目前の「尹大統領の逮捕令状執行」 攻める「公捜庁」 守る「警護庁」の攻防
尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の逮捕はカウントダウンに入ったようだ。
独立機関の高位公職者犯罪捜査処(公捜処)、警察庁国家捜査本部、国防部調査本部から成る韓国の合同捜査本部は尹大統領に対する逮捕令状が7日に発付されたことで早ければ今夜未明、遅くとも明日には再度、逮捕に乗り出すと伝えられており、大統領官邸周辺では緊張が高まっている。
1度目(1月3日)は二重、三重のバリケードや「人間の壁」を築き、逮捕阻止に成功した守る側の大統領警護庁は正門から大統領夫妻のいる公邸までの400~500メートルの間を陸軍首都防衛司令部「55警備団」所属の約400人、「33軍事警察隊」所属の約150人で守り、最後の砦である公邸を警護庁の警護員750人で死守する構えだ。
防御手段として官邸周辺に鉄条網を張り巡らす一方で、正門をバス5台でブロックする他、ドローンや無人機が使用されることも想定し、ドローン電波妨害器から小型無人機探知レーダー、それに多目的戦術車両まで用意している。警護員らには拳銃、自動小銃などを所持させている。
警護責任者の朴鍾俊(パク・ジョンジュン)大統領警護処長は否定しているが、前回は警護員に「再び入ってきたら、警察官であっても誰であっても結束バンドで逮捕しろ」と指示し、実際に結束バンドを用意していたもと言われている。また「もみ合いで押される場合、空包を撃ち、だめなら実弾を発砲しろ」との命令も下していたとのことである。
一方、「最後の令状執行との覚悟で臨む」(「公捜庁」)合同捜査本部は警察機動隊45個部隊2700人、逮捕組(令状執行刑事)300人、警察特攻隊30数人を投入する計画で、使用する装備としてドローン、装甲車、特殊レッカー車、放水車などを用意し、要塞化された大統領公邸敷地に突入するものとみられている。当然のごとく、捜査側も警護側同様に拳銃、自動小銃などを携帯している。
合同捜査本部は仮に警護員が抵抗する場合、公務執行妨害で逮捕する方針だが、すでに公務執行妨害で出頭を命じている朴鍾俊(パク・ジョンジュン)警護処長をはじめ次長、本部長ら幹部4人を真っ先に現行犯逮捕し、指揮系列を混乱させることを狙っている。前回は衝突を恐れ、逮捕を躊躇ったため公邸200メートルまで接近しながら、撤収せざるを得なかった教訓からだ。
仮に、警護員が激しく抵抗し、その結果、捜査側に負傷者が出た場合、警護員らを特殊公務執行妨害致傷容疑で3年以上の刑に処する方針だ。
数の上で圧倒的に劣る警護庁は大統領代行である崔相穆(チェ・サンモク)副総理を通じて警察と軍隊に増員を要請しているが、国防部と警察庁は応じるどころか、警護庁に出向している「55警備団」と「33軍事警察隊」に対して逮捕令状執行を物理的に阻止しないよう命じている。前回も同様の指示が出され、その結果、捜査陣は正門から入り、公邸近くまで進入することができた。
但し、指揮権が警護庁にあることや「55警備団」と「33軍事警察隊」の現場責任者が大統領に忠誠を誓っているとの情報も流れており、前回同様に実際にサボタージュするかどうかはその時点になってみないとわからない。
また、警護庁はソウル警察庁にも大統領公邸と外郭の警備を担当する「101警備団」と「102警備団」からの増強を要請しているが、ソウル市警察庁から拒絶されたとも伝えられている。このため警護庁は守りを固めるため尹大統領を支持している元OB職員をかき集めているとの情報も流れている。
どちらにせよ、捜査陣が強行突入すれば、衝突は必至だが、注目されるのはテロ対策が任務の警察特攻隊約30人の役割で、一説ではヘリを使って、最後の防御ラインである第3バリケードの後方に侵入、公邸を制圧する計画と言われているが、実際に特攻隊が投入さるかどうかは予断を許さない。