Yahoo!ニュース

今永昇太や松井裕樹の活躍で次に狙われる日本人サウスポーは

横尾弘一野球ジャーナリスト
今永昇太(シカゴ・カブス)の活躍は、日本人左腕への注目度を高めている。(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 日本時間4月21日の未明に、MLBネットワークのジョン・モロシ記者がXに以下のコメントをポストした。

『MLBのスカウトは、2024年のNPBシーズン後にポスティングされる可能性を期待して、左腕の小笠原慎之介を評価している。26歳の小笠原は中日ドラゴンズで好調なスタートを切り、20回2/3で防御率2.61を記録している(4月21日現在)。彼は、その素晴らしい統制力で知られている』

 この小笠原に対する評価は、今季からプレーする今永昇太(シカゴ・カブス)や松井裕樹(サンディエゴ・パドレス)の開幕からの活躍がもたらしたものだろう。

 NPB出身メジャー・リーガーの評価が定着した頃、日米の野球を熟知し、カブスで極東担当スカウトも務めた経験のあるレオン・リーに、NPB出身者がMLBで成功するための条件を尋ねた。レオンの意見はこうだ。

「もちろん第一は、パフォーマンス力だ。日本の投手はクレバーで安定感も高いので、活躍できる可能性は高い。それに加え、選手本人の異文化への順応性、どの球団と契約するかといった要素もあるが、体格の大きさも重要な判断材料だ」

 そんなレオンの言葉を裏づけるように、MLBで高い実績を残しているNPB出身者は体格にも恵まれている。通算123勝のパイオニア・野茂英雄が188cm、昨季までに通算103勝のダルビッシュ有(パドレス)は196cm、通算79勝の黒田博樹は185cm、78勝の田中将大(東北楽天)が188cmだ。また、通算95セーブの上原浩治が186cm、84セーブの斎藤 隆が188cm。左腕・菊池雄星(トロント・ブルージェイズ)の183cmが小さく思えてしまうし、成長途上ながら192cmの佐々木朗希(千葉ロッテ)が注目されているのもよくわかる。

 振り返れば、野球における日米の実力差は体格の違い、そこから生まれるパワーやスピードの差によるものが大きいと言われていたが、日本人選手のサイズも時代とともに大きくなり、その点ではMLBでも十分に勝負できると評されている。そんな中、今季からMLBに活躍の場を移した今永は178cm、松井は174cm、山本由伸(ロサンゼルス・ドジャース)も178cmと揃って180cmに届かない。彼らが契約する時点では、体格の面を懸念する声も聞かれ、山本については日本に比べて苦労している印象もあるものの、今永や松井は持ち味を存分に発揮している。

 そのポイントは、左腕であることと制球力の高さだという。レオンをはじめ、MLBスカウトは日本人投手の特長に制球力を挙げる。さらに、今永や松井については「最速150キロ超のストレートを軸に変化球も上手く操り、投球全体に安定感がある左腕はそういない」ということだ。

 そして、今永も松井も見立て通りの投球を見せていることで、次に白羽の矢が立ったのが小笠原なのだ。小笠原は、昨年まで8年間で41勝54敗の防御率3.71。決して飛び抜けた数字ではないが、昨春に渡米して自主トレを行ない、メジャー志向であることも公言。先発投手として試合を作れる能力とともに、最近の成熟度を、「今が旬だ」と判断されているようだ。

宮城大弥(オリックス=写真)や隅田知一郎(埼玉西武)も注目されているという。
宮城大弥(オリックス=写真)や隅田知一郎(埼玉西武)も注目されているという。写真:CTK Photo/アフロ

 また、日本在住のMLBスカウトに聞けば、24歳の隅田知一郎(埼玉西武)や22歳の宮城大弥(オリックス)に対する関心も高いのだという。そうした情報を踏まえつつ、日本人サウスポーの活躍ぶりに注目してみたい。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

横尾弘一の最近の記事