成層圏の大変動と異常気象
成層圏の突然昇温とは
今から64年前、1952年2月のドイツ。当時、西ベルリンにあったドイツ自由大学のシェルハーグ教授はある奇妙な現象に気が付きました。成層圏(上空10キロー50キロ)の気温が突如、40度も上昇したのです。それから一週間ほど異常高温が続きました。
これがのちに「成層圏の突然昇温(stratospheric warming)」と呼ばれる現象です。成層圏では温度が上空に向かって高くなるため、安定した層とされ、激しい現象は起こらないものと考えられていました。しかし、現在では北半球規模で激しい温度変化が起こることが分かっています。
今、なぜ突然昇温か?
気象学を勉強すると必ずでてくる成層圏の突然昇温ですが、一般的にはまったくと言っていいほど知られていない専門用語です。
では、なぜ突然昇温を話題にしたのか?それは異常気象との関連が分かってきたからです。
突然昇温が起こるとき、対流圏(日々の天気現象が起こる層、地上から上空10キロ)では、ジェット気流(上空の強い西風)が南北に大きく蛇行し、ブロッキングという現象が発生します。
このブロッキング現象は低気圧、高気圧の動きに大きな影響を与え、異常気象の引き金となります。イギリス気象庁(Met Office)は突然昇温よって常にブロッキング現象が発生するわけではないが、冬の寒さが厳しくなるリスクが増すと指摘しています。
日本の天候への影響はよくわかっていません。しかし、気象観測の技術向上により、突然昇温のメカニズムの解明、そして予測へと着実に進歩しています。
64年前、気温データの誤送信かと疑われた成層圏の激しい気温変化は今、異常気象を解明するひとつの切り札となっているのです。
【参考資料】
イギリス気象庁(Met Office):Sudden Stratospheric Warming,29 February 2016
小倉義光,2002:成層圏の突然昇温,一般気象学(第2版),東京大学出版,260-264.
廣田勇,2003:ベルリン現象から50年一突然昇温研究の現代的意義一,天気,50,5-15.