雨雪判別は気温だけでなく湿度も考慮
低気圧が九州の南海上にあって東北東に進んでいます。関東甲信地方は、低気圧や前線の影響で、週末は雨や雪が降り、内陸部を中心に積雪となるおそれがありますが、雨か雪か、雪とすればどれくらい降るのか、非常にむつかしい判断の予報です。
春を告げる低気圧
冬から春にかけ、寒気の吹き出しが弱まると、東シナ海から本州の南岸に前線が現れやすくなります。この前線上に低気圧が発生し、南西諸島を通って四国と本州の南岸沿いを東北東から北東に進みますが、この低気圧は南岸低気圧と呼ばれています。また、春を告げる低気圧とも呼ばれます。
太平洋沿岸では雨や雪、強風などに警戒が必要となります。
雨か雪かの判断は、天気図から低気圧のコースを求めることによって、ある程度の判断ができます。
目安ですが、低気圧が八丈島より北を通過する場合は、関東地方に向かって入る暖気の影響で雨となります。また、八丈島の南を通過する場合は、降水をもたらす低気圧の雲の中心から離れることになりますので、寒気が入っていますが降水量(雪の量)としては少なく、大雪にはなりません。関東地方で大雪となるのは、低気圧が八丈島付近を通過するときです。
雨雪判別
南岸低気圧によって対策が十分とはいえない太平洋側に大雪が降れば、交通機関は大混乱におちいることもしばしばです。また、雪に慣れていない人は、雪道で滑ったときに大けがをすることがあります。
しかし、雨が降る場合は、夏場のように極端に多い雨ではありませんので、雪ほど被害が発生しません。
雪と雨では大違いですが、その雨雪判別を正確に行うことは非常に難しいものです。
気温が低いと雪、高いと雨という単純ものではありません。
地上気温が高いと上空から降ってきた雪が融けて雨に変わりますが、乾燥している場合は、地上気温が6℃位でも融けきれずに雪として降ることがあります。
乾燥している場合は、落下中に雪の一部が蒸発することで周囲の気温を下げることから、なかなか雨にかわりません。
つまり、気温だけでなく湿度も判断材料になり、図1のような判別図(雪、みぞれ、雨)が作られています。
しかし、これは一般的な話です。個々の事例では微妙に違います。そして、微妙に違うことで結果が大きく違うために予報が難しいのです。
成人の日の大雪
平成25年1月14日の成人の日(1月の第2月曜日)の関東地方は雪となり、横浜と東京で初雪を観測しました。山沿いだけでなく都心部まで成人式の時間帯でかなりの積雪となり、晴れ着の新成人が、成人式が終わって外に出ると鉄道や地下鉄がとまり、高速道路の閉鎖、一般道路もスリップして動かない車が道を塞ぐなど大混乱でした。新成人の多くは、高校の卒業式が東日本大震災で中止となっていますので、それに次ぐ自然の手荒い試練でした。
東京都千代田区では2時30分から雨が降り始めましたが、この時の気温は約8度で、まだ雪の心配はない気温でした。
しかし、関東の南岸を発達しながら東進した低気圧により北からの非常に冷たい空気が予想以上に入ってきました。
このため気温は急降下し、10時には3.6度まで下がって、10時20分からはみぞれ、10時35分からは雪となっています。
気温はその後も下がり続け、12時には0.8度となって、その後、8センチの雪が積もっています。
こうして、予想外の大雪になったのです。
雨雪判別図では、11時頃に雨の領域からみぞれの領域に入り、12時ころにみぞれと雪の境界付近、その後、気温は上がりましたが、湿度も下がって、引き続きみぞれと雪の境界付近でした。
日本海側でも必要な雨雪判別
雨雪判別が必要なのは太平洋側の大雪だけではありません。
日本海側の雪が多い地方も、積雪があるときに雨が降ると、雪崩が発生しやすくなり、融雪が進んで洪水(融雪洪水)が発生しやくなります。
天気予報で、気温予報が0℃~7℃のときは、ちょっとした寒気の入り具合で「雪の予想が雨」に、「雨の予想が雪」に変わることがありますので、雨雪判別があって予報精度が高くないことを念頭において、天気予報を聞く必要があります。
図1の出典:饒村曜(2013)、気象災害から学ぶ 雨月判別、近代消防、近代消防社。