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新型コロナウィルス ふたごを育てる292家庭の困りごと

工藤啓認定特定非営利活動法人育て上げネット 理事長
(写真:アフロ)

新型コロナウィルス感染拡大防止にかかる大規模な活動自粛要請があるなかで、さまざまな環境下にある個人に影響が出ています。統計データなどから強く影響を受けやすい家庭や個人についても多く触れられている。

これらは研究者や識者がさまざまな形で私たちに「配慮すべきひとは誰か」を教えてくれます。それを見て、「そういう家庭や個人がいらっしゃるんだ、何かできることはあるだろうか」と逡巡します。

しかしながら、そこからさらに深く、日常の困りごとまではなかなか見えてきません。そのような小さな、細部が見えづらい状況に役割を果たし得るのはNPO活動だと考えます。

筆者は無業の若者を支援する活動をしていますが、無業状態の若者がどのような環境、心境であるかまでを見ていくのは簡単ではありません。その際、数万の単位でアンケートを取ることはできなくとも、日々の支援活動で蓄積したデータや声を持っています。

過去、私たちは研究者や企業担当者の力を借りて、無料の若者の状況や状態を「白書」などにまとめて出しています。また、大規模なデータから無業の若者にフォーカスし、個人のエピソードを添える形での発信もしています。

育て上げリサーチ

なかなか大きくは広がらないものの、無業の若者に関心を持った方々からは、「こういうデータがあってよかった」と言っていただけることも多く、一般には見えづらい、理解しづらい分野における声を集め、届ける役割をNPOは担えると考えています。

本日、子育て家庭、特に双子・多胎家庭をサポートする「NPO法人つなげる」が、ふたごを育てる家庭が、新型コロナウィルスによってどのような影響を受けているのか。292名から集めた声を発表しました。

新型コロナウイルス:ふたごを育てる家庭の困りごと - 292名からいただいた声 -
新型コロナウイルス:ふたごを育てる家庭の困りごと - 292名からいただいた声 -

双子家庭の母親275名、父親17名はすべて双子を育てていますが、双子の年齢や兄弟姉妹の有無、これまでの子育て状況、現在(アンケート期間:3月31日から4月8日まで)の状況など、環境や事情はさまざまです。緊急事態宣言が出されていますので、学童や保育園などから自宅でみていく双子家庭は爆発的に増えるのは想像に難くありません。

アンケート公開サイト

今回のアンケート調査でも目を引くのが、自由記述での「困っている事」の解答です。長短ありますが、記載されたすべての声が一覧になっています。そこには双子家庭が置かれた状況を想像、理解することが容易になる悲痛な声があります。

オムツが買えず、やっと見つけたお店で双子分を購入し帰宅途中に他人からあんたみたいなのがいるから必要な人の手元に届かなくなるのよ!と罵声を浴びせられ不愉快だった。シングルマザーで双子育児中の私にとって、コロナの影響で日々恐怖でしかない。もし喘息持ちの自分が感染したら子供達は誰が保護してくれるのか。児童相談所に相談してもはっきりしていない。

普段、保育園へ行ってる3歳長女が、コロナウイルスの影響で、双子の育休に伴い3月初めから家庭保育要請にて家庭保育となりました。まだ歩くのがおぼつかない長女と、腰も座らない双子の3人を連れて出かける事は公園でも難しく、家に引きこもりで発散出来ない長女と、3人育児が長期化でイライラが 溜まっている私で家の中がキリキリしています。

上の子(新小2)がいるので、上の子を運動させたり、勉強させたりしたいが、下が双子なのでなかなか身動きが取れない。例えば、公園で運動させてあげたいが、双子 を連れてとなると、抱っこひもでサッと出られる単胎児と違って、短時間でも双子用ベビーカーを出したり手間がかかる。玄関先でなわとびをさせるにも、「見て」と言われたと きに見に行くとき、単胎児なら抱っこして見に行けるが、そうもできないのでリビングに置いてくることになる。離乳食のストックやよく食べるバナナやパンの減りも早いので、買い出しも行く必要がある(まとめて買っても週2,3は必要)。買い出しに双子を連れて行くのはかなり大変で、感染のリスクもあるので、上の子にお願いして留守番してもらっている。危険はあるかもしれないが、仕方ないのでそうしている。

保育園ですが、日頃在宅で仕事してる人は自宅保育をと言われます。仕事があるときは預かるからと言われましたが、そもそも在宅の仕事なので、なんだかなと。多分で すが、うちの子達は発達が遅く加配対象です。コロナの前も18時30のお迎えでしたが、先生達が参ってるので、17時にお迎えに来てと言われた背景があり、個別でコロナの話をされたのも、手がかかるので自宅保育をしてと言うことなんだなと感じ登園するのも気が引けて睡眠時間を削って自宅保育しながらやってます。ちょっと体力の限界感じます。療育も行かなければ行けませんが、コロナだから悩みます。。。

このような声は、すべての子育て家庭が厳しい環境にある状況下ではなかなか社会に届きません。しかし、小さな声なき声を集めて社会に届けることで、多くの人に実情を知っていただく活動は、NPOが担うべき大切な役割だと思います。

また、本NPOでは、これらのふたご家庭の声から、移動制限や自宅育児での余裕を作るため、必要な物品を届けようとしています。すべての家庭が苦境のなかで、多くのNPOが支え合いのきっかけとして寄付を募っていることもNPOらしい活動のひとつだと言えます。

現在、SNSなどを通じて小さな声を集めるためのアンケート依頼を見ることがあると思います。依頼主体が信頼できるものであれば、ぜひ当事者には協力をしていただきたいですし、小さな声を持つ方に届くように情報の拡散をお願いしたいです。

認定特定非営利活動法人育て上げネット 理事長

1977年、東京都生まれ。成城大学中退後、渡米。Bellevue Community Colleage卒業。「すべての若者が社会的所属を獲得し、働くと働き続けるを実現できる社会」を目指し、2004年NPO法人育て上げネット設立、現在に至る。内閣府、厚労省、文科省など委員歴任。著書に『NPOで働く』(東洋経済新報社)、『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『若年無業者白書-その実態と社会経済構造分析』(バリューブックス)『無業社会-働くことができない若者たちの未来』(朝日新書)など。

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