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2010年代の高校野球番付をつくってみた。横綱は……[選手権編]

楊順行スポーツライター
奥川恭伸(星稜・左)と履正社打線の対決で盛り上がった昨夏甲子園の決勝(写真:アフロ)

「プロ野球が6月19日の開幕へ準備」。一部で、そう報道された。球音が聞きたくてたまらない野球ファンには、久々の明るいニュースだ。かりにこれが現実になれば、開催が不透明な高校野球・夏の甲子園にとっても、フォローの風になるだろう。

 日本高野連では、5月20日の運営委員会で選手権大会の開催可否を協議するという。むろん、新型コロナウイルス感染拡大による非常事態宣言で、5月末まで休校が続く都道府県があり、また球場の確保、感染予防対策の徹底など、開催へのハードルはまだまだ高い。それでもセンバツはもちろん、春季大会も中止となった球児たちにとって、プロ野球の開幕はモチベーションをくすぐってくれるはずだ。

 さてさてこの欄では、4月に『2010年代の高校野球番付をつくってみた。横綱は……[センバツ編]』https://news.yahoo.co.jp/byline/yonobuyuki/20200412-00172735/と題したコラムを掲載している。その続編として今度は、2010〜19年の夏の甲子園、つまり10年代の全国高校野球選手権の成績をまとめてみた。まず、南北北海道、東西東京を含めた49地区の勝ち星上位から。

1 大阪  32勝7敗  優勝4 

2 西東京 19勝9敗  優勝1

  神奈川 19勝10敗 優勝1 準優勝1

  青森  19勝10敗 準優勝2

5 栃木  17勝9敗  優勝1

  宮城  17勝10敗 準優勝1

7 群馬  16勝9敗  優勝1

  埼玉  16勝10敗 優勝1

9 沖縄  15勝9敗  優勝1

  兵庫  15勝10敗

  高知  15勝10敗

12 東東京 14勝10敗

  千葉  14勝11敗

14 石川  13勝10敗 準優勝1

15 福島  12勝10敗

16 岩手  11勝10敗

  福井  11勝10敗

  広島  11勝10敗 準優勝1

  熊本  11勝10敗

20 秋田  10勝10敗 準優勝1

  三重 10勝10敗 準優勝1

  富山  10勝10敗

  奈良  10勝10敗

 センバツ同様、大阪がダントツというのはまあ、予想できたことだ。なにしろ大阪桐蔭が3回、履正社が1回と、10大会中4回も優勝しているのだから。この大阪の強さが、なんといっても10年代の特徴。08年には大阪桐蔭が1回優勝しているものの、00年代の10年間では通算15勝(それでもまあ、強いことは強い)にすぎなかったのが、10年代は倍増している。

 10大会で5割以上、また10勝以上というのは上記の23地区まで。多くはセンバツのランキングと重なるけれど、愛知や京都がランク外で、両者は春はともかく、ここ10年の夏はあまりふるわなかったことがわかる。2位の西東京や神奈川はありだろうが、青森がここに食い込んでいるのがすごい。なんといっても田村龍弘(現ロッテ)、北條史也(現阪神)らがいた11、12年、連続準優勝(12年センバツも含めれば3季連続準優勝)を含めた八戸学院光星の15勝が利いている。ほかには16年に作新学院が優勝した栃木、13年の前橋育英(群馬)、17年花咲徳栄(埼玉)と、優勝校を出した関東勢が上位に目立つ。

 昨夏、奥川恭伸(現ヤクルト)らで準優勝した星稜の石川が躍進したのはわかるとしても、意外なのは福島、岩手、秋田、三重、富山らのランクインだ。いずれも、歴代の甲子園通算勝利数では下位。三重と秋田が37、38位で、岩手、福島、富山は47都道府県中いずれも40位台なのだ。逆に、かつて野球王国といわれた四国・香川が3勝止まりというのは、地域格差が解消していることのあらわれか。特異なのは福島で、夏は聖光学院が07年から13年連続出場中だから、勝ち星のすべては聖光によるもの、ということになる。それをいえば栃木も、9年連続出場中の作新が全17勝、宮城は17勝中仙台育英が16勝、高知も明徳義塾が15勝中13勝と1強状態だ。岩手は盛岡大付6勝、花巻東5勝と、2強が伯仲。富山では、4勝の高岡商を中心に富山第一、富山商も健闘している。

 そのあたりを踏まえて、チーム別の順位を見てみると……。  

1 大阪桐蔭   21勝2敗 優勝3

2 作新学院  17勝8敗 優勝1

3 仙台育英  16勝7敗 準優勝1

4 八戸学院光星 15勝6敗 準優勝2 

5 明徳義塾  13勝9敗

6 花咲徳栄  11勝5敗 優勝1

7 東海大相模  10勝3敗 優勝1準優勝1

8 履正社  9勝2敗  優勝1

  日大三  9勝3敗  優勝1

  興南  9勝3敗  優勝1

  前橋育英  9勝4敗  優勝1

  関東一  9勝4敗

13 常総学院  7勝3敗

  済美  7勝3敗

  星稜  7勝5敗  準優勝1

  敦賀気比  7勝5敗

  鳴門  7勝8敗 

 ここまでが上位17校。それにしても……大阪桐蔭のなんという強さ。5回出場して3回優勝というのは尋常ではない。むしろ、夏の甲子園に出るまでのほうが難関といえる。出ることさえかなえば1大会あたり4勝以上する計算で、勝率にして9割を超えるというのは、白鵬以上の大横綱だ。以下、各地区の10年代選手権通算成績と、おもなチームの勝敗をあげてみた(既出除く)。

頑張れ! 北北海道と山陰

北北海道 1勝10敗

南北海道 5勝10敗 北海4勝4敗(準優勝1)

山形   8勝10敗

茨城   7勝10敗 

山梨   8勝10敗 東海大甲府6勝3敗

新潟   8勝10敗 日本文理5勝5敗 

長野   4勝10敗

静岡   3勝10敗 常葉大菊川3勝3敗

愛知   7勝11敗 

岐阜   7勝10敗 中京学院大中京4勝2敗

滋賀   9勝10敗

京都   6勝10敗

和歌山  6勝10敗 智弁和歌山5勝7敗 

岡山   7勝10敗

鳥取   2勝10敗

島根   2勝10敗 

山口   7勝10敗 

香川   3勝10敗

徳島   8勝10敗

愛媛   7勝10敗 

福岡   6勝11敗

佐賀   4勝10敗

長崎   4勝10敗

大分   3勝10敗 明豊3勝3敗 

宮崎   9勝10敗 延岡学園5勝2敗(準優勝1)

鹿児島 8勝10敗

 ここでも、かつては野球後進県といわれた山梨、新潟、宮崎の頑張りが目立つ半面、静岡や香川あたりの低調ぶりが寂しい。10年間勝ち星なし、という地区はなかったが、北北海道と山陰の巻き返しにも期待だ。もちろん、感染拡大防止に気を配りながら、金属バットの快音が聞こえてくる日を楽しみにしよう。

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は64回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて55季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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