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朴槿恵前大統領の次は?逮捕寸前の李明博元大統領

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
検察の捜査対象となった李明博元大統領(写真:ロイター/アフロ)

 大企業から多額の賄賂を受け取った収賄容疑などで逮捕され、裁判に掛けられていた朴槿恵(パク・クネ)前大統領に懲役30年と罰金1、185億ウォン(118億円)が求刑された。

 罰金の額は一足先に懲役20年の判決(求刑25年)を受けた共犯の崔順実(チェ・スンシル)被告のそれとほぼ同額であった。しかし、求刑された懲役期間が5年も長いのは、やはり朴前大統領が「崔順実事件」の主犯とみなされたからであろう。それにしても、罰金1、185億ウォンとは莫大な額である。

 韓国は日本以上に経済犯への罪は重く、厳罰に処される。特別犯罪加重処罰法に基づけば、収賄金額が1億ウォン(約1千万円)を超えた場合、最低でも懲役10年が課せられるからだ(最高で無期懲役刑)。

 朴前大統領の収賄額はサムスン電子絡みだけで430億ウォン(約43億円)に上る。これに免税店事業権の代価としてロッテが朴前大統領と崔順実被告が設立した「Kスポーツ財団」に供与したとされる額を含め、朴前大統領には総額で592億ウォンの賄賂嫌疑が掛けられていた。

 韓国は法律上、収賄罪は受け取った額の2倍から5倍を罰金として付加することになっている。そのため検察は朴前大統領に2倍の1、185億ウォンの罰金を求刑したことになる。検察がこれまでに把握した朴前大統領の財産は60億ウォン(6億円)程度なので判決公判で60億ウォン以上の罰金刑が確定すれば、朴前大統領は強制労役刑に処せられることになる。

 それでも、朴前大統領への求刑は反乱(1979年のクーデター)と内乱(1980年の光州事件)、秘密資金の疑いで1995年に逮捕され、1997年にそれぞれ死刑と無期懲役が求刑された全斗煥、盧泰愚元大統領らに比べればまだ軽いほうである。

 両先輩大統領は判決ではそれぞれ減刑(無期懲役と懲役12年)されたが、全斗煥氏の場合は追徴金が2,259億ウォン(225億円)、盧泰愚氏にも追徴金が2,838億ウォン(約283億円)も課せられていた。

 盧泰愚大統領(1998年2月―1993年2月)以後も歴大統領はいずれも本人もしくは家族や親族、側近らが収賄容疑などで逮捕、裁判に掛けられている。

 金泳三大統領(1993年2月―1998年2月)は次男が逮捕され、金大中大統領(1998年2月―2003年2月)は3人の息子が、そして盧武鉉大統領(2003年2月―2008年2月)もまた、兄が逮捕され、夫人と本人自身にも容疑が掛けられていた。

 朴槿恵大統領の前任者の李明博(リ・ミョンバク)大統領(2008年2月―2013年2月)もまた、実兄が逮捕されているが、李明博氏自身も現在、様々な疑惑で検察の捜査対象に上がり、今まさに逮捕寸前の状態にある。

 李明博元大統領に掛けられている疑惑の一つに国家情報院の裏金疑惑がある。

 情報機関の国家情報院が李明博政権時代に大統領府に「裏金」を渡していたとの疑惑である。裏金の一部は李政権に批判的な民間人の査察に使われたり、選挙での不法世論操作に使われたり、金大中・盧武鉉前任大統領らのゴシップ性の不正を収集するのに使用されたり、さらには夫人のブランド品購入に使われたと囁かれている。

 また、李元大統領には「BBK疑惑」とか「ダース秘密資金疑惑」と称されているスキャンダルもある。

 「BBK」は在米韓国人の金敬俊氏が1999年に韓国で設立した投資顧問会社である。金敬俊氏は株価を操作し、投資資金を横領したとして逮捕され、その後、実刑判決を受け、服役を余儀なくされたが、李明博氏は大統領在任時代に大統領府を動員して「BBK株価操作」関連事件に介入したとの疑いを掛けられている。

 検察は李元大統領の指示で設立されたとされる自動車部品会社「ダース」(旧、テブ機工)の秘密資金120億ウォン(約12億円)の造成経緯や「ダース」が「BBK」への投資金140億ウォン(約14億円)を金敬俊氏から回収する過程で大統領府が介入したと睨んでいる。「ダース」が投資金回収のため米国で起こした訴訟の代金をサムソンが収監されていたオーナの恩赦を見返りに支払ったのが事実ならば、李元大統領に収賄罪が適用される。

 この疑惑との関連ではすでに李明博元大統領の子息や兄、親族、さらには「李大統領の金庫番」と称される側近らが軒並みに検察に召還され、調査を受けている。仮に「ダース」が李元大統領の所有ということが判明すれば、李元大統領は少なくとも大統領選挙候補者財産の虚偽申告で公職選挙法に問われることになる。

 李元大統領への疑惑はこれだけにとどまらない。

 李大統領は大統領在任中の2011年5月に退任後の居住のため土地(合計2、605平方メートル)を購入したが、名義は息子になっていた。李元大統領側は土地代のうち「6億ウォンは夫人名義土地を担保に銀行から借り入れした額で、残り5億2千万ウォンは親戚から借り入れた」と原資について説明したが、息子名義の購入は不動産実名法に違反していた。これだけでも仮に有罪となれば、李大統領親子共に5年以下の懲役、2億ウォン以下の罰金の刑に処せられることになる。

 さらに、この土地は李元大統領がソウル市長時代の2006年にこの一帯をグリーンベルトから解除したことで土地の価格が急騰した場所であった。仮に開発の利益があることを見込んだうえで、土地を安く購入したならば、業務上背任にあたる。

 検察は李明博元大統領の召喚時期を見計らっているが、パラリンピック終了後(3月18日)が有力とみられている。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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