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今年一番の寒気南下で平年並み 日本の平均気温は過去記録の12か月連続プラスを上回る22か月連続プラス

饒村曜気象予報士
冬 小寒 水泉動(提供:アフロ)

日本の年平均気温

 気象庁では、明治31年(1898年)以降観測を継続している気象観測所の中から、都市化による影響が小さく、特定の地域に偏らないように選定された以下の15地点の月平均気温データを用いて、日本の気温偏差を求め、気温の長期変動を分析しています(表)。

表 気象庁が年平均気温偏差を求めている15地点
表 気象庁が年平均気温偏差を求めている15地点

 日本の平均気温そのものを解析するのではなく、気温偏差を解析しているのは、都市化など人間生活の影響をあまり受けずに100年以上にわたって観測が続けられている観測地点が少ないからです。

 また、宮崎は平成12年(2000年)5月、飯田は平成14年(2002年)5月に移転しましたが、移転による観測データへの影響を評価し、移転による影響を除去するための補正を行った上で、偏差を求めています。

 これによると、日本付近は、100年間に1.35度の割合で気温が上昇しています(図1)。

図1 日本の年平均気温偏差と偏差の5年移動平均値(青太線)、長期変化傾向(赤直線)
図1 日本の年平均気温偏差と偏差の5年移動平均値(青太線)、長期変化傾向(赤直線)

 なお、図1における基準値は、昭和56年(1981年)から平成22年(2010年)の30年平均値です。

 年平均気温偏差は年によって増減がありますが、長期変化をみると、どんどん気温が上昇していることを示しています。

 また、気温偏差が一番大きかったのは、去年、令和5年(2023年)の1.29度です。令和5年(2023年)は、1月こそ-0.03度とマイナスでしたが、その他の月はプラスで、特に3月と9月は大きなプラスでした。

 その結果、ずば抜けて高い記録的な平均気温となったのですが、今年、令和6年(2024年)は、その記録的と言われた令和5年(2023年)を上回る暑さとなっています(図2)。

図2 令和5年(2023年)と令和6年(2024年)1月~11月の月別気温偏差
図2 令和5年(2023年)と令和6年(2024年)1月~11月の月別気温偏差

 月別の平均気温が平年より高い状態の連続記録は、平成27年(2015年)11月から28年(2016年)10月までの12か月です。

 しかし、現在、昨年2月より今年11月まで22か月連続で、継続中です。

 仮に、12月の平均気温がマイナスとなっても、22か月と、これまでの連続記録を大幅に更新ということになります。

 また、12月に大幅に平年を下回らない限り、記録的と言われた令和5年(2023年)の1.29度を上回る見込みです。

 となると、3位が令和2年(2020年)の0.65度、4位が令和元年(2019年)の0.62度、5位が令和3年(2021年)の0.61度、6位は令和4年(2022年)の0.60度と、年平均気温偏差の高い年の上位6位まで、まだ6年しかない令和が上位を独占するということになります。

 つまり、令和は記録的な暑さの時代ということもできるでしょう。

 ただ、今週末にかけては、寒気が南下してくる見込みです。

今週末の寒気南下

 令和6年(2024年)12月4日は、大陸から高気圧が張り出し、次第に西高東低の冬型の気圧配置が強まり始めています(図3)。

図3 西高東低の気圧配置になりつつある地上天気図と衛星画像(12月4日9時)
図3 西高東低の気圧配置になりつつある地上天気図と衛星画像(12月4日9時)

 等圧線の間隔が狭くなている所では強い風が吹き、強い寒気が南下してきます。

 12月4日は朝鮮半島の等圧線の間隔が狭く、寒気は主として朝鮮半島から九州の西海上に南下してきました。

 そして、5日は近畿地方、6日は北陸地方の等圧線の間隔が狭くなる見込みです(図4)。

図4 予想天気図(上は12月5日9時の予想、下は12月6日9時の予想)
図4 予想天気図(上は12月5日9時の予想、下は12月6日9時の予想)

 つまり、西高東低の気圧配置が強まると同時に、強い寒気の南下の中心は、次第に東へ移動してくることが考えられます。

東京(東京都心)の最高気温と最低気温の推移

 令和6年(2024年)の東京は、記録的に気温が高い年となりました。

 最高気温が25度以上の夏日を最初に観測したのは3月31日、最高気温が30度以上の真夏は6月12日、最高気温が35度以上の猛暑日を最初に観測したのは7月4日、最低気温が25度以上の熱帯夜を最初に観測したのは7月4日と、いずれも平年より早くなっています。

 そして、10月になっても暑い日が続き、猛暑日は20回、真夏日は83回、夏日は153回、熱帯夜は47回もありました(図5)。

図5 令和6年(2024年)8月以降の東京の最高気温と最低気温の推移(12月5日以降はウェザーマップの予報)
図5 令和6年(2024年)8月以降の東京の最高気温と最低気温の推移(12月5日以降はウェザーマップの予報)

 東京は、明治8年(1875年)6月5日以降の気象観測がありますが、東京都心の夏日日数は、昨年(2023年)の140日を抜いて歴代1位、猛暑日、真夏日はともに昨年に次ぐ歴代2位の記録となりました。

 12月に入っても平年より気温が高い日が続きましたが、季節が進んで、平年値もかなり低くなっています。

 平年より高いといっても、ひところの暑さではありません。

 そして、今週末は、強い寒気が南下して気温が下がりますが、最高気温、最低気温とも、下がってほぼ平年並みです。

 ただ、これまで気温が高く推移していたことから、体感的には非常に寒く感じると思います。

 各地の10日間予報をみると、太平洋側の地方は晴れの日が続く予報ですが、日本海側の地方は雲が多く、雨や雪の日が多い予報となっています(図6)。

図6 各地の10日間予報(数字は最高気温)
図6 各地の10日間予報(数字は最高気温)

 西高東低の冬型の気圧配置がしばらく続く予報ですが、その中でも、今週末と来週末は、ともに強い寒気が南下し、山陰地方でも雪が降り、最高気温が一桁となる見込みです。

 12月7日は二十四節気の「大雪(だいせつ)」、山に雪が積もり、平地でも雪が降る時期という意味です。

 暑い暑いといっているうちに、短い秋は終わり、例年の様に冬が始まりました。

 暦通り、季節は着実に進んでいます。 

図1の出典:気象庁ホームページ。

図2、図5、表の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

図3、図4、図6の出典:ウェザーマップ提供。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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