Yahoo!ニュース

TERAOKAグループのSDGsへの取り組み、現場の立場にそったソリューションへ

池田恵里フードジャーナリスト
現場、環境を考慮した機械が並ぶ(株式会社寺岡精工提供)

SDGsへの取り組み

「SDGs」については、最近、とみに食品業界においても大きな課題となっている。これまでスーパーマーケットトレードショーでは幾度か企業のブースによってはその取り組みは行われていた。しかしスーパーではまだまだ関心を持つ企業が少なかった。最近、ようやくSDGsの必然性が理解され、食品ロス、脱プラスチック、ゼロウェィスト、リサイクルについて、以前とは違う反応で興味深く立ち止まるスーパー各社の人々が多く見受けられた。

とはいえ、実際、スーパーの現場に落とし込めるのか。

コスト面を考えると、なかなか厳しいものがあるのは事実である。スーパー各企業にとって、取り込むことは必須であることはわかっていても経営課題として落ちてこないと現場はなかなか取り組めない事柄なのである。

さてそこでPOS(販売時点情報管理)、秤、環境製品などを製造販売するTERAOKAグループ(株式会社寺岡精工/代表取締役 山本宏輔)が今、取り組んでいるソリューションのいくつかを拝見し、スーパーの現場の運用に即したSDGsの提案について、包装事業部の寺岡由紀さんにお聞きすることにした。

ライナーレスラベル

SDGsは少しずつ、少しずつ努力を積み重ねてようやく実現できる。普段、使い慣れているもの、ごく当たり前と思っていたことが環境に優しいのか、深く考えることが大切なのである。

そのように普段当たり前と思っていたもののひとつが食品のラベルである。TERAOKAでは2011年から「ライナーレスラベル」を提案し続けている。この言葉だけだとわかりにくいので、図で説明しよう。

ラィナーレスラベル(株式会社寺岡精工提供)
ラィナーレスラベル(株式会社寺岡精工提供)

皆様も一度はご覧になったことがあるだろう。左が従来の台紙のあるもの。それを右のように台紙をなくしたのが「ライナーレスラベル」である。

台紙をなくしたのは2011年からで、主に肉や魚、惣菜のパックなどに使用しており、国内流通向け製品の出荷数は全体の86%に及ぶ(2019年実績)。

「ライナーレスラベル」により紙の削減が過去8年間で東京ドーム約1899個分に(株式会社寺岡精工提供)
「ライナーレスラベル」により紙の削減が過去8年間で東京ドーム約1899個分に(株式会社寺岡精工提供)

これにより台紙によるごみの発生を抑制し、過去8年間に8900万平方メートル(東京ドーム約1899個分)の台紙ごみを削減した。

日々、当たり前に使っているラベルをライナーレスに替えるだけで、これだけの膨大な量が削減でき、ゼロウェィストに貢献できるのだ。

量り売りでの自分の好きな量カスタマイズでき、間違いのない価格提示

海外ではよく見かける量り売り。なかでもナッツ、ドライフルーツ、クッキー、シリアルはよく見かけ、買い物客が自分の好きな量を詰めて買う。日本においても高齢化、人口減が著しいなか、胃袋はますます小さく、つまり食べる量が少なくなり、買い物客の好きな量を把握するのは難しい。セルフで購入することが見かけられるようになったが、買い物客自らプラスチック容器に詰めてもらい、多品種であれ、量に応じた同一金額で販売されている。欧米では既に海洋プラスチック問題がきっかけで小売りチェーンが食品メーカーと組んで”Unpacked campaign”(量り売り運動)の展開を強化している。ただし問題点としては、量り売りは顧客が「どの商品をどのくらいの量で」といった自己申請しないといけない。例えば、同じナッツ類であったとして、オーガニックとそうでないものだと見た目は同じでも価格が違うのだ。そこに不正が多発しやすいという負の面もあることが認識され、何とかこの解決策が切望されていた。そこでTERAOKAは”e.Sence”と命名したモーションセンサーを開発し、セルフサービスの秤と連動させた。ナッツなどが入った容器の蓋を開けた瞬間に、セルフサービスの秤に顧客が選んだ商品のボタンが現れるので、顧客は秤でそのボタンを選択し、商品を詰めたアイテムを秤にのせて、プリントアウトされたラベルを貼ってレジに持参するだけのシンプルなシステムなのである。

「e.Sence」の仕組み(株式会社寺岡精工提供)
「e.Sence」の仕組み(株式会社寺岡精工提供)

また日本のスーパーでよく見かけるプラスチックの包材使用も削減できるのである。そして海洋プラスチック汚染は地球規模の問題であるため、日本においても、欧米のようなプラスチック容器を使わない、マイボトルによる量り売りを広めたいと考えられ、今回のスーパーマーケットトレードショーに出展されたと言われる。

さて実際、来場者に聞くと「日本でも普及させたい。日本はパック売りが多すぎるので買い物スタイルを変えるべき」といったコメントが聞かれた。

紙トレイ包装機

スライス肉やチーズやハムなどの商品を包装するために使用されているプラスチックトレイ(発泡トレイ)の代わりに、紙トレイを使用する包装機である。

最近、ニュースを見て唖然としたのは、パッケージされた肉を購入後、売り場で顧客がパッケージを開け、プラスチックトレイを捨てていたことだ。

これによりスーパーの従業員がごみ箱からプラスチックを取り出し、分別しないといけない。当然のことながら人手がかかってしまうのだ。

紙トレイ包装機で包装された豚肉のスライス(株式会社寺岡精工提供)。
紙トレイ包装機で包装された豚肉のスライス(株式会社寺岡精工提供)。

TERAOKAの紙トレイ包装機は、プラスチック素材が表面のフィルムだけになるため、プラスチック容器使用時と比較するとプラスチック使用量の重量の約93%(重量比)削減することが出来る。

東北のスーパーマーケットチェーンでは仙台地区に出店している30店舗に、紙トレイ包装機を導入し、10数アイテム、1日約100パックを包装している。そのスーパーでは、以前、レジのサッカー台のごみ箱に買った商品をビニール袋に移してトレイを捨てていくお客がやはり多かったという。しかしこの包装に変えたことで家庭のごみ削減の動きがあったと言われる。

生産適正化システム 食品ロスの削減、機会ロスへの解消

食品ロスをなくせと一般に言われている。これは各社もよくよく理解できている。とはいえ、実際、あまりに食品ロスを考慮しすぎると機会ロス、つまり顧客が買いたいと思った時に商品がないといった問題にもなるのだ。さてそこで過剰な製造を防止するための「Pack on Time」というソリューションを見つけた。計量器とPOS(販売時点情報管理)を連携するシステムにより、適切な時間に適切量の生産を可能にする。過剰な製造を防止することにより、売れずに廃棄するフードロスを削減するのだ。スーパーのバックルームで生産する惣菜や肉、魚などのパックの数量は、売り場のマネージャーの勘に頼ることが多く、また繁忙時には、棚に残っているパックの数を確認して追加注文をバックルームの担当者に指示することも難しくなるという。「Pack on Time」は、POS(販売時点情報管理)の販売した数量を計量器に送ることで、棚に残っているパックの数を把握し、そこから陳列数が一定の数を切ったら、どの品番を何個生産するという指示を計量器に自動的に表示させる。バックルームでは、その指示に従ってパックを作るだけのシンプルな運用である。

ロスや機会ロスの軽減 「Pack on Time」(株式会社寺岡精工提供
ロスや機会ロスの軽減 「Pack on Time」(株式会社寺岡精工提供

バックルームでは人手不足で悩ましい問題を抱えているなか、効率よく生産できるのではないだろうか。

ペットボトル自動減容回収機

ペットボトルを回収し、リサイクルしやすくしている飲料容器減容回収機。プラスチック容器をリサイクルに適正にまわすことにより、海洋への流出および海洋汚染を防止するソリューションで、セブン‐イレブンの店舗でも見かける機械である。店頭回収のペットボトルリサイクルは、消費者参加型の持続可能なスキームとして、社会の中で消費者、小売店、メーカー、リサイクラー、回収事業者の連携で、海洋汚染とCO2削減のために機能しており、一同に意識を高めることが出来る。

ペットボトル自動回収減容機。セブン‐イレブンを中心に導入事例が増えている(株式会社寺岡精工提供)
ペットボトル自動回収減容機。セブン‐イレブンを中心に導入事例が増えている(株式会社寺岡精工提供)

ガス置換包装機(MAP包装機)

パッケージ内にある窒素、酸素の配合を変化させることで日持ちをよくする機械である。ここ数年、コンビニ向け商品を製造しているベンダーや食品工場ではMAP包装機を導入する動きが活発になっている。日本のスーパーではあまり見かけられないが、ベルギーのスーパーであるSPARでは、店内バックルームに複数台のガス置換包装機が導入され、店内のデリを包装している。ガス置換でデリの賞味期間が当日だったのが8日から11日程度に延長され、消費者の週1回の買い物スタイルにも合い、売上が3倍になったという。日本ではスーパーのバックルームへの導入はあまり積極的ではないが、このような成功事例を見ると今後、この方向で製造された商品をロスなく食べることにつながると思う。

SDGsに取り組むことで・・・

小売りだけではSDGsに取り組むことは難しい。そのためにメーカーと一緒に取り組むことで経営の観点からも無理なくSDGsが実現できる。TERAOKAが今、取り組んでいるSDGsは、現場に即した、スーパーにとって無理のない方法としての提案であり、きっかけを教示してくれたと思う。

TERAOKAの長期的に見据えたSDGsについて、取材、ありがとうございました。

フードジャーナリスト

神戸女学院大学音楽学部ピアノ科卒、同研究科修了。その後、演奏活動,並びに神戸女学院大学講師として10年間指導。料理コンクールに多数、入選・特選し、それを機に31歳の時、社会人1年生として、フリーで料理界に入る。スタート当初は社会経験がなかったこと、素人だったこともあり、なかなか仕事に繋がらなかった。その後、ようやく大手惣菜チェーン、スーパー、ファミリーレストランなどの商品開発を手掛け、現在、食品業界で各社、顧問契約を交わしている。執筆は、中食・外食専門雑誌の連載など多数。業界を超え、あらゆる角度から、足での情報、現場を知ることに心がけている。フードサービス学会、商品開発・管理学会会員

池田恵里の最近の記事