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なでしこジャパン、パリ五輪に臨む18名が発表!サプライズは…

松原渓スポーツジャーナリスト
なでしこジャパンのパリ五輪メンバーが発表された(写真:アフロ)

 6月14日、都内でパリ五輪に臨むなでしこジャパンのメンバー18名が発表された。

 佐々木則夫女子委員長と共に登壇した池田監督が呼び上げたメンバーは、4名のバックアップメンバーも含めた22名。5月末から6月上旬にかけてスペインで行われたニュージーランドとの2連戦に帯同した22名から変更はなく、“サプライズ”はなかった。

パリ五輪出場メンバー(18名)

GK(2人)山下杏也加、平尾知佳

DF(6人) 熊谷紗希、清水梨紗、北川ひかる、南萌華、高橋はな、古賀塔子

MF(7人)清家貴子、長谷川唯、林穂之香、長野風花、宮澤ひなた、藤野あおば、谷川萌々子

FW(3人)田中美南、植木理子、浜野まいか

バックアップメンバー(4名)

GK大場朱羽、DF守屋都弥、DF石川璃音、FW千葉玲海菜

 池田監督が最終的に18名を決断したのは、会見2日前の朝だったという。

「22名を選ぶ上では、一人一人が持っている力を出し切れること、中2日で五輪を戦う中で個人のタフさ、チームとして戦い抜けるタフさや、これまで積み上げてきたものも重視しました。自分の持っている力を出しつつ仲間の力も出せる。ピッチ上はもちろん、それ以外でも献身的に動ける。そういう部分も考えるポイントになりました。あとはグループステージを戦う上で、戦術的な部分でのポジションバランスも考えました」

ワールドカップからの積み上げを重視したメンバー構成に
ワールドカップからの積み上げを重視したメンバー構成に写真:なかしまだいすけ/アフロ

 2021年の池田ジャパン発足以降、これまでのチームの足取りを考えれば、メンバーの顔ぶれは自ずと絞られた。リーグでの活躍や代表での貢献度などを考慮して少しずつ絞り込み、ワールドカップイヤーの昨年から主軸をほぼ固定。親善試合では、戦術的なオプションを増やすためにさまざまなチャレンジを行ってきたため、今年に入って内容面では厳しい試合も少なくなかったが、アジアから2枠の厳しい最終予選を勝ち抜き、メンバー間での意思疎通や戦術の積み上げを進めてきた。

 池田太監督はワールドカップ以降、チームがレベルアップしたポイントとして「ピッチ内での解決能力」を挙げた。

 今回のメンバーの平均年齢は25.11歳(大会開幕時)で、昨夏のワールドカップメンバーが15名を占める。トレーニングパートナーとして帯同した谷川萌々子と古賀塔子が正式にメンバー入りし、同大会からは北川ひかるが新たにチームに加わった。

海外でプレーする10代の古賀(左)と谷川(右)がメンバー入りを果たした
海外でプレーする10代の古賀(左)と谷川(右)がメンバー入りを果たした写真:長田洋平/アフロスポーツ

 複数ポジションをこなせる選手が多く、特に中央は選手層が厚いが、一方で左右ウイングバックの本職は清水(右)と北川(左)のみ。運動量が求められるサイドのポジションを、連戦の中でどうマネジメントしていくのかは注目したいポイントだ。

「これまでの活動の中で試合以外のところでも、(さまざまなポジションで)テストをしてきました。システムによってはディフェンスの選手がサイドでやれたり、攻撃的な中盤で登録している選手がワイド、ウイングバックや外のポジションをやれたりというポリバレント性も考えて対応できるのではないかと判断しました」(池田監督)

 キャプテンは、これまでW杯4大会、五輪2大会を経験した最年長の熊谷紗希。2011年のワールドカップ優勝、2012年のロンドン五輪銀メダル経験を持つリーダーがピッチ内外でチームを牽引する。

熊谷紗希がキャプテンとしてチームを牽引する
熊谷紗希がキャプテンとしてチームを牽引する写真:なかしまだいすけ/アフロ

【戦術的な積み上げと、個々の成長が自信に】

 戦術的な部分では、3-4-3がメインだったW杯から、アジア2次予選、最終予選、国際親善試合を通じて4-3-3や4-4-2などもオプションとして追加し、選手間でイメージを共有する力、試合中の修正力を高めてきた。

 代表で7年目になるGK平尾は、その連係に自信を示す。

「ワールドカップから何人かしか変わっていない状態で戦ってきているので、お互いに何がやりたいかを分かっていてやりやすいですし、世界一を取れるメンバーだと思います」

 18年から右サイドで主力としてプレーしてきた清水は、6月のスペイン遠征では、「大きい大会で悔しい思いしかしてきてなくて、毎回、『次こそは(頑張ります)』と言ってきたので、もうそういうことを言いたくない」と、強い覚悟を口にしていた。イングランドで2シーズンを戦い、個人としても積み上げてきた。

「金メダルを目指せるチームだと思います。短期決戦で難しいところはあると思いますが、ノリにノれば優勝は見えてくると思う。そのために、自分も貢献できたらと思います」

一体感を強みに、流れに乗りたい
一体感を強みに、流れに乗りたい写真:なかしまだいすけ/アフロ

【強豪ぞろいの“死のグループ”をどう勝ち抜くか?】

 スタッフも含めて50人近い大所帯でサポートも充実していたワールドカップに比べると、五輪はスタッフの数も制限されており、連戦を戦い抜く上ではスタッフのグループワークも重要になる。その点は海外遠征も含めてシミュレーションしてきたが、7月のパリの暑さや選手村での動きなどは、さらなる対応力が求められるポイントだ。

 日本はグループステージでスペイン(7月25日)、ブラジル(28日)、ナイジェリア(31日)と戦う。初戦で対戦するスペインは、昨年のワールドカップチャンピオンで、最難関の相手。同大会では日本は4-0でスペインを下しているが、この1年間で日本対策をかなり入念に練っているに違いない。出場国は12チームで、各グループ2位と、3位の上位2カ国がノックアウトステージに進出できる。

「まずは初戦をしっかりと迎え撃つ部分と、3戦を通してグループステージを勝ち抜く、総合的な考えを練っています」(池田監督)

 7月8日から始まる国内合宿以降は、対戦国の対策にも重点が置かれるだろう。なでしこジャパンは7月13日に金沢でガーナ女子代表と国内最後の壮行試合を行い、その後、開催地のパリへと発つ。

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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