Yahoo!ニュース

世界が注目する!MetaのAIモデル『Llama2』がMicrosoftと連携拡大

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
出典:https://www.instagram.com/zuck/

KNNポール神田です。

■米Metaは(2023年)7月18日(現地時間)、大規模言語モデル「Llama 2」を発表した。利用は無料で商用利用も可能としている。最大サイズの700億パラメーターモデルは「ChatGPT(の3月1日版)と互角」(同社)という。

■性能は、Llama-2-70b-chat(700億のチャット向けモデル)と米OpenAIの「ChatGPT-0301」(おそらくgpt-3.5-turbo-0301のこと)や米Googleの「PaLM-Bison」(PaLM 2の2番目に大きいモデル)を人間による評価で比べたところ、ChatGPT-0301とは互角、PaLM-Bisonに対しては大幅に上回る結果になったとしている。

■提供に当たっては、直接ダウンロードの他に米MicrosoftのAzure上でも利用可能になっている。MetaはMicrosoftを優先パートナーと位置付けている。今後、AWSやHugging Facesなど他のプロバイダーからも入手可能になるという。

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2307/19/news082.html

■『Llama2』の『パラメータ』は最大700億(70Billion)パラメータ

出典:ai.meta.com/
出典:ai.meta.com/

しかし、単純にパラメータ数だけで比較すると、Meta社のLlamaの70億パラメータは、ChatGPT3の1,750億パラメータのわずか、40%にしか満たないのだ…。

出典:Microsoft
出典:Microsoft

https://techcommunity.microsoft.com/t5/educator-developer-blog/chatgpt-what-why-and-how/ba-p/3799381

ChatGPT3.5では3,550億パラメータとChatGPT3.0の約2倍となり、Llama2はChatGPT3.5と比較すると、19.71%となる。

さらに、ChatGPT4では、1兆7,600億パラメータとさえ言われているのでその差は歴然の差(3.9%)となることだろう。パラメータ数だけで単純に比較はできないが、一つ前のGPT-3程度と考え、決してGPT4レベルの期待は、抱かないほうが良いだろう。

■オープンソースであること、無料であること、Meta社の技術であることの意味

しかしだ、MicrosoftとMetaがこの提携によって、もたらす成果としては、オープンソースとして公開され、有料でAzureでホスティング利用されるということにある。

 OpenAIの最大の出資者であるMicrosoftであるが、Azureのビジネスとしては、各種の大規模言語モデルにすべて対応できることのほうがメリットがある。

そして、学術研究系でもビジネス系でも無料で使えるということは、クラウドでクローズドに利用したい人にとってはとても魅力的だ。最新の高度なAIを駆使するまでもなく、業務で発生する単純なルーティーンワークを処理させるには適切なAIの利用ケースであろう。

同時にMeta社にとっても、メタバース企業と舵をきったものの、その概念そのものが抽象的過ぎたが、直近の『Threads』の1億ユーザー登録なども含めて、株価は2年前の株価に戻りつつある。時価総額は 6,903億ドル(95.9兆円@139円)だ。

出典:ヤフーファイナンス
出典:ヤフーファイナンス

https://finance.yahoo.co.jp/quote/META?term=2y

Meta社のビジネスモデルは各種SNSの事業ブランドによる広告モデルだ。オープンソースとして公開した『Llama2』から直接の広告収入は難しいかもしれないが、利用企業などが、SNSに変わるような新規のプラットフォーム事業を提供した場合、サポートとともに広告モデルをアドオンにするようなことも当然プランとして想定されていることだろう。それが、Meta社だからこそ、個別のSNSを独立させながらも、SNSで培った人々の日常をAIのサポートビジネスとして利用活用することができる。何よりも、個別の巨大なSNSのデータを、大規模言語として学習させているはずなので、SNSのAI化という意味ではパラメータ数に依存しない、人々の『承認欲求』の具現化をAIパワーで分析することが可能なのだ。

単純に、SNSで言及したり、反応した『ワード』に対して『広告主』を紐付けするのではなく、購買に結びつくところまでアドバイスし続けるAI機能をかねそろえたSNSへの対応が可能だ。Amazonにも、Googleも持ち合わせていない、『Llama2』は、『SNS』という巨大な人間の煩悩の大規模言語モデルであるかもしれないからだ。

■ChatGPTのOpenAIに出資のMicrosoftが、MetaのLlama2もサポートする理由は?

この発表に一番驚いたのが、MicrosoftのAzure上でも利用可能という点である。そう、MicrosoftはChatGPTのOpenAI社の最大のスポンサーでもあるからだ。

 なぜ?Meta社の大規模言語モデルの『Llama2』をクラウドサービスの『Azure』でサポートするのか?

マイクロソフトのオフィシャルブログでこのような声明があった。

『MetaとMicrosoftは、AIとその利点を民主化するというコミットメントを共有しており、MetaがLlama 2でオープンなアプローチを取ることに興奮しています。我々は、オープンモデルやフロンティアモデルをサポートすることで、開発者に構築するモデルの種類の選択肢を提供しており、MetaがLlama 2の新バージョンを初めて商用顧客にリリースする際に、Metaの優先パートナーになれることを嬉しく思っています。Meta and Microsoft share a commitment to democratizing AI and its benefits and we are excited that Meta is taking an open approach with Llama 2. We offer developers choice in the types of models they build on, supporting open and frontier models and are thrilled to be Meta’s preferred partner as they release their new version of Llama 2 to commercial customers for the first time.』

https://blogs.microsoft.com/blog/2023/07/18/microsoft-and-meta-expand-their-ai-partnership-with-llama-2-on-azure-and-windows/

Microsoftにとって、クラウドの『Azure』でのサービス利用やWindowsでのローカルでの利用で、ユーザーが、ChatGPTなどを含めた多数のAIの大規模言語モデルの選択肢を増やせることに価値を見出しているからだ。

 何よりも、Meta社が、Facebookをローンチしてからの最初の広告パートナーは、なんといってもMicrosoftだったというFacebookとの関係性でもある。

■メタのLlama2 ダウンロードの案内サイト

大規模言語モデル『Llama2』のパラメータは、70億、130億、700億と3種類用意されている。

出典:ai.meta.com
出典:ai.meta.com

https://ai.meta.com/llama/

そして登録すると送られてくるリンク先は、なんと、『GitHub』であった。

そう、『GitHub』は2018年にMicrosoftが75億ドルで買収している。

■『GitHub』に『Llama2』のリポジトリ(保管場所)が公開されている。

出典:GitHub.com
出典:GitHub.com

https://github.com/facebookresearch/llama

ChatGPTの登場によって、AIの民主化が一気に進化し、さらにエンジニア、そして企業ユーザーが自由に大規模言語モデルを駆使できるようになった2023年。

GAFAM企業群の第二次世界AI大戦では、新たな同盟が組まれようとしている。Amazonは、Appleは、そしてGoogleはどう対応していくのだろうか?

Meta社によれば、Amazonの Amazon Web Service(アマゾン・ウェブ・サービス、AWS)やHugging Face(ハギングフェイス)などのプラットフォームでも『Llama2』は、利用できるという。

少なくとも、『スマートスピーカー』あたりは、口語体でのチャットで、いろんなことができそうだ。AmazonもGooogleもAppleも『AIスピーカー』ならば、いつ発表してもおかしくない状況だ。

当然、MicrosoftがAIへの入出力デバイスとして、『AIスピーカー』を登場させたほうが早そうでもある。スマートフォンでの『Bing』はすでに音声対応である。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

神田敏晶の最近の記事