【2021.10/13】新型コロナウイルスワクチンによる不妊・妊娠・授乳への影響は? 最新情報まとめ
新型コロナウイルスのワクチン接種が世界中で進んでいます
世界中でウイルスの変異による感染拡大も増えてきていますが、重要な対処法としてワクチンの接種が世界中で進んでいます。
2021年10月12日時点で、ワクチンの接種回数は、世界200カ国・地域で累計65億回を超えたとされています。(文献1)
日本だけでも2021年10月11日時点で累計接種回数は1億7500万回を超え、総人口の64.8%にあたる8204万人が2回の接種を完了しています。(文献2)
世界各国で妊産婦の感染事例が増加しています
海外では、妊産婦の感染報告が増加しています。
また、その多くはワクチン未接種者であることがわかってきています。
なお、英国から2021年7月末に出された調査報告では、妊娠中のコロナウイルス感染で入院した妊婦(約150名)のうち、
・ワクチンを2回接種済みの妊婦はゼロ
・1回接種後の妊婦が3名のみ(2%)
・98%は未接種者
だったことが示されています。
(文献3,4)
コロナウイルス感染で入院した妊婦のうち、ワクチンを2回接種済みの妊婦はゼロだったことから、mRNAワクチンは妊婦に対しても高い発症・重症化予防効果があることがわかります。
ワクチンによる現在・将来の妊娠への影響は?
ワクチンの有効性と安全性を検証したワクチン開発時の臨床試験には、基本的に妊娠している人が含まれていませんでしたので、「妊婦への影響」に関する厳密なデータは得られていません(通常、倫理的配慮からこのようにして臨床試験は実施されることがほとんどです)。
また、「将来の妊娠への影響」に関しても、接種して数年から十数年経過しなければ厳密なデータはわからないと言えるでしょう。
しかし、今現在でも妊娠している人や、すぐに妊娠を希望している人、将来は妊娠したいと思っている人などが世界中に存在します。
このため、現状で得られる情報を総合的に考慮し、なるべく客観的にメリットとデメリットを踏まえて接種するかどうかの判断をすることが必要になります。
(1) 米国CDCの最新の見解
国際的にも重要な知見や見解を示している米国CDCは、明確に妊娠中や授乳中の女性へのコロナワクチン接種を強く推奨しています。(文献5)
また、2021年10月7日に更新されたCDCのウェブサイトでは、コロナワクチンに関して以下の見解が示されています。(文献6)
1. 妊娠中、授乳中、現在妊娠しようとしている人、将来妊娠する可能性がある人を含め、12歳以上のすべての人に接種することが推奨されています。
2. 妊娠中のコロナワクチン接種の安全性と有効性に関するエビデンスが増えてきています。これらのデータから、ワクチンの接種を受けることによるメリットが、妊娠中のワクチン接種による潜在的なリスクを上回ると考えられます。
3. 現在のところ、コロナワクチンを含むいかなるワクチンも、女性や男性に不妊症を引き起こすという証拠はありません。
4. 妊娠中や妊娠したばかりの人は、妊娠していない人に比べてコロナ感染で重症化する可能性が高くなります。
5. ワクチンを接種することで、感染による重症化からあなたを守ることができます。
なお、米国CDCでは、2021年10月4日時点で、コロナワクチン接種時に妊娠していた16万人以上の女性が登録されており、その副反応や妊娠関連合併症などを分析しています。
出産後までの経過を追うレジストリにも5100人以上の妊婦が含まれています。
その上で、妊婦への接種が推奨されているのです。(文献7)
また、CDCの研究報告から、妊娠中のワクチン接種によって流産、胎児死亡、先天異常などの発生頻度は増えていないことがわかっています。
ニュースやSNS等で「ワクチン接種した後に流産したという報告がたくさんある!」とするコメントが見受けられますが、一般的に自然流産となってしまう頻度は15%程度あり、自然流産の原因のほぼ全てが「女性の生活や行動に原因はなく、染色体レベルの偶然のもの」です。
仮に100万人の妊婦さんが初期に接種すると、その後にワクチンと関係なく10-15万人に流産は起こり得る、ということになります。
誤情報に惑わされないようご注意ください。
(2) 日本の関連学会からの最新の見解
日本でも、妊産婦さんへの新型コロナウイルスワクチン(mRNAワクチン)について、三学会(日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会、日本産婦人科感染症学会)から合同で一般の方向けに通知が出されました。(2021年7月19日)
「女性のみなさまへ 新型コロナウイルスワクチン(mRNAワクチン) Q & A」
多くの疑問・不安に対して非常にわかりやすい回答を示してくれています。
ぜひご覧になってみてください。
(3) 日本のコロナ感染妊婦の現状
また、「国内でのCOVID-19妊婦の現状 ~妊婦レジストリの解析結果」(2021年9月15日付中間報告)が公開されました。
この報告では、軽症~中等症Iでも36週以降に診断されたコロナ感染妊婦の半数超がCOVID-19を適応(理由)で帝王切開を受けていました。
また、感染した妊婦の4人に1人は早産となっていました(医学適応による人工早産を含む)。
中間報告ではありますが、国内のデータとして参考になります。
感染してしまうと母子ともに大きな影響を受けてしまう可能性が高まりますので、やはり感染予防が重要だと言えるでしょう。
大事なこととして、妊娠中の接種をするか判断する際には、「妊婦は感染した場合の重症化・死亡リスクや、早産となるリスクが高まる」「使用できる治療薬に制限があり選択肢が少ない」といったことを踏まえ、「接種しないことのリスク」も併せて考えるべきだろうと思います。
ワクチンによる授乳への影響は?
米国CDCや日本の専門学会等は、以下のように述べています。
・コロナワクチンは、母乳育児をしている人の感染予防にも有効です。
・授乳中の赤ちゃんへの悪影響を懸念する心配はありません。
・接種後に授乳を止める必要はありません。
・最近の報告では、ワクチンを接種した授乳中の人は母乳中に抗体が含まれ、赤ちゃんを守るのに役立つ可能性があります。
授乳中でも安心して接種をご検討ください。
小さな赤ちゃんを母乳で守れる可能性があることも、心強いですね。
ぜひ、本記事や公的機関の情報を参考に、コロナワクチンの接種をご検討ください。
*本記事の内容は2021年10月13日時点で得られた情報に基づいています。日々更新される可能性があるため、なるべく下記リンク等から最新情報をご参照ください。
参考文献:
1. 日本経済新聞.
2. 日本経済新聞.
3. Bloomberg. Pregnant, Unvaccinated and Intubated: Case Surge Alarms Doctors.
4. NHS. Chief midwife urges pregnant women to get NHS COVID jab.
5. CDC Statement on Pregnancy Health Advisory.
6. CDC. COVID-19 Vaccines While Pregnant or Breastfeeding.
7. CDC. V-safe and Registry Monitoring People Who Report Pregnancy.