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台風一過の美濃で40.0度 記録的な暑さの昨年を上回る今年の暑さ 40度超はすでに9地点と最多2位

饒村曜気象予報士
太陽(写真:イメージマート)

日最高気温の記録

 お盆明けの8月16日、台風7号の襲来により、東日本から東北地方は、暴風と大雨により大きな影響がでています。

 東海道新幹線の名古屋と東京間が終日運休したり、羽田発着の国内線・国際線などの欠航が相次ぎ、高速道路も東京湾アクアラインなどで不通区間が発生しています。

 一方、台風の影響がなくなった東海から西日本では、台風が持ち込んだ暖気に強い日射が加わって気温が上昇しています。

 このため、岐阜県・美濃で40.0度、高知県・中村で39.8度を観測しています。

 今年、令和6年(2024年)は、栃木県・佐野で41.0度という歴代3位の高温記録を観測したのをはじめ、これまで8地点で40度以上を観測していますので、美濃の40.0度は9地点目になり、すでに、年間最多2位となっています。

 そして、一位の平成30年(2018年)ののべ17地点に向かって記録を積み重ねています。

 日本での日最高気温の記録は、令和2年(2020年)8月17日に静岡県・浜松と、令和元年(2018年)7月23日に埼玉県・熊谷で観測した41.1度です。

 この他、40度以上を観測したのか38地点、複数観測している地点もありますので、のべでいうと、8月16日の美濃を含めて78地点ということになります(表1)。

表1 日本での40度以上の日最高気温の記録(複数ある場合は最も高い値を記載)
表1 日本での40度以上の日最高気温の記録(複数ある場合は最も高い値を記載)

 今年、8月16日までの78地点を県別に見てみると、群馬県と新潟県が5地点、静岡県が4地点、山形・埼玉・岐阜の各県が3地点と、内陸部の県や日本海側の県で多くなっています。

 のべ地点数でいえば、一番多いのが岐阜県で、のべ16地点です。これには、多治見が8回も40度超えしているのが大きく効いています(図1)。

図1 都道府別の40度を超えた地点数(のべ)
図1 都道府別の40度を超えた地点数(のべ)

 地点別では多治見に次ぐのが岐阜県の美濃で6回です。

 群馬県の伊勢崎で5回、群馬県の舘林、埼玉県の熊谷、山梨県の甲府、高知県の江川崎でおのおの4回観測しており、これらの都市が暑い都市の代表といえるでしょう。

 令和6年(2024年)は8月16日までに40度を超したのは、9地点ありますが、静岡県・静岡、栃木県・佐野、茨城県・古河、三重県・桑名の4地点がはじめての40度超えを観測しました。

【2024年の40度以上の観測】
40.0度  静岡県・静岡  7月7日
41.0度  栃木県・佐野  7月29日
40.2度  群馬県・館林  7月29日
40.2度  静岡県・天竜  7月29日
40.1度  群馬県・伊勢崎 7月29日
40.0度  埼玉県・熊谷  7月29日
40.0度  茨城県・古河  7月29日
40.4度  三重県・桑名  8月9日
40.0度  岐阜県・美濃  8月16日

 40度超えを観測する地点数が増えてきたのは、ここ10年くらいです。

 平成26年(2014年)以降、新たに40度以上を観測したのが23地点と、全38地点の61パーセントを占めています。

 8月17日は、関東地方も台風一過となり、台風が持ち込んだ暖気に強い日射が加わり、湿度が高い危険な暑さになる見込みです。

 関東北部では、40度以上を観測するところもありそうです。

県庁所在地別の日最高気温

 県庁所在地別の日最高気温の平年値を見ると、一番高いのは京都の34.3度で、大阪の34.1度が続きます。

 反対に一番低いのが、札幌の27.2度、次いで青森の28.3度です(図2)。

図2 日最高気温の平均値が高い10府県と低い12道県
図2 日最高気温の平均値が高い10府県と低い12道県

 近畿地方や内陸の県で日最高気温の平年値が高く、北日本や北陸、関東沿岸部で低いという特徴があります。

 ただ、これまでに観測した最高気温の極値となると、少し分布は違います。

 これまで40度以上を観測している、山形(40.8度)、甲府(40.7度)、名古屋(40.3度)、前橋(40.0度)が上位にきますが、東京も39.5度と9位に入ってきます(図3)。

図3 日最高気温の極値が高い11府県と低い10道県(令和5年(2023年)までの極値)
図3 日最高気温の極値が高い11府県と低い10道県(令和5年(2023年)までの極値)

 東北日本海側と北陸では、平年の最高気温は低いのですが、最高気温の極値となると上位に入っています。

 逆に、最高気温の極値が一番低いのは那覇(35.6度)で、札幌(36.2度)、青森(36.7度)よりも低くなっています。

 北日本では、ときおり、沖縄の最高気温より高い気温が観測されているのです。

 というのが、これまででした。

沖縄の猛暑日

 沖縄県の那覇は、明治23年(1890年)に観測を開始していますが、大正12年(1923年)と、昭和19年(1944年)~昭和25年(1950年)の8年間が欠測ですので、令和5年(2023年)までに126年分の観測データがあります。

 この長年の観測期間で、日最高気温は平成13年(2001年)8月9日に観測した35.6度で、最高気温が35度以上となったのは17日(約7年に1日)しかありません(表2)。

表2 令和5年(2023年)までの那覇の日最高気温の記録(大正12年(1923年)、昭和19年(1944年)~昭和25年(1950年)の8年間が欠測)
表2 令和5年(2023年)までの那覇の日最高気温の記録(大正12年(1923年)、昭和19年(1944年)~昭和25年(1950年)の8年間が欠測)

 しかも、このうち8回は、大正5年(1916年)7月の観測ですので、那覇での猛暑日はほとんどの年では観測していません。

 沖縄は、海風の影響で気温が上がりにくいうえに、陸地が狭いために熱がたまらないからと言われています。

 しかし、今年、令和6年(2024年)は少し違います。

 沖縄近海の海面水温が30度以上と高くなり、夜間になっても気温があまり下がらず、7月13日に36.0度を観測して最高気温の記録を更新したのをはじめ、7月に8回も猛暑日を観測しています。

 このため、前述の表2の半分が令和6年(2024年)7月の観測値に置きかわっています。

 那覇の猛暑日が、約7年に1日から約5年に1日になりそうですが、それでも、東京や大阪よりは、かなり少ない猛暑日です。

 とはいえ、那覇の日差しは強く、紫外線も強いために屋外での体感温度は高くなります。このため、真夏の那覇の街を日中歩くのは観光客かよほどの用がある人といわれています。

 また、沖縄では海水浴はひどい日焼けを防ぐためにTシャツを着て泳いだり、会社帰りに一杯という習慣はないと聞いたことがあります。

 家で夕食をし、ひと風呂浴びてから夜の街に繰り出すということですが、暑い日が続く昨今では、沖縄の習慣というか、沖縄の先人たちの知恵を活かす工夫が必要になってきたと思います。

図1、図2、図3の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

表1、表2の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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