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先延ばしの癖を克服する「スケールテクニック」の紹介

横山信弘経営コラムニスト
面倒くさいことに必要な時間を見積もってみましょう!

「先延ばしの習慣」は、なかなか克服できない

わかっちゃいるけれど、なかなかできない。すぐにやればいいのに、先延ばしにしてしまうようなことはありませんか。仕事上においても、日常生活においても、今すぐやっておけば気持ちが楽になるのに、ついつい先延ばしにしてしまうことってありますよね。私はよくあります。手帳やスマホでタスク管理していても、その管理自体を怠ってしまうこともあります。

仕事を「先送り」せず、すぐやる習慣を身に着ける考え方で、先延ばしをするデメリット、そして「すぐやる」ための考え方を書きました。しかし、頭ではわかっていてもなかなか克服できないことがあります。そこで私がいつも使っている技術を紹介します。それが「スケールテクニック」です。

「スケールテクニック」は感覚を修正してくれる

「スケールテクニック」とは、感覚でとらえている物事を数値化することを言います。「その仕事、作業にどのくらいの時間がかかるか」を客観的に見積もり、定量表現するのです。

たとえば、上司から「お客様のアポイント」をとってくれと言われたとします。「わかりました」と答えたものの、なかなかやれません。電話しようとしても、そのお客様の電話番号を調べているうちに他のメールを見たり、引き出しの整理をしたり、午前中にやりかけた資料作成の続きをしたりします。そのうちに「急ぎの仕事があるんだけど、手伝ってくれないか」と同僚に言われて手伝っているうちに、夜遅くまでかかってしまった。そうこうしているうちに翌日となり、一週間が経過し、一ヶ月が経過したりする。そのような状態で放置しておき、上司に指摘されたらどうするでしょう。

「そういえば、お客様のアポイントってどうなった?」

「あ、申し訳ありません。まだできていないのですぐにやります」

「まだできていない? ずいぶん前の話だったろう」

「ここ2週間ぐらい、なかなか時間がとれなくて……。でも、今からすぐにやります」

このように言われて、「なかなか時間がとれなかったのならしょうがないな」などと思うほど上司はバカではありません。間違いなく「そんなの言い訳だ。アポイントぐらい、すぐにできるだろう」と瞬間的に思います。それを口に出して表現するかどうかは、その上司次第です。相手が新人ならともかく、先延ばしの習慣を克服できない部下に、もう慣れてしまっています。ですからあきれた様子で、「だったらすぐにアポイントとってくれよ」とため息混じりに言うのですが、部下は上司の気持ちを察することができません。「わかりました、すぐにやります」部下はそう言うだけです。そしてこう思うでしょう。

「今回は怒られなかった。ぎりぎりセーフだったということか」

上司が指摘してこなかったのはもう諦めているからです。にもかかわらず、「これぐらい先延ばししても大丈夫なら、次に同じようなことがあっても許されるな」と勘違いします。

こうなると部下はどんどん怠惰になっていきます。上司から「諦められている」のに、上司から「許されている」と思い込むからです。周囲から寄せられるはずの「信頼」という財産はいつまで経っても蓄積されません。すぐやればいいことなのに、常に先延ばしをしているだけで、その人の価値(バリュー)がゼロに近づいていくのです。とても残念なことですね。

だからこそ、感覚でとらえていた事柄を数値化する習慣を身につけましょう。最初のうちはうまく時間を見積もることができなくても、あきらめないでください。間違えてもいいから、とにかくアウトプットします。

「この資料を作成するには、2時間ぐらいはかかるかな」

「靴を磨くのに、20分はかかる気がする」

「机の上を整理するのに30分はかかるだろうか」

「味噌汁を作るのに、15分はかかるに違いない」

どんなことでも、時間でとらえるのです。そして実際に計測して学習していきます。

「こういった資料を作成するには、4時間はかかるんだ」

「靴を磨くなんて、5分で終わるじゃないか」

「机の上の整理整頓だけだったら10分で終わった」

「豆腐とわかめの味噌汁だったら7分程度だった」

このように、仮説を立てて検証していく習慣をつけていきます。「分からないからやらない」「誰かに正しい答えを聞いてからじゃないとできない」と言っていたら、いつまでも精度は上がりません。トレーニングを繰り返すことで、「スケールテクニック」の精度は高まります。感覚を数値化すれば行動に対する心理ハードルが低くなります。つまり従来の「感覚」が修正されていくのです。

さらなる応用も考えましょう。タスク管理や役割分担に費やす時間も「スケールテクニック」で見積もります。

「毎週、行動計画を作る (10分)」

「毎日、TODOリストを更新する (2分)」

「蓄積されたタスクを自分がやるか誰かに任せるかを仕分けする (3分)」

こうすることで、とても面倒なこともできるようになります。作業のとっかかりやスケジューリングの手間までも「スケールテクニック」で先延ばししないようにするのです。

どんな日常のことも「スケールテクニック」で快適な生活を!

「服をたたむ」

「読んだ本を本棚に戻す」

「妻に一言LINEで『今日もありがとう』とメッセージを送る」

などといった、小さなことでもスケールテクニックを使えば「それほど時間がかからない」と思えてきます。私もまだまだ完璧には程遠いですが、少しずつ「すぐやる習慣」が身についてきました。ついつい先延ばしをしてしまう人は、ぜひ「スケールテクニック」を試してみてください。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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