日本人は知らない...ウィル・スミスが平手打ちせずにやるべきだった“HA, HA, SO”とは?
アカデミー賞授賞式でコメディアンのクリス・ロックに平手打ちをした俳優のウィル・スミスが、今後10年間にわたり授賞式への出席を禁じられた。
スミスの平手打ち、食い止める術はなかったのか? スミスはロックの暴言にどう対処すべきだったのか?
筆者は、暴言に対処するためのある方法を思い出した。アメリカで、いじめから身を守る対処法の一つとして、小中学校などで教えられることがある「HA, HA, SO (ハーハーソー)戦略」と呼ばれる一種の自己防衛策だ。
アメリカで起きている高校銃撃事件の背景の一つとして、暴言などによるいじめがあったことが指摘されている。暴言でいじめられたと感じた生徒が自分の力を取り戻そうとする手段、あるいは、いじめた生徒に復讐する手段が銃撃だったと分析されているケースもある。
いじめが銃撃の一因だとしたら、いじめを受けていた生徒は銃暴力に訴えず、どう対処すべきだったのか? その答えは、「HA, HA, SO 戦略」の中にある。
ちなみに、「HA, HA, SO 戦略」という対処法については、アメリカの高校銃撃事件について書いた拙著『そしてぼくは銃口を向けた』で取材した、コロラド州のソーシャルワーカーのポール・ヴォン・エッスン氏が教えてくれた。同氏は学校でのいじめをなくすために「HA, HA, SO 戦略」の考案に携わり、同州の小学校で浸透させていたのだ。
エッスン氏は「いじめっ子はどこにでもいる。学校だけではなく職場にもいる。2人だけのグループでも、どちらかがいじめの姿勢を示すことがある。それは人間の本質だ」と話し、「HA, HA, SO 戦略」は一般的な人間関係にも適用できると指摘していたので、ここで紹介できたらと思う。
“HA, HA, SO”は、6つの対処法の頭文字を取ったものだ。それぞれの頭文字は、以下の対処法を意味している。
H: Help 先生、親など周囲にいる大人やクラスメイトに助けるを求める。勇気がいることかもしれないが、声をあげることが重要。
A: Assert 立ち上がって、毅然とした態度で主張する。この場合、“I”(私)を入れて主張するのが重要。例えば、暴言を吐いた子供に「君はひどいね」と “You”(あなた)を主体にして言うのではなく、「僕は君の暴言に怒りを感じている。止めて下さい」と“I”を主体にして主張する。しかし、もし、いじめっ子のことが怖かったり、いじめがひどかったりする場合はAssertしない方がいいという。
H: Humor 怒るのではなく冗談を言ったり、バカげたことを言ったりしていじめっ子をかわす。例えば、“4つ目”(メガネをかけている人に対する侮辱的な表現)などと罵倒されたら、“4つ目でよく見えない時は、6つ目にしようかな”と冗談を言ってみる。
A: Avoid 安全第一であるから、できる限りいじめっ子を避ける。いじめっ子がいる場から立ち去り、いじめっ子が近くにいる場合は、友達に一緒に歩いてもらうようにする。
S: Self-talk 自分は悪くないと言い聞かせる。「僕はいい子なのだ。彼がいじめるのは彼の問題なのだ。僕は彼の考えを受け入れる必要はない」とポジティブに自分に言い聞かせる。
O: Own it いじめっ子の暴言を否定せず、あえて賛成してみる。例えば、「その服、かっこ悪いね」と言われたら「この服、かっこ悪いことはわかってるけど、母の好みなんだよね」と言って、立ち去る。メガネをかけていることをバカにされたら「君をもっとよく見たいからかけているんだ」と肯定的に言って、立ち去る。
平手打ちという暴力に訴えたスミスに対し、妻のジェイダは冷静に見えた。ジェイダがアカデミー賞の1週間ほど前にインスタグラムに投稿した動画の中で「このスキンヘッドがどう思われようが気にしません。だって私が(スキンヘッドを)気に入っているのだから」と話していたことを考えると、彼女は、“HA, HA, SO”の中では、“Self-talk”か“Own it”で賢明に対処したと言えるのかもしれない。スミスもそんな妻を見習って、“HA, HA, SO”のいずれかの方法で対処すべきだったのではないか。
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