「六本木クラス」 細かすぎる原作との比較#1 「新は優香のリュックを取り上げようとしなかった」
いや~ついに始まりました「六本木クラス」。
オープニングソング、原曲の日本語版でまずは何より。そして楠木優香(新木優子)の"スア感"すげ~。でも宮部新(竹内涼真)に携帯番号を渡す時の川原でのシーン、あれ、なんとかして晴れた日に撮影できなかったのかな~。もっと幻想的なシーンだったのに…などと、個人的には思いました。
さて、細かすぎる=ホントに細かすぎて本筋とは関係のない「原作(梨泰院クラス)」との比較を。
原作の第一話、公式(韓国で放映したJTBC)のあらすじはこうなっている。
信念に対価がない人生を夢見る男「パク・セロイ」。彼のような人生を生きたいが、現実に妥協するあなたに…
主旨は(当然だが)およそ同じ。第一話は「信念」がテーマだった。ちなみにこれ、韓国語では「所信」という漢字語が使われている。読みは「ソシン」。「六本木クラス」でもNetflixと同じく「信念」が使われていた。
韓国版では全16話だが、日本版では13話になる。そして韓国版の一話のオンエア時間は「90分(22時50分~0時20分)」だが、日本版は「60分」。
日本版の第1話では「細かくエピソードやシーンをカット」というところが見えた。もちろん日本文化に合わせての変更も。
ホントに細かすぎますが、ポンポンと行きましょう。
いじめシーンが「牛乳→トマトジュース」に変わっていたワケ
冒頭に平手友梨奈演じる麻宮葵(韓国ではイソ)の「ソシオパス」のシーンカット。
第1話のストーリーが展開する場所。
韓国版 「グァンジン高校」「グァンジン大学」と架空か実在か微妙な場所。実際にソウルにグァンジン(廣津)区が存在するが、一方で原作者の名前が「チョ・グァンジン」。
日本版 「府中市」とはっきり設定。
楠木優香(スア)がお金をせがむ男性を振り払い、これをかばうことで新が膝を怪我するシーンなし。
日本版では警察学校の試験で走れないシーンなし。
宮部新が転校先での自己紹介の際「趣味は走ること」。韓国版では「音楽を聴くこと」とも言っていたがカット。
早乙女太一演じる長屋龍河(グヌォン)による教室のいじめシーン。
韓国版 「いちご牛乳ではなく、牛乳を買ってきた」として牛乳をかける。
日本版 「りんごジュースではなく、トマトジュース」。
- これは韓国で製菓会社ピングレの「バナナ牛乳」があまりに有名で、そのシリーズのひとつである「いちご牛乳」も認知度が高い。しかし日本では事情が違うからオレンジ→トマトになったか。
新(セロイ)が龍河(グヌォン)に「やめろ」と言った際。
韓国版 「チンピラみたいなことはやめろ」
日本版 「幼稚なことはやめろ」
その後、「先生見てますよね」というシーンで韓国版は先生は教室から逃げないが、日本版は逃げる。
龍河(グヌォン)が「この学校でのルール」を説明する。
韓国版 「俺が法だ」
日本版 「俺に従え」
龍河が優香のリュックを「取り上げない」に見る日韓文化の違い
新が龍河を殴った後、父がプレゼンテーション。そこで殴った事件の報告がなされる。
韓国版 「ちょっと部屋をお出にならなくては」
日本版 「会長がお呼びです」
会長が高校の校長室に入ってきた際、韓国版では映像のみで「悪役感」を出していたが、日本版ではBGMが入った。
校長室で会長が新の父を眺めて言う。
韓国版 「20年間」と細かい設定があった。
日本版 「長い付き合い」
新が会長の謝罪要求を拒否。その際の長尺セリフの最後。
韓国版 「間違ったことは一つもしていません」
日本版 「彼に対して謝ることは出来ません」
それを受けての会長の言葉
韓国版 「面白いことになったな」
日本版 「困ったな」
父が退職、新は退職が決まった後の晩酌。
韓国版 「外飲み」「父が飲めという」「酒の注ぎ方まで教える」
日本版 「家で飲む」「未成年飲酒を勧めない」
- このあたりは韓国ではケーブルテレビでの放映、日本は地上波という事情の違いもあったか。
酒を飲んだ後の新の感想は「甘い」。原作と同じだが…
日本版 「これ辛口なんだけどな」というセリフが登場。そして父は「きっと母さんも思ってる」。原作にはない母親が登場。
高校で龍河が新しい車を優香に自慢。ナンバー7777について。
韓国版 「家の方で都合つけてくれたんだ」の自慢あり。
日本版 カット。
優香が大学の面接当日、バス内で受験票を忘れたことに気づくシーンなし。
新が優香と一緒に走るシーン。
韓国版 はっきりと「3キロ」と距離を言う。
日本版 「大学までけっこうある」
韓国版 「スアのリュックを取り上げるようにして自分で持とうとする」
日本版 「優香に荷物(リュック)を渡して」と言う。
- これは日韓の文化の違いがよく出ている。日本だったら「いきなり持ち物に触れるのは強引」。しかし韓国は「親しければ親しいほど、細かい断りなしに相手の所有物に触れてもいい」と考える。言い換えるなら「親しければその場での日常品の貸し借り程度なら『借りていい?』と断ることのほうが水臭い」。そんな考え方が伝統的にある。サッカー選手の李忠成(元日本代表)が2000年代前半、日本国籍取得前に韓国の年代別代表合宿に呼ばれたことがある。当時、日本から合宿に参加したところ、合宿所で「日常品を自分のもの他人のもの関係なく、断りなく使うことに面食らった」と話していたことがある。
なんとか面接に間に合う。
韓国版 「スアが面接室に入る時、セロイが「頑張って」と声をかける情景がフラッシュバックするシーンあり」
日本版 「カット」
- ここ、原作では「もしかしてスア(優香)の方もセロイ(新)が気になってる?」と示唆する重要なシーンにも思えたが…
撮影時期の違い・日韓の習慣の違い
川原で優香が新たに携帯番号を渡すシーン。
日本版では優香が「寒くなってきた帰ろ」。韓国版にはないセリフ。
- 韓国版は撮影時期が冬で「寒いのは当然」だったからなかったと思われる。日本は「春」だから「まだ寒さも残る」。
新が優香の携帯番号ゲット。「お前かっこいい」ってと言って走り去った後、韓国版では「ジャンプして木の枝を掴むシーン」があったが、カット。
おじさんが会社を辞めた後、スアのコンビニに行って、店のすぐ外にあるテーブルでラーメンを食べるシーンがカット。
- 「コンビニのすぐ横にあるテーブルでラーメンなどを食べる」習慣が日本にはないためカットか。
父の信念「堂々と生きる」は韓国版では厳密に言うと「胸を張って生きる」と言っている。
長屋の会長が拘置所に面会に来る。
韓国版 セロイはしばしの沈黙のあと「なんで来たんですか?」
日本版 カット。
長屋の会長が拘置所で最後に新に言う言葉。ちょっとだけ短かくなっていた。
韓国版 「信念、負けん気がなんてことはプライドを守ろうと使う単語だ。利益がなければただのこだわり、無駄に熱いだけということだ」
日本版 「信念、気合といった言葉は利益を生まない。負け犬の遠吠えなんだよ」
長屋の会長が優香を部屋に呼ぶ。
韓国版 スア「学費は持っています」
日本版 優香「学費は大丈夫です」
龍河が長屋会長に申し出る。
韓国版 父には絶対的な敬語を使って話す。
日本版 「示談にしてくれないかな?」と少しラフな話し方。
長屋の会長、龍河に鶏を絞めさせる。
韓国版 「愛人の子がいてそっちを後継者にするかも」と匂わせる。
日本版 カット
韓国版 「グヌォンが鶏小屋の匂いにむせぶ」
日本版 カット
細かすぎ。第1話、何はともあれ(重ねて)優香の"スア感ありあり"に感激。第2話からは葵(イソ)が登場。ストーリーはぐっと深まってくるでしょう。比較のしがいもあります。楽しみでしかない。