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朝ドラ「おむすび」感動の逆プロポーズも、支持する声、しない声、何が評価を分けたのか #専門家のまとめ

木俣冬フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人
(写真:2017 TIFF/アフロ)

朝ドラこと連続テレビ小説「おむすび」(NHK)の24年の最後の回は主人公・結(橋本環奈)が彼氏の翔也(佐野勇斗)に逆プロポーズ。従来なら視聴者が一斉に祝福しそうな展開だが、これまでの朝ドラファンからはSNSを通して戸惑いの反応が見られる。なぜか。「おむすび」は平成ギャルと栄養士が題材。栄養士は「食」がテーマで普遍的だがギャルは好き嫌いが分かれるどころか関心の有無が極端で、興味のない人にはまったく響かず、みんなでわいわい話題にしづらいのである。各媒体、どんな切り口で記事化しているのか見ていくとーー

ココがポイント

SNSでは「素敵な回すぎて号泣」「これは間違いなく名場面として残りますね」といった声が上がっていた。
出典:MANTANWEB 2024/12/27(金)

『おむすび』というドラマの最大の問題点は、この主人公の「どうすればいいかわからない」という苦悩を許容し続けていることです
出典:サイゾーオンライン/視点をリニューアルするニュースサイト 2024/12/27(金)

見ている方にも、若い時の恋愛って真っ直ぐだったなって思い出してもらえるような、そんな2人を見せたくて。
出典:ステラnet 2024/12/27(金)

すぐに答えを出さないというスタイルは『おむすび』に限ったことではなく、前作『虎に翼』にも取り入れられたものだと思うのだ。
出典:Real Sound|リアルサウンド 映画部 2024/12/28(土)

エキスパートの補足・見解

SNSでの好意的な意見を拾う記事があれば、物足りない点を徹底的に突いていく記事も。不満がある層は、物語の展開や登場人物の言動が常識的ではなく許容できないという言い分である。それもわかる。だが、それこそが『おむすび』の狙いであり、『「どうすればいいかわからない」という苦悩』と指摘されるものを、ドラマはあえて描いているのではないだろうか。

朝ドラは、主人公がしかるべき職について成功するものが好まれる。成功するために必要な努力や考え方にうんうんとうなづきたいし、仕事のみならず、結婚についても、ゴールへの道筋が最適なものを、ストレスなく見たいのだ。だが『おむすび』は迷いを描いているため、なんでそうなるの?といらいらしてしまう。

でも、橋本環奈さんがインタビューで語るように「若い時の恋愛」というものを思い出すと、最適解ばかりではなかったはず。若気の至りというように、なんであんなことを言ったりやったりしちゃったのかという経験は誰もがあるはず。人は、それを乗り越えて正解や良識を手にするわけで。2025年は、ああでもないこうでもないと試行錯誤する青い時間をおおらかに見る余裕が誰もに生まれることを祈りたい。

フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人

角川書店(現KADOKAWA)で書籍編集、TBSドラマのウェブディレクター、映画や演劇のパンフレット編集などの経験を生かし、ドラマ、映画、演劇、アニメ、漫画など文化、芸術、娯楽に関する原稿、ノベライズなどを手がける。日本ペンクラブ会員。 著書『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』、ノベライズ『連続テレビ小説 なつぞら』『小説嵐電』『ちょっと思い出しただけ』『大河ドラマ どうする家康』ほか、『堤幸彦  堤っ』『庵野秀明のフタリシバイ』『蜷川幸雄 身体的物語論』の企画構成、『宮村優子 アスカライソジ」構成などがある

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