SMAP解散における商標権問題について
本当の話なのか、単なる牽制のためのリークなのかはわかりませんが、キムタク以外のメンバーのジャニーズ事務所独立に伴い、SMAP解散の可能性が出てきました。余談ですが、このジャニーズ事務所の騒動、カリスマ経営者が老いるにしたがって経営者親族派と現場派の軋轢が増すというどの同族会社にもみられそうな構図ですね。
さて、仮にSMAPの一部メンバーがジャニーズ事務所を離れた時に、商標的にどういう問題が生じ得るのか検討してみましょう。
当然ではありますが、ジャニーズ事務所は、SMAPという商標の商標登録を所有しています。第2286334号、第2297874号、第2340431号、第3047285号、第5387025号、第5389940号です。グッズ販売を想定して広範囲の商品が指定されています。
ここで知っておきたい大前提として、現在の日本の特許庁の運用では、アーティスト名はCDを指定商品としては商標登録できません。商品や役務の質を表わすにすぎず商標としての機能(出所表示機能)を発揮しないとみなされるからです。したがって、CD等の商品を指定してアーティスト名を商標登録出願しても拒絶されます(参考文献)。Tシャツ、お菓子等々、音楽に関係ない商品であれば問題ありません。これは世界的にも珍しい運用です。
ちょっと前には、レディーガガの商標登録出願がこれを理由にCDを指定商品とした部分で拒絶され、知財高裁で争われましたが結局商標登録はできませんでした(これについて以前書いた弊所ブログ記事(その1)(その2))(余談ですがこの記事について某テレビ局から取材があったのですが放映はボツになりました、商標制度のコアに関する話でテレビでやるにはちょっと難しすぎたからだと思います)。
しかし、SMAPの商標登録第2286334号では「レコード」が指定商品として登録されています。これは、これらの商標の出願がそれぞれ1988年であり、まだ上記運用が確定していなかったためです。おそらく、現在ではこれらについては商標権としての効力はないでしょう(侵害訴訟を提起しても認められないでしょう)。もちろん、グッズ系については問題ありません。
ということで、独立メンバーがSMAP類似の名称(たとえば、”SMAPマイナスワン”)を名乗ってCDを出すことは”商標権的には”問題ないと思います。グッズ系についてはちょっと微妙です。とは言え、そのような行為(独立後にSMAP類似の名前を名乗る行為)はおそらくはジャニーズ事務所との間のアーティスト契約で禁じられているでしょうし、そもそも業界の掟としてそんなことをするわけはないので、商標権うんぬんの話以前にあり得ないでしょう(だったら商標権の話など最初からするなと言われそうですが、上記のCDのアーティスト名は日本では商標登録できないという件を紹介したかったので敢えて論じてみました)。
なお、独立したメンバーがテレビ出演の際等に元SMAPと形容されることは商標権的には問題ありません。ここでの”SMAP”の使い方は商標的使用(商品の出所表示のための使用)ではないからです(テレビ局がビビってSMAPの名前を使わない可能性は十分あるでしょうが)。