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小中高生の自殺過去最多499人:子供若者の命を守る方法

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
写真はイメージ:命輝きますように(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

■小中高生の自殺過去最多499名

子供若者の自殺が増えています。

2020年の小中高生の自殺者数が統計のある1980年以降最多の499人に上ったことが16日、警察庁のまとめ(確定値)で分かった。〜

 厚生労働省自殺対策推進室は「新型コロナウイルス禍で学校が長期休校したことや、外出自粛により家族で過ごす時間が増えた影響で、学業や進路、家族の不和などに悩む人が増加したとみられる」と指摘した。(共同通信3/16)

自殺の原因は複合的です。安易にコロナを原因にしたくはありませんが、コロナによって学校生活や家庭の事情が悪化したことは、確かに子供若者の心に悪影響を与えているでしょう。

■子供の自殺の特徴

1. 衝動性

 大人から見ると、何の前触れもなく、突然自殺してしまいます。年齢が低いほど、その傾向は強いようです。死の意味を十分に理解していないことや、理性が十分発達していないこと、感情が高まりやすいことが原因と考えられます。

2. 確実な手段

 若者よりもむしろ子供の方が、致死度の高い方法をとることが多いようです。

3. 小さな動機

 子どもの自殺にも動機はありますが、大人には理解できない小さなきっかけで自殺してしまうことがあります。大人にとっては小さなことでも、子どもにとっては死を考えるような深刻なことになることがあります。

4. 影響されやすさ

 大人以上に、友達の自殺や、自殺報道に影響されやすいので、周囲の注意が必要です。

5. 死生観

 死を現実的なものとは考えられなかったり、美化してしまうことがあります。

6. その他

 純粋すぎたり、敏感すぎること。不登校、家出、非行などが自殺の前に起こることもあります。友人に同情して一緒に死んだり、後追い自殺することもある。

■子供の自殺と若者の自殺

小学生の自殺は「子供の自殺」です。高校生の場合は、「若者の自殺」の特徴が見られることが多いでしょう。中学生の場合は、子供の自殺の特徴と若者の自殺の特徴が混在していることもあります。

■自殺とは

大人の場合も、若者の場合も、自殺は「心のメカニズムの誤作動」と言えるでしょう。死を考える人は、決して弱い人でも卑怯な人でもありません。むしろ、真面目で一生懸命な人たちです。

本来なら、前向きに生きられるはずなのですが、心が誤作動を起こします。絶望し、孤独感に押しつぶされ、人に迷惑をかけてはいけないと感じ、生きていることが死ぬことより辛く感じます。そして自殺することが最善の方法だと思い込んでしまうのです。

■若者の自殺の特徴

若者は、しばしば自殺のサインを出します。言葉で、文字で、死にたい、消えたい、やめたい、遠くへ行きたいなと、様々な形で死にたい思いを表します。

けれども、若者の「死にたい」は、実は「幸せになりたい」です。だから若者たちは、自殺のサインを出すのです。そして美しい死に方とか、寂しくない死に方とか、死に方に拘ります。また、時間がかかる自殺方法を選ぶこともよくあります。

これらは、狂言自殺ではありません。死にたい思いは、本気です。ただ、心理学的に見ると、その心の奥底に「幸せになりたい」「生きたい」という思いがあるとされています。

中高年の自殺とは異なり、病苦でもなく、経済苦でもなく、周囲のたくさんの人たちがいるのに、死を選ぶことがあります。

■子供若者の自殺予防のために

自殺者の中でもっとも大きな割合を示すのは、中高年男性です。中高年の自殺率は、失業率が下がったり、うつ病の早期発見早期治療を行うことで減らすこともできます。

しかし、子供若者の場合は、効果が明確な自殺対策がなかなかありません。

孤独感を与えない

子供若者も、挫折があり、失敗があります。それでも大丈夫だと伝えたいと思います。何があっても、親(家族)の愛は微塵も下がらないことを日頃から伝えたいと思います。

自殺の危険性が高い子供若者の背景には、自殺の危険性の高い大人がいるとも言われています。これは、自死遺族を責める言葉ではありません。子供若者の命を守るためには、両親や祖父母が、自分自身を守ることが大切だということです。

自殺のサインを感じたら/「あれ?」と感じたら

自殺のサインを感じ取ったら、声をかけましょう。説教も感動的な話も必要ありません。ただ声をかけて、おしゃべりしましょう。

自殺のサインを感じ取るのは、直接的な言葉を除けば、簡単ではありません。自殺のサインとわからなくても、「あれ?」と感じたら、声をかけましょう。会話しましょう。死とか命とか、そんなことを話題にする必要はありません。雑談で結構です。

一声かけて、もう一声

「あれ?」と感じたら、一声掛け、そしてもう一声かけましょう。「大丈夫?」と声をかければ、「大丈夫」と返事が帰ってくるでしょう。でもこれで終わらず、もう一声かけて、おしゃべりしましょう。

若者たちへの自殺予防教育

若者が自殺した時、大人は全くサインに気がつかなくても、友人たちの中には、「やっぱり」と思う人もいます。誰かにサインを出していることもあるのでしょう。

若者たちに、事前に教えておきましょう。「自殺のサインを感じたら、大人に話せ」と。若者たちにとっては、友人からの話を大人に話すのは、時には裏切り行為です。しかし、友情よりも命が大切だと教えましょう。信頼できる大人に話せと伝えておきましょう。

サインへの対応:大騒ぎせず、無視もせず、寄り添おう

サインを感じた大人、知らせを受けた大人としては、「大騒ぎせず、無視もせず」が基本です(すぐに止めなければ実行してしまうような場合は別です)。一言つぶやいただけなのに大騒ぎし過ぎれば、もう本音を話してくれなくなります。しかし、何もしないことも孤独感を感じさせ良くありません。

複数の目で見守り、寄り添いましょう。

死を真剣に考えている子供若者も、その死にたい思いの波を乗り越えれば、また生きる意欲が戻ってきます。前途揚々の子供若者たちの命を、みんなで守りたいと思います。

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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