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昨季CLの決勝カードが再び 3度目の正直を目指すアトレティコとスタメン論争が巻き起こるマドリー

森田泰史スポーツライター
ミラノの決勝で対峙したマドリーとアトレティコ(写真:aicfoto/アフロ)

2年連続で決勝の舞台に進めるのは、どちらか1チームだけだ。レアル・マドリーとアトレティコ・マドリー。マドリッドに拠点を置くスペインの両雄が、2日のチャンピオンズリーグ(CL)準決勝ファーストレグで再び激突する。

昨年の5月28日。ミラノで笑ったのは、マドリーだった。悲願のデシマ(クラブ史上10度目のCL制覇)達成から、わずか2年。120分の激闘を終え、PK戦の末にアトレティコを破り、マドリーはウンデシマ(11度目のCL制覇)をクラブのトロフィーコレクションに加えている。

2度にわたり同都市に居を構えるメガクラブにビッグイヤー獲得を阻まれたアトレティコだが、シメオネ監督が就任した2011年12月以降、信じられない勢いで成長を遂げてきたのは事実だ。今回はシメオネ監督にとって、まさに「3度目の正直」となる。

この3度目の正直を前に、異なる点は両者がセミファイナルで顔を合わせることだろう。欧州の頂を巡っての準決勝でのマドリード・ダービーは、CLの前身である1959年のチャンピオンズカップ準決勝以来、実に56年ぶりのことだ。

■シメオネ就任で変わったマドリード・ダービーの“お決まり”

そもそも、シメオネ監督が就任するまでは、ダービーマッチと言えばマドリーに軍配が上がるのが常だった。1999年から2013年までの14年間、アトレティコはダービーで一度もマドリー相手に勝利を挙げられていなかった。

だがアルゼンチン人指揮官招へいから2年後のコパ・デル・レイ決勝で、その不名誉な記録は突如打ち破られる。アトレティコはマドリーを2-1で下してコパのタイトルを掲げると同時に、ダービーの呪縛から解放されたのである。

ダービーの度に流れていた「どうせマドリーが勝つだろう」という冷めた空気は、あの日を境に払しょくされた。アトレティコはその後マドリーに5勝5分け7敗とわずかに負け越しているものの、それまでの対戦成績に比べれば苦手意識は格段に薄まったと言える。

■ミラノの決勝から顧みる不変の力

ミラノの決勝で、シメオネ監督は自身のアルマ(スペイン語で「武器」の意)である4-4-2の布陣を敷いた。GKヤン・オブラク、DFフアンフラン・トーレス、ステファン・サビッチ、ディエゴ・ゴディン、フィリペ・ルイス、MFコケ、ガビ・フェルナンデス、アウグスト・フェルナンデス、サウール・ニゲス、FWフェルナンド・トーレス、アントワーヌ・グリエズマンが先発に据えられた。

センターハーフ型の選手を4人フラットに並べる形はチームに安定感をもたらしている。現役時代にボランチを本職としたシメオネ監督のチームの、大きな特徴の一つだ。そしてトランジット(攻守の切り替え)のスピード、鋭利なカウンター、セットプレーから得点を挙げ、堅固な守備で失点を抑えて勝利するのがアトレティコの“勝ちパターン”である。

今季の序盤戦ではコケがボランチに移ったことにより守備で脆さを露呈する場面もあったが、シーズンを追うにつれてアトレティコは「らしさ」を取り戻していった。昨季の決勝からの変更点はアウグストの代わりにMFヤニック・カラスコがサイドハーフに入ったことくらいだろう。

今回のマドリー戦では負傷離脱しているフアンフランの穴を埋めるため、DFルーカス・エルナンデスがディフェンスラインに組み込まれ、サビッチが右SBを務めることになりそうだ。だが1年前のファイナルから大きな変化はない。その一貫性を基に、“シメオネイズム”を叩き込まれている選手たちが、雪辱に闘志を燃やしている。

■AチームとBチームの論争が巻き起こるマドリー

一方、マドリーは今季の成果を左右する一戦を前に、あるジレンマを抱えている。それはジネディーヌ・ジダン監督がアトレティコ戦で誰を先発起用するのか、という問題だ。

23日のクラシコでバルセロナに逆転負けを喫したジダン監督は、次試合デポルティボ戦でDFマルセロ、ナチョ・フェルナンデスを除き先発を9人入れ替えた。だがこの“Bチーム”がデポルティボ相手に躍動し、敵地リアソールで6-2の大勝を飾って見せた。これを機に、マドリディスタの間ではスタメン論争が巻き起こった。

特にマドリディスタの心を刺激しているのはMFイスコ、マルコ・アセンシオの2選手である。イスコは出場した直近11試合で、8得点4アシストという驚異的な結果を残している。アセンシオはここ数試合で自身の評価を改めさせるプレーを披露し、クラシコでもバルセロナGKマーク=アンドレ・テア・シュテーゲンに何度も好守を強いるなど、存在感を示した。

クラシコでMFガレス・ベイルが負傷したマドリーは、FWカリム・ベンゼマ、クリスティアーノ・ロナウドとの“BBC”を崩さざるを得ない状況に置かれた。アトレティコ戦ではイスコがベイルの代役を務めるとみられているが、先に挙げたアセンシオ、さらにはMFハメス・ロドリゲスやFWアルバロ・モラタなど、“Aチーム”に空いた一枠を“Bチーム”の選手が虎視眈々と狙っている。

ウェールズのカーディフでの決勝までは、あと2試合を残すのみとなった。準決勝ファーストレグはマドリーの本拠地サンティアゴ・ベルナベウで、セカンドレグはアトレティコの本拠地ビセンテ・カルデロンで行われる。マドリッドを統治した者が、欧州王者への権利を得るのである。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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