子を失った悲しみと癒し:南明奈さん第1子死産発表報道から
■タレントの南明奈(愛称アッキーナ)さん第1子死産を発表「授かった命は、空へと戻りました。私達家族は幸せでした」
悲しく残念なニュースです(スポニチ6/8)。つい先日、「夫婦で安産祈願へ行ってきました」とネットで報告があったばかりなのに。
多くの人たちに妊娠を報告し、みんなに祝福されてきたからこそ、なお一層、辛いニュースです。
■ネットユーザー、ヤフコメのみなさんと共に
しばしば荒れると言われるヤフーコメント欄。良くない評判も多々聞きます。けれども、とても貴重な情報が提供されたり、心温まる流れになることもあります。
今回、このニュースが報道されたコメント欄もそうです。ほとんどのユーザーが、その子の死を悼み、南さんご夫妻への癒しを願っていることが伝わります。
また、同様の苦しみを体験した方々からの投稿も目立ちます。有名人、芸能人も、辛い報告の報道は苦しいでしょうが、でも多くの人々の間に共感の輪が広がり、それは社会を良くすることにもつながります。
南さんは言います。
「授かった命は、空へと戻りました。私達家族は幸せでした」。
ニュースの読者が応えます(コメント欄)。
「我が家も頑張ろうと前向きになれました。今はツラいと思いますが、また前向きになれることを祈っています。」
「私も5ヶ月の時、死産しました。~いっぱい自分を責めました。~いまでも遺骨と母子手帳を見ると涙が出ます。~今はただ、自分のためだけに時間を使って心と身体を休ませてください。」
「アッキーナのせいじゃないからね。自分を責めてると思うけどそれは違うからね。」
悲しみの底に沈む人に対しては、その人が芸能人でも一般人でも、必要なことは、周囲からの圧倒的な支援です。
■死産、流産の心理:グリーフワーク:死別の悲しみの癒し方
死別の悲しみを癒していくことを、グリーフワーク(喪の作業)と言います。まだ生まれ出る前の子供とのお別れも死別であり、グリーフワークが必要です。
死別の中でも、我が子との死別が最も苦しく、心の癒しに時間がかかると言われています。中には、病的悲嘆に陥り、心身の健康を失う人も珍しくありません(死別の悲しみの癒し方:グリーフワーク(喪の作業)の心理学:Y!ニュース有料)。
さらに流産死産の場合は、一般の死別の癒しとは異なる難しさもあります。この特殊性を理解することも、癒しのためには必要なことです。
今回は、死産であり、お腹の赤ちゃんを実感できるようになってからのお別れですから、それは言葉に尽くせぬ辛さがあるでしょう。場合によっては、すでに亡くなっている赤ん坊を出産することもありますから、それはどんなに辛く悲しいことでしょう。
ただ、ではもっと前の流産なら苦しみは少ないのかと言えば、それは違います。流産もまた、とても苦しい死別体験をしている人がいることを忘れてはいけないと思います。
死別に関する男女差はありますが、流産死産の場合には、特に男女差が目立つことがあります。お父さんも、おなかの赤ちゃんが可愛くないわけはないのですが、それでもお母さんとは感覚が異なる部分はあります。
夫婦それぞれの感覚の違いから、夫婦がすれ違う苦しみを経験することもあります。
以前、あるテレビドラマで死産の問題が扱われていました。ドラマでは、分娩直後に子供が亡くなり、出生届と死亡届を同時に出すことになります。
お母さんは、二人で子供の名前を考えたいのですが、お父さんはそれができません。ドラマでは二人の心に癒しの小さな光がともり、二人で一生懸命に良い名前を考えるようになっていきますが、このように夫婦でもすれ違うのです。
夫婦以外の人間も、まだ生まれる前の子供との死別ですから、「また次がある」といった発言で、意図せずに両親を苦しめることがあります。
また、子供に何かがあれば親は(特に母親は)自分を責めがちですが、特に流産死産の場合は、母親は自分を責めます。ヤフコメ欄にも、いっぱい自分を責めたという人が投稿しています。
「仕事頑張りすぎたから? イライラしちゃってたから? あんまりお腹の子に話しかけてなかったから? 女の子がいいなぁなんて言ったから?(死産したのは男の子でした)」
人は、悲しいことが起きると「私が○○したから、こんなことが起きてしまった」と考えてしまうことがあります。心の癒しとは、その悲しく自責的なストーリーを作り変えていくことです。
死別の悲しみは、どうしようもない悲しみです。癒しのためには、長く深く悲しむことしかできません。ただ、孤独の中で悲しませてはいけません。一人ぼっちで泣かせてはいけません。
安心して、しっかりと、みんなで共に悲しむことが必要です。
流産死産は、気をつけないと、他の死別以上に周囲から理解されず、孤独の中で両親だけが、母親だけが苦しむことが起きてしまいます。
また、芸能人や有名人の場合には、マスコミ対応などのために、ゆっくりと悲しめないこともあります。
お子さんのご冥福をお祈りしております。南明奈さんと、夫の濱口優さんの心が癒されていくことを祈っています。そして、この報道を通して、流産死産で苦しむ全ての人への理解と支援が深まることを願っています。
「悲しんでいるものは幸いである。その人は慰められるからである」(マタイの福音書 5章4節)