逮捕寸前の尹錫悦大統領の支持率急増の異変! 背景に保守ユーチューバーの存在が
韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の逮捕をめぐって韓国の政情が激動している。それも与党の一部議員の造反で弾劾され、一時は「ご臨終」寸前だった尹大統領が息を吹き返しつつあるからだ。
昨年12月に韓国大手世論調査会社「韓国ギャラップ」が実施した調査(10日~12日)では尹大統領の支持率は就任後最低の11%まで下落していた。また、回答者の71%が尹大統領の非常戒厳令宣言を「内乱」とみなし、野党が訴追した弾劾案に75%が賛成していた。こうした世論を背景に野党が提出した大統領弾劾訴追案は12月14日、賛成204(反対85、棄権3、無効8票)で可決され、今日に至っている。
また、12月23日に発表されたもう一つの大手世論調査会社「リアルメータ」の政党支持率調査では尹大統領を支える与党「国民の力」の29.7%に対して最大野党「共に民主党」は50.3%と、与党は約20ポイントも引き離されていた。
ところが、昨年12月30日に発表された「リアルメータ」の調査結果では「国民の力」は30.6%と、前週から0.9ポイント上昇し、逆に「共に民主党」は4.5ポイント下げ、45.8%まで下落していた。
そして年が明けた1月3日、世論調査会社「公正」がインターネットメディア「ファイナンス・ツデイ」と「ザ・パブリック」の依頼を受け実施した調査では尹大統領の支持率は34.3%を記録していた。驚いたことに約3週間で23ポイントも上昇していたのである。
さらに2日前(1月5日)に発表された韓国世論評判研究所(KOPRA)の調査結果では尹大統領の支持率は「強く支持する」(31%)、「支持する」(9%)を合わせて40%に跳ね上がっていた。政党支持率でも「共に民主党」の39%に対して「国民の力」は36%と接近し、その差は僅か3ポイントだった。
韓国世論評判研究所は韓国のメディア「アジア・トゥデイ」から委託を受け、今月3~4日にかけて全国の有権者約1千人を対象に行っていたが、この結果に驚いた野党は質問項目も含めて「世論調査そのものが偏向的である」として韓国世論評判研究所を公職選挙法違反容疑で告発することを検討している。確かに野党が疑うのも無理もない。
例えば、尹大統領は戒厳令を敷いた理由の一つである与党が大敗した4月の総選挙で不正が行われたとの疑いから選挙管理委員会を点検する必要性を強調していたが、韓国世論評判研究所の世論調査に「選挙管理員会のシステムを検証する必要がある」かとの設問項目があり、回答者の40%以上が「検証が必要」に賛成していた。
それでも、尹大統領の支持率と与党の支持率の上昇が世論調査会社によって操作されたと断定することはできない。現に「公正」の世論調査でも同様の設問があり、43.6%が「検証が必要」と回答していたからである。
世論調査のとおりならば、この異例の支持率上昇の背景には尹大統領支持を自称する保守ユーチューバーの存在があると言わざるを得ない。
主な保守・極右ユーチューブチャンネルには朴槿恵(パク・クネ)政権時代から保守メディア「テレビ朝鮮」に登場していた政治評論家の高成国(コ・ソングック)氏の「高成国TV」(登録者116万人)、1980年代に初めて政治評論家の肩書で登場した裵承喜(ペ・スンヒ)弁護士の「TV 弁護士 ペ・スンヒです」(135万人)、日本に留学経験のある時事評論家の李鳳奎(イ・ボンギュ)氏の「李鳳奎TV」(95万人)や元「KBS」記者出身で極右政党「自由統一党」首席代弁人の成昌慶(ソン・チャンギョン)氏の「成昌慶TV」(102万人)、それに時事評論家でもある「自由統一党」メディア本部長の申恵植(シン・ヘシク)が代表になっている「神の一手」(158万人)などがある。
この他にも日本に進出している新興宗教団体「サラン第一教会」の教祖として知られている全光焄(チョン・グァンフン)氏も「全光焄TV」を通じて熱狂的な信者らにメッセージを発信している。
李鳳奎、成昌慶、全光焄の3氏は昨年11月から尹政権に戒厳令発令をけしかけていたことで知られており、大統領を擁護する発言を繰り返している裵承喜弁護士は「愛国市民、官邸に集まろう」と呼び掛け、「神の一手」の申恵植氏も「ユーチューブを見た者は竜山(大統領室官邸を指す)に集結せよ」と声を張り上げている。高成国氏もまた「尹大統領は自由右派の国民と手を握れば、大統領は持ちこたえることができる」と右派支持層の結集を呼び掛けていた。
こうした後方支援に対して尹大統領は支持者へのメッセージで「支持者らの活動はユーチューブの生中継を通じて見ている」と感謝のの意を表していたが、時に動員数で弾劾反対派が賛成派を上回るのはこうした保守ユーチューバーの存在が大きいと言える。