木村拓哉主演『レジェンド&バタフライ』入門 織田信長を狙撃した男の衝撃の末路
木村拓哉さん主演映画『レジェンド&バタフライ』(以下、『レジェンド』と略記)が公開されています。木村さんが演じるのは、戦国大名の織田信長。話題の映画ですので、既にご覧になった方も多いかもしれません。『レジェンド』では描かれることはありませんでしたが、実は信長、暗殺の対象となったこともあるのです。
元亀元年(1570)4月の越前・朝倉氏攻めの途上、突如として起こった北近江(滋賀県北部)の浅井長政の裏切り(長政には信長の妹・お市が嫁いでいました)。信長は家臣の羽柴秀吉・明智光秀らを金ヶ崎城に入れて殿軍(しんがり。部隊の後尾で敵襲に備える部隊)として残し、自らは京に向けて退却。月末には、無事に都に到達します。そして、5月9日には、岐阜に帰ろうとするのです。
信長は近江国に入ると、浅井長政に対抗するため、家臣たちを砦や城に配します。一方、長政も鯰江城(東近江市)に軍勢を入れたり、村人をそそのかして一揆を起こしたりして、信長が岐阜に帰ろうとするのを止めようとするのです。
よって、信長は伊勢経由で岐阜に帰ろうと千草越(近江と伊勢を結ぶ街道)を敢行します。が、その千草山中で事件は起こります。杉谷善住坊という者が、鉄砲で信長を狙撃したのです。
信長の運命は如何にというところですが、鉄砲玉は信長の体をかすっただけで大事には至りませんでした(その後、信長は無事に岐阜に到着)。善住坊という男の素性は謎に包まれていますが、『信長公記』(信長家臣・太田牛一が記した信長の一代記)によると、鉄砲の名手であり、信長暗殺は、六角承禎に依頼されたようです。
かつて南近江を支配した六角氏。が、承禎は信長の上洛戦(1568年)に抵抗し、蹴散らされていました。信長に遺恨を持っていたことでしょう。
さて、善住坊ですが、逃亡生活を送るも、天正元年(1573)9月頃に、捕縛されてしまいます。そして9月10日に岐阜に連行。善住坊は信長を狙った経緯について尋問された後、処刑されます。
しかも、その処刑法というのが、残忍でした。善住坊を生きたまま、首だけ出した状態で土中に入れ、首をノコギリで挽かせたのです。『信長公記』には「思食すままに御成敗遂げられ、(中略)日ごろの憤りを散ぜられ」とありますので、信長がこの処刑法に満足していたことは間違いありません。
信長の「暗黒面」と言えるかもしれませんが、同書は「上下一同、これ以上の満足はなかった」とも書いていますので、これは戦国の気風と言うべきかもしれません。