勝った方が五輪に出場。

そんな大一番が明日28日に国立競技場で行われる。

パリ五輪女子サッカーのアジア最終予選に臨んでいるなでしこジャパン。対戦国は北朝鮮で、24日に行われた第1戦（サウジアラビアで行われたが北朝鮮ホームゲーム扱い）を0－0のスコアレスドローで終えた。予選突破のレギュレーションが「2試合合計スコア」のため、明日の試合に勝った方がパリ五輪への出場権を得るのだ。

ところが、前売りチケットはアウエー側（北朝鮮応援団）の方が多く売れているという。在日コリアンの大応援が繰り広げられそうなのだ。

それはいかん。せめて「相手もガチ」という点を探りに試合前日の国立競技場を訪れた。監督には前日の会見出席の義務があり、幾ばくかの言葉が聞けるだろうという予測があった。

17時からの会見に出席したリ・ユイル監督はまず、抱負をこう口にした。

「明日の試合の重要性に関しては、私も含めましてもうこれ以上言うことはないと思います。選手たちも、私自身も十分に承知しています。 明日は同胞（在日コリアン）の皆さんが大勢応援に駆けつけてくださると聞いているのでベストを尽くして、いい結果を出したいと思っています」

リ監督は24日のサウジアラビアでの試合では質問を2つしか受け付けなかったという。筆者からは何はさておき、「明日の煽り」を朝鮮語で直接聞いてみた。

―双方、パリ五輪に出たいという切実な気持ちは同じだと思います。（北）朝鮮チームにとって、必ず出なくてはならない理由、切実さとはどんなものなのでしょうか。※韓国語との違いはパリの「パ」の音にある程度。北のほうがちょっと強く発音する。

「理由というのはどの国もすべて同じではないでしょうか。日本のチーム、そして朝鮮のチーム、ともに胸に国旗を掲げて試合に臨むわけです。言うなれば、国を代表して戦うということで、 自分の国の名誉のためにも必ずパリ五輪に出場して、自分たちの能力を十分に発揮をしたいという気持ちは皆同じであるという風に思います。また、サッカーに関わる者としていいますと、朝鮮のサッカーの発展のためにも、こうした大きな舞台に立つことによって多くの国々と競い合い、いい成績を残し、たくさんの経験を積むこことが、朝鮮のサッカーの未来にとっても、非常に重要な経験ができると思っております。どの国も、理由は同じだと思います」

この後、リ監督は5つほど質問に答えた。日本の注目選手に「欧州でプレーする選手が多い」としながら長谷川唯の名前を挙げた。

いっぽう、前売りでは日本サポーター側より多い3000枚が売れているという状況についてはこうも。

「明日は3000名にも上る応援団が、競技場を埋めてくれるという私も含め、選手たちもまるで異国に来たのではなくて、ホームでやるような、 自分の家に帰ってきたような、そのような温かい気持ちになると思います。この応援に応えるためにも、明日は最善を尽くしていい結果を残したいと思っています」

この日は思ったよりも多くの質問に答えたリ監督。ジッダで行われた初戦についてもこう分析して見せた。

「初戦が終わった後に試合内容について分析を行いました。 一通り見たところ、やはり私たちの方でも攻守にわたって足りない部分、ミスを犯してた部分というものが発見されました。これをしっかりと立て直して、修正をして、明日の試合では最大限そこを埋め合わせて全力を発揮したいと思っています」

なお会見では現場にいた韓国メディアが北朝鮮のことを「北韓（プッカン）」と発言。これに対してリ監督が「国号を正しく言わない限り質問を受け付けません。北韓とは何ですか？」と言い返す一幕も。韓国記者は「では国号を言わずに質問を続けます」と返したが、雰囲気は非常に悪くなった。明日の試合のことを聞く場で「南北の争い」が始まってしまったのだ...。

会見の後、選手たちは国立競技場のピッチでトレーニングを行い、冒頭15分が公開された。そのなかでハーフコートをさらに左右に分け、全体でボールを複数入れつつ2チーム＋2チームでのパスゲームが行われていた。細かいパス展開から、大きくサイドを変えるトレーニングをしているように見えた。

練習後のミックスゾーン（共同取材エリア）では、「いつもの風景」が繰り広げられた。選手たちに「お話をお聞きします」と声をかけてもスルーされる。監督会見では24日の初戦前まで「中国の暖かいところで20日以上合宿していた」と明かされたが、この地名を事実確認しようと選手に聞いたところ…北朝鮮代表帯同の男性スタッフの怒号が飛んだ。

あああ。北朝鮮に「ここがホーム」などというのは許したくない、と強く思った。明日試合は18時30分から国立競技場でキックオフ。当日券はオンライン発売のみで、19時30分まで発売される。

こちらから。