました。みんな腕が上がらなくなったり、マメが潰れて手が血だらけになったりして、その日は大変でしたね。
――紺野さんの手も血だらけに?
紺野 私はマメはできても硬くなっただけで、血は出ませんでした。腕を上げるのは大変でしたけど、「みんなで作り上げよう」というのがすごくあった作品だったので、そこまで苦しくはなかったです。そこより海のシーンが、冬で寒くて震えちゃうのを止めないといけなくて、苦労しました。
ケンカのシーンは怒っているだけではなくて
――和太鼓に関して「追い込みで持っていった」とのことですが、環も初心者から急にうまくなった感じでした。
紺野 たぶん裏で努力するタイプの子なんです。
――他の部員に「努力が足りないだけに見える」と言うくらいですからね。それにしても、あんなふうにズバズバとモノを言う環を、どう思いました?
紺野 あの状況でああいう子がいたら、気まずいなと思っちゃいますね(笑)。私もわりと思ったことは言うタイプですけど、あそこまではなくて。環は空気を読めないというより読まないので、私があの場にいたら「あーっ……」みたいな顔を絶対しちゃうと思います。
――そんな環の役を自分が演じるうえで、意識したことはありますか?
紺野 途中までは誰にも心を開いてない状態で、部員に心を開き始めてからと差が出たらいいなと思いました。最初は思い詰めて暗い表情が多かったんですけど、途中から熱血タイプになるので。もともとバレエをずっと頑張っていた子だから、そういう一面は持っていたんだと思いますけど。
――言葉を話せないマリアに「太鼓もリハビリも甘いんじゃない?」とも言ってました。
紺野 環はそう言うことで、マリアが立ち上がるのを待っていたので。マリアとのシーンは、そんな意識を根底に置きながら演じました。全体的にはわりと自由にやらせてもらいましたけど、マリアと2人のシーンは環にとって重要で、言い方とか監督と相談して決めました。
――悩んだこともありました?
紺野 マリアと教会でしゃべるシーンは、悩むというより「どうしようか?」とずっと考えていました。ケンカするシーンもバーンといかないといけなくて、どう勢いをつけようかと。
――ああいう取っ組み合いのケンカをしたことはあるんですか?
紺野 1回もないです。私は怒りをバッと出すほうでもないので、「怒ってほしい」と言われると困っちゃうんですよ。環は単に怒っているだけでもなくて、マリアに頑張ってほしい気持ちもないといけないので、その狭間でどう伝えるかを考えながら演じました。撮り終わったときにハーッ……と、何かが抜けた感じがしました。
私は冷めてるタイプですけど熱血は素敵だなと
――環について、好きなところはありますか?
紺野 ひとつのことに熱心に打ち込めるのは、素敵だなと思いました。私自身は熱血タイプでなくて、結構冷めているので(笑)。
――何かにそこまで打ち込んだことはないですか?
紺野 ピアノは高2くらいまでずっとやっていて、頑張ったことのひとつです。あと、『Seventeen』モデルのときは、どういう系統の服を着たらいいかとか、いろいろ研究して一番打ち込みました。その頃は普通の高校に通っていて、撮影に行ってから学校に戻ったりもしていて。両立は楽しくて苦ではなかったんですけど、テスト前に撮影もあったりして、いろいろやり繰りしてました。
――負けず嫌いなところは、紺野さんにもありますか?
紺野 最近はちょっと薄れてきましたけど、小さい頃から負けず嫌いはありました。11歳上の姉がいて、すべてにおいて勝ちたくて。ピアノも姉がやっていたから、始めました。私、おでこに傷があるんですけど、3歳の頃にエスカレーターでお姉ちゃんに先に行かれるのがイヤで、追い抜こうとして1人で隣りのレーンを上がっていって、転んで頭をぶつけたんです(笑)。
――仕事でもそういう意識はあったんですか?
紺野 仕事に関しては昔から、人のことは何とも思ってなかったです。勉強で100点を取りたいとか、そういうのはありました。普通の高校だったので、勉強しないと終わってしまうから、取れるだけの点数は取ろうと。
餃子でテンションが最高に上がります(笑)
――小さい頃から仕事をしていると、環たちみたいに部活をやったことはないですか?
紺野 1回もありません。入りたくても無理だったので。高校で友だちがサッカー部のマネージャーをしていて、「一緒にやろう」と言われたんです。他にも女の子のマネージャーがほしい部活はたくさんあって、誘われましたけど、お仕事で休んでしまうので「すいません」という。
――状況を抜きにすれば、運動部の女子マネをやりたい気持ちはあって?
紺野 やりかったです。それはきっと、みんな憧れるので(笑)。
――今は仕事以外に、課外活動的にしていることはありますか?
紺野 K-POPが好きで、趣味でTWICEさんのダンスをしたりしています。映像を観て練習して。でも、一生どこにも出しません(笑)。
――YouTubeで上げたりは?
紺野 そんなクオリティではないので(笑)、自分で楽しむだけで踊っています。
――仕事的に身に付けたいことはありますか?
紺野 今はトーンが低い役のイメージが強いので、「楽し~い!!」みたいな感情がちゃんと伝わる演技をできるようになりたいです。普段は普通に笑っているので(笑)。
――普段はどんなことで特にテンションが上がりますか?
紺野 K-POPを聴いたり韓ドラを観たり、あとはごはんを食べるときですね。餃子が出たら、もう最高です(笑)。
――高級フレンチとかイタリアンとかよりも?
紺野 餃子が一番好きです。出ると「うわーっ!!」となりますね(笑)。
撮影/松下茜
Profile
紺野綾夏(こんの・あやか)
1999年6月24日生まれ、千葉県出身。
0歳より事務所に所属し、子役として活動。2016年より『Seventeen』の専属モデルに。2018年に『仮面ライダージオウ』で連続ドラマ初レギュラー。その他の主な出演作は映画『ミスミソウ』、ドラマ『そして、ユリコは一人になった』、『L 礼香の真実』、『ボーダレス』ほか。2021年より『non-no』の専属モデル。2021年公開の映画『灰色の壁~歯車~』に出演。
『藍に響け』
監督/奥秋奏男 原作/すたひろ『和太鼓ガールズ』(双葉社刊)
5月21日より新宿武蔵野館、渋谷シネクイント、池袋シネマ・ロサほか全国順次公開