「検察は文在寅を徹底的に調べろ」気勢を上げる与党! 娘は餌で、尹政権のターゲットは父親
日本は政権が交代しても新総理によって前総理が裁かれることはない。与党内での政権交代であっても、また野党への政権交代であっても「政治報復」は皆無だ。
しかし、韓国は事情が異なる。政権交代の度に前政権に対する追及が行われるのが慣例、伝統となっている。言わば、前政権の追及は韓国のお家芸である。
直近の例だけでも盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領は李明博(イ・ミョンパク)政権下で不正疑惑を追及され、自殺に追い込まれ、その李大統領も朴槿恵(パク・クネ)大統領ともども文在寅(ムン・ジェイン)政権下で在任中の職権乱用や背任容疑を追及され、収監されてしまった。
尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権も例外ではない。
野党第1党の李在明(イ・ジェミョン)「共に民主党」代表と第2野党の曺 国(チョ・グック)「祖国革新党」代表が様々な容疑ですでに司直の手に委ねられているが、釜山市の田舎に引っ込み、隠遁生活を送っている文在寅(ムン・ジェイン)前大統領にも今まさに、司直の手が伸びている。
文前大統領の長女、ダヘ氏の元夫の航空会社「イースター航空」不正採用疑惑を調べている検察は8月30日にダヘ氏の自宅を家宅捜索したが、令状に父親の文前大統領を賄賂授受の被疑者と明記していたことはそのことを端的に示している。
航空には全く縁も知識もない元夫が航空会社に、それも役員として採用されたのは文前大統領の後ろ盾があってのことと睨んでいる検察は元夫が在職中に受け取った給料約2億ウォン(約2200万円)を文前大統領への賄賂とみなしている。元夫が就職するまでの間、文前大統領が娘夫婦の生活を援助し、就職と同時に援助をストップしたことから娘との共謀が成立すると捉えているようだ。
この疑惑は文在寅政権下の2020年に当時野党だった現与党「国民の力」及び保守系の市民団体が検察に告訴した事柄である。尹大統領が検察総長出身だから検察が調査に力を入れるのは至極当然のことである。
「国民の力」は早速、最高委員(幹部)会議を開き、検察に対して文前大統領を徹底追及するよう求めていたが、「国民の力」が問題にしているのは娘の疑惑だけではない。
文前大統領には様々な疑惑が掛けられている。親交があった人権派弁護士の与党候補、宋哲鎬(ソン・チョルホ)氏が当選した2017年の蔚山市長選挙への介入疑惑、2019年の北朝鮮漁師送還事件、北朝鮮海上警備兵による韓国公務員射殺事件、原発データー改ざん疑惑等々。
北朝鮮漁師送還事件とは、北朝鮮漁船員2人を南北軍事境界線がある板門店で北朝鮮に強制送還した事件を指している。
漁師2人は韓国への亡命を求めていたのに文政権は韓国に来る途中で2人が同僚を殺害したことを理由に北朝鮮に強制送還したため検察は北朝鮮で恐らく処刑されたものと推定し、強制送還の決定を下した文前大統領に「間接殺人罪」の適用を検討している。
また北朝鮮海上警備兵による韓国公務員射殺事件とは、2020年9月にNLL(北方軍事境界線)に近い延坪島付近で行方不明となった海洋水産部所属の漁船指導員が北朝鮮側の銃撃を受けて死亡した事件のことである。
当時文政権は男性が自らの意思で北朝鮮に渡ったと判断し、北朝鮮による銃撃も「偶発的な事故の可能性が高い」と結論付けたが、尹政権の国防部と海洋警察庁は「男性が越境したと断定できる根拠はない」として文政権は調査結果を捏造したとみて、文政権の責任を追及している。
さらに、原発データー改ざん疑惑とは、東京電力福島第1原発事故を踏まえ脱原発を公約に掲げていた文政権が脱原発政策を進めるため「ブラックリスト」を作成し、産業貿易資源部傘下の公的機関の電力関係者らに辞任を迫った疑惑と月城原発1号機を廃棄するためその経済性評価を捏造した疑惑を指している。
この件では文政権下で産業通商資源相を務めた白雲揆(ペク・ウンギュ)氏らが職権乱用権利行使妨害の容疑で逮捕状が請求されており、「月城原発の早期閉鎖」決定過程について捜査している大田地検刑事4部はすでに大統領記録館の強制調査を終えている。
文前大統領を擁護する「共に民主党」は「明らかな政治報復である」と反発しているが、大統領室及び与党「国民の力」は「過ちを正すのは当然で、通常の正常な司法システムについて政治的に取り上げるべきではない。(積弊清算は)文前政権もやっていたではないか」と反論している。
検察が本腰を入れて、追及すれば、収監もあり得るが、そうなれば、政治混乱は避けられない。