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墜落のF35、「日本が一番買ってくれる」―トランプ大統領発言を報じない忖度報道、ひたすらゴルフ、相撲

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
日本のメディアは安倍首相とトランプ大統領の「親密さ」を繰り返しアピール(写真:ロイター/アフロ)

 来日中の米国のドナルド・トランプ大統領。安倍晋三首相と、27日午後の首脳会談の後、共同記者会見を行い、その場で「2018年、日本は米国製の防衛装備の最大の買い手となった。F35ステルス戦闘機を105機購入すると発表した」「米国の同盟国の中で日本が最大のF35保有国となる」と語った*。F35戦闘機は、航空自衛隊三沢基地所属の機体が先月9日に墜落したばかりで、同機を操縦していた自衛官も今なお行方不明のままだ。だが、会見でF35戦闘機の「爆買い」についての質問は無く、会見後の報道でも、本件について言及したのはAFP/時事のみだ。

* 首相官邸 日米共同記者会見 https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/statement/2019/0527usa.html

○ゴルフや相撲は報じても、F35問題はスルー

 今月25日に来日してから、日本の大手メディアは放送時間や紙面を割いてトランプ大統領が安倍首相とゴルフをした、大相撲を観戦した、炉端焼きを堪能した等、報じている。他方、共同記者会見での、トランプ大統領のF35戦闘機に関する発言についてはこれらの報道では触れることはなかった。市民団体「武器取引反対ネットワーク」代表の杉原浩司さんは「あまりに馬鹿馬鹿しすぎる」と呆れる。

「F35戦闘機は『危機的な欠陥』が111件もあると昨年6月にGAO(米国政府監査院)に指摘され、それらの欠陥のうち13件が未解決であると、今年4月GAOに再び指摘されている状況です。航空自衛隊のF35戦闘機の墜落原因もまだ何もわかっていません。現在も行方不明の自衛官パイロットについて、トランプ大統領はリップサービスでも『一刻も早く救出されるよう願っている』とでも言うべきところを、それすらなく『日本に米国製の兵器を爆買いさせてやった』的なアピールだけ。追加購入分と既に購入決定した分を合わせ、維持費含め総額6兆円もの税金でF35戦闘機を爆買いさせられていることを追及すべきなのに、メディアは、ゴルフだの相撲だのばかり報じて、一体何をやっているのでしょうか?」(杉原さん)。

【動画】F35 墜落を報じる米誌「タイム」

○既成事実化する「米国のための自衛隊」

 杉原さんは「今回のトランプ大統領来日では、横須賀基地視察も見過ごせない」と言う。本日28日には、トランプ大統領は安倍首相とともに横須賀基地(神奈川県)を視察。本格的な空母化が目論まれる海上自衛隊艦船「かが」と米軍の強襲揚陸艦「ワスプ」上で演説する予定だ。

「既に『かが』や『いずも』はインド太平洋地域での多国間演習に盛んに出動しています。今回のトランプ大統領と安倍首相の横須賀港視察は、対中国の米国の安全保障戦略のために自衛隊をアウトソーシングさせていこう、という方向性を既成事実化するものでしょう」(杉原さん)。

【動画】海上自衛隊護衛艦「かが」

視聴者・読者ももっと怒ろう

 莫大な税金を投じての米国製兵器の爆買い、「専守防衛」という自衛隊の役割を明らかに超えた装備増強や活動がなし崩し的に行われることについて、杉原さんは「メディアは、もっと追及すべきですし、日本の市民、有権者ももっと怒るべきだと思います」と語る。衆参同時もまことしやかに噂されるように、この夏には国政選挙が控えている。メディア関係者も視聴者・読者も、今、何を「ニュース」とすべきなのか、何が追及されるべきなのか、よく考えるべきなのだろう。

(了)

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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