韓国ーアルジェリア プレビュー 日本からはどう見る!?
ここまで盛り上がりに欠けたW杯
少し長い前置きを。
23日に行われるグループリーグ第2戦アルジェリア戦で「ようやく韓国が盛り上がってきた」という話だ。
大会開始直前、6月10日のことだ。
韓国メディアの担当者とやりとりとしていたところ、こんな返事が来た。大会期間中に東京からのコラムを韓国語で書きたい、という交渉の答えだ。
「いやーなかなかワールドカップの雰囲気にならないんですよ。ちょっと難しそうです」
致し方ない面もあった。4月16日のセウォル号沈没事故の2週後、現地を取材したが、サッカー界も強い影響を受けていた。Kリーグのスタジアムでサポーターが応援を自粛し、拍手と歓声で試合が展開する風景を目にした。5月8日のホン・ミョンボ代表監督による大会最終エントリー発表時にも、監督自ら事故の話題を取り上げ「若い選手を多く選んだ。彼らが躍動して希望を与えられるようにしたい」と口にするほどだった。
チームの不振もそこに拍車をかけた。大会直前までのテストマッチ5試合の結果は●●○●●。国内での壮行試合となった5月28日のチュニジア戦でまさかの0-1の敗北。ここからホン・ミョンボに対する批判もメディアに登場し始めた。6月8日のガーナ戦は0-4の完敗。同国ワールドカップ史上最悪と言われるほどの悪い雰囲気となった。テレビ局が試合の振り返り映像を流すや、Twitterでは「わざわざほじくりかえすな」という声が挙がるほどだった。
日本との対比
そうやって迎えた大会初戦・ロシア戦(18日)は1-1のドローで「結果」を残した。前回、ここでも書いた通りロングキック、当てずっぽうにも見えるシュートの繰り返しから68分に相手GKのミスを誘い先制。74分にCBがクリアをしきれなかったところを詰められてのドローだった。
ここでようやく雰囲気が盛り上がりを見せ始めた。サッカーニュースサイト「フットボーリスト」の記事が国内最大ポータルサイトNAVERで大きく取り上げられた。
「揺れる伏兵 アルジェリアを捕え、ベスト16へ!」
昨年12月のファイナルドロー発表時には、国内メディアはこぞって「無難な組み分け」と発表した。いっぽうで超強豪国のいない分、「展望のしにくい組」という難点があった。ロシア? ヨーロッパ予選での結果は悪かったが、カペッロがいるから不気味。アルジェリア? 情報がない。ベルギー? 日本に負けた。いざ蓋を開けてみないとその強さが実感できないという。
ロシアに引き分け、ようやく「予選突破」へのチャレンジ権をはっきりと手にしたというところだ。
国内メディアのプレビューのなかで目を引くものがあった。「Four-Fourr-Two」韓国版が試合をこう展望した。
「ご存じのとおりアルジェリアは初戦のベルギー戦で守備的戦術を採ってきた。韓国戦でも同じやりかたか、あるいは勝ち点3を取りに攻撃的に出てくるか。それによって韓国のやり方も違ってくる」
改めて、今大会の韓国が「リアクションサッカーに徹している」という点を思い知らされる。「自分たちのやりたいサッカーを表現する」と大会に挑んだ日本とは好対照。観戦ポイントのひとつとして頭の片隅に入れておいて損はない。
196センチFW投入は!?
韓国は初戦のロシア戦と同じ先発ラインナップが予想される。
GKはチョン・ソンリョン(スーウォン)は昨年末のスランプに加え、テストマッチガーナ戦での4失点でも大きな批判を浴びた。ミスを犯せば次戦の保証はない状況だ。
DFラインは右からイ・ヨン(ウルサン)、ホン・ジョンホ(アウグスブルグ=ロシア)、キム・ヨンクォン(広州恒大=中国)、ユン・ソギョン(QPR=イングランド)。
ロシア戦では両サイドバックが攻撃参加する機会がほとんどなかった。「Four Four Two」はアルジェリアの初戦の攻撃を綿密に分析し、「相手の右サイドからのクロス精度が高い」と分析している。左サイドバックのユン・ソギョンはCBも兼任できる「守備型」のSDだけにここの攻防がポイントになるだろう。初戦のロシア戦で負傷のため途中交代したホン・ジョンホの状態に問題はなく、先発のピッチに立ちそうだ。
MFはボランチにハン・グギョン(柏)、キ・ソンヨン(サンダーランド/イングランド)が入る。ハンのボール奪取力はいまや、韓国代表の守備の核。Jリーグ勢のプレーぶりにも注目だ。
2列目はチームのスター選手が揃う。右からイ・チョンヨン(ボルトン=イングランド)、ク・ジャチョル(マインツ)、ソン・フンミン(レバークーゼン=以上ドイツ)。アルジェリア戦を前にトレーニングを休んだイ・チョンヨンの疲労骨折説が飛び交い、一時メディアを騒がせた。これについてホン・ミョンボは「推測の記事を書くべきではない。韓国国内にいる記者からの記事発信もあったようだ。いったい何が分かる?」と一蹴した。中盤では、ボランチのハ・デソン(北京国安)、初戦でゴールを決めたイ・グノが控える。
1トップは再びパク・チュヨンが入るか。今季所属チームでほとんど出番がなく、今回の代表招集でも物議を醸した。このポジションでは、196センチのキム・シヌク(ウルサン)にいまだ出場機会がなく、大きな注目を集める。キムが入ると、高さという明確なストロングポイントが出てくる反面、よりロングボールに頼る傾向が出てくるため、ボールを失う頻度も高くなりがちだ。この「諸刃の剣」をどう扱うか。注目ポイントのひとつだ。
じつは”この手”の相手に弱い韓国
韓国にとってのアルジェリアはいうまでもなく「勝ち点3を計算したい国」だ。いっぽう韓国は歴代のワールドカップでこういった力が均衡すると見られる国にた対して、取りこぼしが多い。
94年アメリカワールドカップでは、ボリビアを相手に0-0のドロー。ファン・ソンホン(現ポハン監督)がシュートを外しまくり、韓国サッカー史上初のワールドカップ勝利を逃した。ファン・ソンホンは当時を振り返り、「あの時期の自分は、韓国社会で金日成の次に文句を言われたんじゃないかと思うくらい、叩かれた」と口にしている。
98年大会ではベルギー(当時は弱小とみなされた)相手にチャンスを多く生みながら1-1のドロー。02年大会はアメリカ相手に同じく1-1。強者には強いメンタルで立ち向かうが、少し抜けてしまうという面があるか!? 結果はいかに。