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ワクチン接種の効果を高め、副反応も痛みも減らす方法:注射の正しい受け方の心理学

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
イラストはイメージ:みんなでスムーズに接種を受けよう。(提供:kagehito.mujirushi/イメージマート)

■新型コロナのワクチン接種

遅れていた日本のワクチン接種も次第に動き始め、接種率も急上昇です。少なくとも1回は接種を受けた人の数は、2000万人に近づき、高齢者の三人に一人は接種を終え、いよいよ一般の人へのワクチン接種も始まります。

さて、どうせ注射されるなら、なるべく痛くなく受けたいものです。そしてもちろん、免疫の効果を上げ、副反応(副作用)は小さくしたいものです。私たちが、新しいワクチンを開発したり、医師のテクニックを高めたりはできませんが、私たちにもできることはあります。

痛みも、薬の効果も、かなり心理的な事柄だからです。一人ひとりの心の持ち方で、痛みも効果も左右されます。それは、精神論や気休めではなく、科学的な事実なのです。

■注射を痛くなく受けるコツ

大人も子供も、注射が苦手な人はたくさんいます。今は毎日のように放送されているワクチン注射の様子。その映像を見るだけで怖くなる人もいるでしょう。

でも、注射を痛くなく受ける最大のコツは、

「注射さん、歓迎だよ。注射さん、来てぇ(微笑)」

と心の中で思うことです。

痛みの感覚は、物理的な刺激と、主観的な心の思いの合成だからです。痛みは、実はかなり主観的なのです。

注射を受ける人は、リラックして注射が受けられるように、工夫をしましょう。

■注射の痛みを強く感じるとき

不安、緊張、恐怖。このような思いが、痛みを強くします。緊張し、筋肉がこわばることも、不利に働くでしょう。怖がれば、針先に意識が集中します。すると、痛みを強く感じるのです。

たとえば、蚊が人を刺すときには、とても細い針を刺しますし、麻酔成分のような液も同時に出すので、ほとんど気づかないうちに刺されてしまいます。

ところが、蚊が腕にとまるところをじっと見つめていれば、今「チク!」と刺したと感じられます。反対に何かに夢中になっているときには、蚊に刺されているのに全くわからず、気づいたら何箇所も刺されていたということもあるでしょう。

痛みは、意識を向けるほど、強く感じられるのです。

■注射の痛みを減らす方法

「笑顔を作ると注射の痛みが軽くなる」という研究もあります(笑顔を作ると注射の痛みが軽くなる?―研究:(Medical Note:Yニュース5/31)。

この研究によれば、笑顔は注射の痛みを40パーセント下げました(しかめっ面も同様の効果があったようですが、周囲への影響を考えれば、笑顔がおすすめですね)。

小さな子供の場合などは、周囲の態度で痛みも大違いです。

今回のワクチン注射は、針も細いので、実際にそれほど痛くないそうですね。

■ワクチン接種の効果を高め、副反応を減らす方法

医学的な方法ではなく、心理学的な方法です。過去30年にわたる研究によれば、ストレスや孤独感や抑うつが、ワクチン注射の効果を低下させます。この効果は、特に高齢者などの弱者に強く現れます。

また、このような心理的要因は、ワクチン接種の副反応(副作用)の発生率や重症度にも関係しています。

これらの効果は、ワクチン注射一般に当てはまりますので、今回の新型コロナのワクチン注射にも同様の現象が起きるでしょう。

一般に、これは効くと信じると効果が生まれます。偽薬効果(プラシーボ効果)と呼ばれますが、何の効果もない偽薬でも、良く効く薬だと信じると、実際に効果が出ます。新薬の開発時には、この偽薬効果を超える効果を出すことが難しいことが良くあるほどです。

偽薬だけでなく、実際の薬でも、良く効く薬だと思った方が効きます。また逆に、本当はアレルギー物質など入っていないのに、入っていると思い込むと症状が現れることもあります。

ワクチンの副反応には注意しなくてはいけません。けれども、それは副反応を恐れ、強いストレスを感じつつ、怯えながら接種を受けることではないでしょう。

孤独を感じている人には、あなたの優しい一言が、効果を上げるかもしれません。

今回の新型コロナのワクチン注射では、心理的なマイナス効果が多く出ているという指摘もあります。だからこそ、私たちの心の持ち方が大切です。

どうせワクチン接種を受けるなら、明るく前向きな気持ちで受けられると良いですね。以前通りの正常な生活が戻るのも、もうきっとすぐそばです。

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*別の心理学の話ですが、人はゴールが近いと思った方が頑張れるものです。

*ワクチン接種に与える心理的効果:Psychological and Behavioral Predictors of Vaccine Efficacy: Considerations for COVID-19

*関連ページ:ワクチン接種予約コールセンターの疲弊と苦悩(碓井真史)

*このページは、「注射は痛い?:上手に痛くなく注射される方法」(碓井真史2019)を大幅に加筆修正したものです。

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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