発電などに使う石炭、オーストラリアから66.0%・インドネシアから12.6%を輸入…日本の石炭事情
日常生活で見かける機会はあまりないが、エネルギー源としては重要な資源の一つ、石炭。その実情を資源エネルギー庁が2023年6月付で発表したエネルギー白書から確認する。
まずは日本が「石炭の他国からの輸入」との観点で、どのような立ち位置にいるかの確認を行う。
中国の輸入量が大きく、直近値の限りでは世界最大値。そしてそれにインドが続いている。両国とも工業化が急激に進んでおり、その一方で国内産出量の増加が追い付かないため(国内採掘量も増加している)。白書ではこの件について「中国、インドなどアジア諸国では電力需要の増加に伴い石炭火力発電所での石炭消費が増加し、石炭輸入量が増加しています」「中国の石炭輸入量は、2009年に1億トンを超え、2011年には2億トン超、2013年には3億トン超へと拡大しており、2011年に日本の輸入量を抜いて最大の輸入国になりました。また、2014年にはインドの輸入量が日本の輸入量を上回り、世界第2位の輸入国となりました」などの補足説明が行われている。
日本の輸入量が多いのは、大量の石炭を燃料・原料として使う一方、ほとんど日本国内での生産が行われていないため。日本にも石炭は大量に埋蔵されているのだが、コストの点で割に合わず、輸入した方が安く取得できるのが国内の石炭が採掘・使用されない主な理由。記録の残っている限りでは国内炭は輸入炭と比べて2倍から3倍の価格がついている。1991年度からは国内原料炭の生産はなくなり、国内一般炭の量もごく少量にとどまる形となっている(詳しくは後述)。
続いて日本の石炭供給量(要は採掘・精製量)の推移。工業化の進展とともに石炭の消費量も増え、総計は右肩上がりに上昇。一方で上記の通り採算性の問題などから国内炭田は次々に閉鎖され、生産量も減少。2021年度では消費量の99.6%までを輸入産に頼る結果となっている(「鉄鋼精錬用などの原料炭」「火力発電用の一般炭」の区分はされていない)。
データが公開されている期間でもっとも古い1965年度では、石炭の輸入比率は25.8%。1960年後半から急上昇を続け、1988年には9割を超えている(90.2%、初の9割超え)。これは石油へのエネルギー需要の転換、割安な輸入炭との価格競争に国内生産炭が打ち勝つことができなかったため。
2005年度には国内生産量は124万9320トン/年にまで減少してしまうが、その後の原油価格の高騰を受けて減少はストップ。直近の2021年度では国内一般炭は約66万トンが生産され、そのほぼすべてが発電用として消費されている。
日本の石炭需要のほとんどをまかなう輸入炭だが、一般炭も原料炭もオーストラリアからの輸入が一番多い。2位以降は順位が異なる部分もあるが、一般炭と原料炭で上位国は同じ。双方の石炭を合計した比率としては、オーストラリアからのものが66.0%と2/3近く、インドネシアからが1割台後半となり、この2か国だけで8割近くを占める形となっている。
石油ほどではないものの石炭も埋蔵箇所には地域によるかたよりがあることから、ある程度の輸入先が集中してしまうのは仕方がない面もある。とはいえ特定少数国からのみの多分の供給は、カントリーリスクの観点ではマイナスに違いなく、今後の状況改善模索が求められる。
最後に石炭の利用方法。
電力事業における石炭消費量は、開発電源の多様化に伴い一度減少するが、石油危機後には石油の代替品として注目を集め、増加に転じている。2009年度以降は普及による需要低下、法的措置の変更(「みなし措置」満了で卸電気事業にかかわる許可を受けていた共同火力が電気事業者から外れた)、震災による発電所の被災で減少など、減少事案が相次いだ。しかし2012年度以降は被災発電所の復旧と、発電様式のアンバランス状態の調整措置による石炭火力発電所の新規運転開始などにより大幅に増加している。
2016年度では電気業の消費量が急激に増加しているが、これは電気業小売業参入の全面自由化に伴う電気事業類型の見直しにより、調査対象事業者が変更されたことが大きく影響している。2020年度では大きな減少が生じているが、これは新型コロナウイルスの流行による経済の停滞が影響している。直近となる2021年度では、その減少からの持ち直しが確認できる。
日本国内に限っても天然ガスとともに石炭は再び注目を集めつつある。さらに震災以降、アンバランス的な状態に陥った国内エネルギー情勢を受け、緊急代替措置として旧式の発電所も合わせた火力発電所の稼働数・率の上昇もあり、石炭の需要は伸びる一方。
石炭は採算効率とともに環境負荷対策が、生産・利用の際の要となる。日本の場合は国内での生産量が少ないことから、消費の際の対策に加え、海外からの安定的かつ安価な輸入ルートの確保・維持が欠かせない。
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