なでしこジャパン・海外組の近況
男子同様、女子サッカーでも海外組が増えつつある。海外サッカーは欧州リーグが続々と開幕したが、一足遅れて女子サッカーリーグも開幕を迎えている。
なでしこジャパンで活躍する選手達の近況はどうなっているのか?
2回に分けて紹介したいと思う。
今回は2人の選手を紹介する。
★大儀見優季(チェルシー/イングランド)
ドイツ、女子ブンデスリーガで昨年得点王となり、今年イングランドのチェルシーに入団した大儀見優季選手は、8月2日に新入団会見を行い、4日の試合にさっそく先発&フル出場を果たした。
4−2−3−1のトップ下でスタメン出場し、イングランドでの初陣を4−0の勝利で飾った。自身も2ゴールに絡み、チームの勝利に貢献。
ハイライト映像からは(動画ハイライト:https://www.youtube.com/watch?v=-u4gsfPzYZ0)チームメイトのゴールを一緒に祝う、良い雰囲気が感じられる。
チェルシーといえば、イングランドの首都ロンドンに本拠地を置き、ロシアの石油王アブラモヴィッチオーナーの元で毎年イングランドプレミアリーグの上位を占める言わずと知れたビッグクラブだ。名称モウリーニョの元で、今年も良い開幕スタートを切っている。
男子のトップチームが2000年代に入って3度のリーグ優勝をしている一方、女子部門であるチェルシーレディースはトップリーグで優勝したことがない。イングランドにおける女子サッカーリーグは2011年からはFA女子スーパーリーグが新設されたが、その中で圧倒的な強さを見せているのが、2010年までのFA女子プレミアリーグ時代から通算9連覇中のアーセナルレディースだ。
その他に強豪といわれるのは、バーミンガム・レディースやエバートン・レディース。秋〜春制を採用している女子ブンデスリーガやロシアリーグと違い、イングランドではなでしこリーグと同じ春〜秋制を採用しているため、9月1日時点で既に12試合(全14試合)を終えているが、2年連続6位のチェルシーは、今シーズンもここまで3勝1分8敗と負け越している。決して強豪とは言えないのだ。
だが、今年は新たに3人の外国人選手を獲得し、強化に本腰を入れ始めている。
ブラジル代表のエステル(MF)、スウェーデン代表のソフィア・ヤコブソン(FW)を獲得し、大儀見優季は今年3人目の外国人選手として白羽の矢が立った。
チェルシーレディースはトップチームとは違ってセミプロであり、試合の入場料は5ポンド(約800円)で、ホームスタジアムであるImber Coartの収容人数は3000人。観客数はドイツと同じぐらい(入場料は10ユーロ:約1300円、平均観客数は800人前後)だ。
女子サッカーを取り巻く環境面ではまだまだドイツには及ばないだろうが、あらゆる面においてチェルシーレディースは成長の過渡期にあり、あえてそのチームを選択したところが彼女らしい。大きな期待を背負って入団した様子が、現地紙にも取り上げられている。「Ogimi's dream comes with challenging reality (Japan News)」 http://the-japan-news.com/news/article/0000485578
デビュー戦後のブログで、彼女は「楽しかった」と、手応えを記した(大儀見優季オフィシャルブログ:http://ameblo.jp/y-naga19/entry-11587445823.html)
4/14 vsバーミンガム △1-1
4/20 vsドンカスター ○4-0
5/12 vsリバプール ○2-1
5/16 vsブリストル ●0-2
5/28 vsバーミンガム ●1-2
6/6 vsアーセナル ●1-2
6/6 vsエバートン ●1-4
8/4 vsドンカスター○4−0
8/11 vsリンカン●0−2
8/17 vsリバプール●3−4
8/29 vsアーセナル(ロンドンダービー)●0−1
9/1 vsエバートン●2−3
9/5 vsブリストル
9/29 vsリンカン
チェルシーのサッカーはポゼッションの意識が高く、ハイプレッシャーという点でも、日本が目指すスタイルとの共通点は多そうだ。
その中で、大儀見はストライカーとしての能力を高めることだけでなく、中盤まで下がってゲームメイクするという役割にも意識して取り組んでいるようだ。特に、そういうポゼッション志向のスタイルではチームメイトと生かし合うこと、つまりチームメイトの信頼を得ることが重要になるだろう。プレーはもちろんのこと、これまでとは語学や生活スタイルなどの異なる新天地での挑戦を心から楽しむことができるのも、彼女の武器だ。
リーグは残り2試合。
ドイツでは女子ブンデスリーガと女子チャンピオンズリーグのタイトルを日本人女子として初めて獲得し、新天地イングランドではFA女子スーパーリーグでプレーする初の日本人選手となった大儀見。
常に高い目標を設定し、妥協を許さず突き進む彼女の新たな挑戦に期待したい。
★熊谷紗希(リヨン/フランス)
7月初めにフランスのリヨンと2年契約をかわした熊谷も、新天地での新たな挑戦を楽しんでいるようだ。9月1日にフランス女子リーグD1(Feminine Division 1)が開幕し、熊谷はアウェーのエナン戦でフル出場し、4-0の快勝に貢献する輝かしいデビューを飾った。
リヨンといえば、フランスリーグ(D1フェミナン)を7連覇中のフランス王者であり、女子チャンピオンズリーグは、2011年シーズンと2012年シーズンに2連覇を果たし、09年と昨年は準優勝しているているヨーロッパ屈指の強豪クラブ。
昨年に第一回が開催された国際女子クラブ選手権では、INAC神戸レオネッサを下して初王者の座を射止めた。チームにはフランス代表選手が多く在籍しているほか、他国の代表選手クラスが勢揃いしており、「女イブラヒモビッチ」の異名をとるスウェーデン代表のロッタ・シェリンのほか、アメリカ代表やスイス代表選手も在籍する。昨年までなでしこジャパンの大野忍と大滝麻美が在籍していた。
昨年の秋に現地に取材に行ったが、ほぼプロチームと言っても良いほど選手の待遇は保証されたものだった。
天然芝と人工芝を合わせて10面あり、通りを挟んである立派なクラブハウスは男子のトップチームと共有しており、練習後には一流シェフが腕を揮う専用の食堂でランチをする。選手には車も支給されており、同じ車が並ぶ駐車場の景色が壮観だった。選手達にとっては、こういった素晴らしい環境で一流の選手達とプレーすることで、上には上がいることを身をもって学び、もっと努力しなければいけないという自覚が芽生える。
2011年女子ワールドカップ決勝戦で、勝敗を決めるPKで最後のキッカーを務め、スタメンで最年少ながら堂々としたパフォーマンスを見せた熊谷は、フランクフルトでは1年目から主力に定着し、2012年の女子チャンピオンズリーグでは決勝の舞台にも立った(ボランチでフル出場/結果は0−2でリヨンに敗れた)。
リヨンでは、185センチの長身を誇るフランス代表のルナールとのコンビネーションに注目したい。
歴史あるリヨンのホーム、スタッド・ジェルラン(Stade de Gerland)で若き日本人CBがスタンドを沸かせる日も遠くないだろう。
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