韓国の歴代大統領はなぜ哀れな末路を辿るのか?
李明博元大統領が昨晩(23日深夜)、ついにと言うか、予想とおり逮捕された。
大統領在任中の収賄額は100億ウォン(10億円)単位、不正資金の造成が300億ウォン(30億円)単位。逮捕は当然だろう。
(参考資料:朴槿恵前大統領の次は?逮捕寸前の李明博元大統領)
前職大統領の逮捕は1995年の全斗煥と盧泰愚、そして昨年の朴槿恵に続き4人目となる。歴代大統領が裁かれるという歴史が途切れることなく、繰り返されるのが韓国である。
振り返れば、韓国の大統領の末路は、亡命、暗殺、自殺、逮捕・収監、身内のスキャンダルなど決まって不孝に見舞われる。
建国の父である初代大統領の李承晩は学生革命で倒され、ハワイへの亡命を余儀なくされた。その政治空白のスキを突き、クーデターで政権を奪取した朴正煕大統領も側近中の側近である韓国の情報機関「KCIA」部長によって射殺されるという悲惨な末路を辿った。そして、その娘である韓国史上初の女性大統領となった朴槿恵大統領も国会で弾劾、罷免され、今は収賄容疑などの罪状で懲役30年を求刑され、収監の身である。
朴正煕亡き後、政権の座に着いた全斗煥大統領とその後任の盧泰愚大統領の二人も、反乱(1979年のクーデター)と内乱(1980年の光州事件)、秘密資金の疑いで1995年に逮捕され、1997年にそれぞれ死刑と無期懲役が求刑された。
全斗煥―盧泰愚と2代続いた軍人政権の後に登場した文民政権の金泳三大統領も次男が逮捕され、次の「民主政権」の金大中大統領も3人の息子が収賄容疑で枕を並べて逮捕されている。
「非業の死」を遂げた大統領は朴正煕氏だけではない。金大中政権の後、2003年から2008年まで大統領の座にあった盧武鉉氏もまた退任後、収賄容疑で兄が逮捕され、夫人と本人自身にも容疑が掛けられ、最後は崖から身を投げて自ら命を絶っている。これほど光と影のコントラストがくっきりと分かれる権力者ばかりが続く国は他にはないだろう。
韓国の大統歴史はまさに前任者が後任に裁かれるという歴史でもある。後任者が支持率を上げるために、あるいは自らのクリーンさをアピールするために前任者をダーティなイメージとして血祭りにあげる。換言すれば、前職大統領は後任大統領のスケープゴートになっていると言っても過言ではない。
問題はこの伝統、慣習を韓国国民が寛容していることだ。その理由は、国民が票を投じて直接、大統領を自ら選ぶという大統領制にある。
韓国の大統領制は、国を率いる人間を成人した国民が一票を投じて選ぶと言うシンプルなものである。
韓国の憲法は大統領に国政の最高責任者として絶対的な権限を与えている。大統領は何よりも憲法(第67条)に基づき国民の代表機関としての地位を有する。外国に対しては国家を代表する元首としての地位も有する。また、国軍を統帥する権限も有しているので最高司令官として軍に対して最高指揮・命令者としての役割を担う。さらに国家の財政に関するあらゆる権限も有している。
韓国の大統領はさらに憲法裁判所長と憲法裁判所裁判官、大法院長、監査院長と監査委員、国務総理と国務委員(閣僚)の任命権を有している。中央選挙管理委員会の構成でも韓国の大統領は委員9人のうち3人を任命できる。
このように韓国は国のリーダーに権力を与え、国の平和と繁栄のために任期の間、働いてもらう。その一方で、絶対的な権力を与える代わりに、その権力を国民に返した時にはその5年間をきっちり清算しなければならない。
任期が終わり、大統領府を去った時に権力を振るって私利私欲に走ったならば、そのツケを払わなければならない。自分とその家族、親戚、側近たちがやってきたことまでひっくるめて責任を追及されることになる。その結果が、毎回のように繰り返される大統領とその親族、そして側近らの収賄、不正蓄財、権力乱用といったスキャンダルとして表に出てくる。
良くも悪くも、このシステムが韓国人のメンタリティーに会っているのかもしれない。