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日本海と本州南岸を2つの低気圧か通過したあと、記録的に強い寒気が北極から南下

饒村曜気象予報士
北極の寒気が日本海へ南下を示す上空約5500mの気温予想(1月24日夜の予想)

冬型から二つ玉低気圧へ

 令和5年(2023年)は、年始から寒気が周期的に南下していましたが、1月13日(金)には北日本を通過した低気圧に向かって暖気が北上し、4月並みの気温という季節外れの暖かさになりました。

 このため、北海道の平野部では雪ではなく雨が降りました。

 最高気温が氷点下という真冬日を観測した地点数は0となり、最低気温が氷点下という冬日を観測した地点数も急減しています(図1)。

図1 夏日と冬日、真冬日の観測地点数の推移(令和4年11月1日~令和5年1月22日)
図1 夏日と冬日、真冬日の観測地点数の推移(令和4年11月1日~令和5年1月22日)

 それどころか、鹿児島県名瀬市で26.4度を観測するなど、最高気温が25度以上という夏日を観測したのが21地点(全国で気温を観測している914地点の約2パーセント)ありました。

 しかし、この季節外れの暖かさは長続きせず、すぐに西高東低の気圧配置となって寒気が南下しました。

 1月14日(土)と15日(日)には、大学教育で必要とされる「思考力・判断力・表現力」等を多面的・総合的に評価する試験、つまり、大学入学共通テストが実施されましたが、共通テスト初日の14日は、全国的に気温が平年より高くなり、2日目の15日は逆に低くなるという大きな気温変化のテスト日でした。

 共通テスト以降、西高東低の冬型の気圧配置がゆるんでいましたが、1月20日(金)~22(日)は強い寒気が南下し、西高東低の気圧配置が強まって北日本を中心に大荒れとなりました。

 今冬、冬日を観測した地点数が一番多かったのは、先月、12月19日の728地点(約80パーセント)だったのですが、1月22日には、これを更新する743地点(81パーセント)で観測しました。

 ただ、1月22日の真冬日は239地点(約26パーセント)と、12月19日の297地点(32パーセント)などに及びませんでした。

 それだけ、先月のクリスマスの少し前の寒波が強かったのです。

 今冬の冬型の気圧配置の特徴として、強さの割には長続きしないということがあげられます。

 1月20日から南下してきた強い寒気による西高東低の冬型の気圧配置も、22日(日)には緩み、黄海や東シナ海では雲がまとまりはじめ、西日本では雲が広がって雨や雪となっています。

 黄海と東シナ海で発生した低気圧は、ともに東進する見込みで、いわゆる「二つ玉低気圧」で、ほぼ全国的に雲が広がって雨や雪となるでしょう(図2)。

図2 予想天気図(1月23日9時の予想)
図2 予想天気図(1月23日9時の予想)

 概ね晴れていた東~北日本の太平洋側でも23日(月)は雲が多くなり、所により雨か雪の見込みです。

北極からの寒気が南下

 「二つ玉低気圧」は、日本の東から千島の東海上で一つにまとまって発達する見込みです(図3)。

図3 専門家向け予想天気図(左は1月24日21時の予想、右は25日21時の予想で、ともに網掛けは降水域)
図3 専門家向け予想天気図(左は1月24日21時の予想、右は25日21時の予想で、ともに網掛けは降水域)

 このため、1月24日(火)から26日(木)は、今冬一番の強い寒気が南下する予想です。

 太陽が全く当たらない冬の北極付近は、非常に冷たい空気の塊が形成され、時折、その冷たい空気の塊が中緯度へ南下してきます。

 先月のクリスマスの頃は、アメリカ東部に南下していましたが、現在南下しているのは極東です(タイトル画像参照)。

 つまり、1月24日(火)からの寒気は、強くて長続きする見込みで、日本海側を中心に大雪となり、普段雪の少ない太平洋側でも大雪となるおそれがあります。

 上空約5500メートルの気温が氷点下36度以下であれば大雪の目安、氷点下30度であればまとまった雪の目安と言われています。

 1月24日夜の予想では、大雪の目安となる氷点下36度以下の範囲は、山陰地方から関東北部まで南下しています(図4)。

図4 上空約5500メートルの気温分布予想(1月24日夜の予想)
図4 上空約5500メートルの気温分布予想(1月24日夜の予想)

 それどころか、氷点下42度以下という北極並みの寒気が北陸から北日本の日本海側まで南下しています。

 さらに、氷点下30度以下という範囲も、関門海峡から関東南部まで南下しています。

 つまり、日本海側を中心に大雪となり、普段雪の少ない太平洋側でも大雪となるおそれがあります。

 予想降雪量は、山陰から北陸、東北の日本海側で1月23日6時から26日6時までの72時間に100センチを超えると考えられており、その後も降り続く可能性があります(図5)。

図5 72時間予想降雪量(1月23日6時から26日6時までの72時間)
図5 72時間予想降雪量(1月23日6時から26日6時までの72時間)

上空約1500メートルの気温

 今週南下してくる寒気の特徴として、10年に1度くらいの寒気と言われていますが、特に上空約1500メートルの気温が記録的に低いものです。

 例えば、1月24日(火)の福岡上空約1500メートルの気温は、氷点下17度以下の予想ですが、これは、昭和32年(1957年)の観測開始以来の記録である氷点下17.2度を更新するかどうかというものです(図6)。

図6 上空約1500メートルの気温予想(1月24日昼の予想)
図6 上空約1500メートルの気温予想(1月24日昼の予想)

 また、1月25日朝のつくば(館野)上空の気温は、氷点下15度以下の予想ですが、これは、昭和32年(1957年)の観測開始以来の記録である氷点下14.0度を更新するものです(図7)。

図7 上空約1500メートルの気温予想(1月25日朝の予想)
図7 上空約1500メートルの気温予想(1月25日朝の予想)

 ただ、国内にある20か所の高層観測所のうち、4か所で高層観測を休止していますので、記録更新のニュースが相次ぐことはないかもしれません。

 この理由というのは、今年1月13日の朝、石川県輪島市にある無人の高層観測所で、ゴム気球に水素ガスを詰めている際に出火するという事故が発生したことから、同じ装置で観測している和歌山県潮岬と島根県松江の高層観測所でも原因が解明するまで観測をやめているからです。

 加えて、昨年2月26日に装置の火災以降観測を休止している釧路も、時折、手動で観測を行っていますが、現時点では再開に至っていません。

 過去に例をみない事例が発生中という貴重な時期の観測ですので、一刻も早い原因究明と観測再開が望まれます。

【補足(1月23日11時)】

 気象庁は、1月23日午前に、輪島の高層観測を1月23日から2月28日まで、職員を派遣して再開すると発表しました。他の3地点は欠測が続いています。

 上空約1500メートルの気温は、地上付近の気温を推定することに使われますので、ここの気温が極端に低いということは、地上付近の気温が記録的な冷え込みになることを意味しています。

福岡と東京の気温変化

 福岡の気温の推移をみると、昨年の12月以降、周期的に最高気温、最低気温ともに大きく下がっています。

 今冬、これまで一番寒かったのは、クリスマス前の12月21日で、最高気温が3.3度、最低気温が0.1度でしたが、令和5年(2023年)になってからは、気温が高い日が増えています。

 1月13日の最高気温は19.4度まで上昇しています。

 そして、1月25日の予報は、最高気温2度、最低気温氷点下3度と、今冬一番の寒さの予報です(図8)。

図8 福岡の最高気温と最低気温の推移(1月23日~29日は気象庁、1月30日以降はウェザーマップの予報)
図8 福岡の最高気温と最低気温の推移(1月23日~29日は気象庁、1月30日以降はウェザーマップの予報)

 10日ほどで20度近い気温低下ですので、ものすごく厳しい寒さに感じると思います。

 最高気温が平年の最低気温より低くなるという寒さのあとも、最低気温は0度前後という日が一週間続く予報です。

 いままで水道管が凍結しなかった市街地でも、寒い日が続くことで凍ることがある冷え込みですので、凍結対策を心がける必要があります。

 東京の気温変化の推移をみると、昨年の12月以降、周期的に最高気温、最低気温ともに下がっています。福岡ほど振れ幅は大きくありません(図9)。

図9 東京の最高気温と最低気温の推移(1月23日~29日は気象庁、1月30日以降はウェザーマップの予報)
図9 東京の最高気温と最低気温の推移(1月23日~29日は気象庁、1月30日以降はウェザーマップの予報)

 また、今冬、東京で最高気温が一番低かったのは1月16日の7.7度で、クリスマス前の寒気南下時よりも寒くなっています。

 しかし、1月25日の最高気温の予想は5度、最低気温の予想は氷点下3度と、今冬一番の寒さとなっています。

 各地での状況は多少違いますが、今週の寒さは今冬一番の寒さです。

 最新の気象情報の入手に努め、大雪や厳しい寒さに警戒してください。

タイトル画像、図3、図4の出典:ウェザーマップ提供資料に筆者加筆。

図1の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図2の出典:気象庁ホームページ。

図5の出典:ウェザーマップ提供。

図6、図7、図8、図9の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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