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ようやくDCヒーロー映画がマーベルに拮抗! その未来を決める『ジャスティス・リーグ』の出来ばえは?

斉藤博昭映画ジャーナリスト
『ジャスティス・リーグ』LAプレミアより。バットマン役のベン・アフレック(写真:ロイター/アフロ)

DCコミックのヒーローたちが集結する、DCエクステンデッド・ユニバース(DC Extended Universe、日本ではDCフィルムズ・ユニバースとも呼ばれる)。今後の運命を左右する『ジャスティス・リーグ』が、ついに全貌を明らかにした。

『アベンジャーズ』などで無敵のブームを誇っているマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)に対し、これまでDCのユニバースは興行収入こそ成功していたものの、作品の評価については賛否も多く、映画ファンには不満もあったのも事実だ。

ロッテントマトの満足度評価でも、これまでのDC作品は……

(数字は前者が評論家、後者が一般観客)

『マン・オブ・スティール』(2013)  55%/75

『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』(2016)  27%/63

『スーサイド・スクワッド』(2016)  26%/61

『ワンダーウーマン』(2017)  92%/89

と、『ワンダーウーマン』が高評価になるも、前2作の「集団もの」の数字は芳しくなかった。

ちなみにマーベル側の主な作品のポイントは

『マイティ・ソー バトルロイヤル』  93%/90

『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』  90%/89

『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』  75%/83

『アベンジャーズ』  92%/91

など全体的にハイレベル。他の作品もほとんどが70%以上で、20%台などありえない数字である。

DCヒーロー映画は、あの『ダークナイト』3部作の成功によって、ダーク&シリアス系のイメージが強くなっていた。その持ち味を引きずり過ぎて『バットマンvsスーパーマン〜』ではヒーロー映画の痛快さに欠け、極ワル集団の『スーサイド・スクワッド』もマジメに感動させる展開に違和感があったりして、突き抜けきれないもどかしさがあった。『ワンダーウーマン』でようやく光明が見えたわけだが、MCUの『アベンジャーズ』に相当する、ヒーロー集結映画『ジャスティス・リーグ』が映画ファンの期待を裏切ったら、元も子もない。

期待を一身に受けた『ジャスティス・リーグ』。その結果はとりあえず「」と出たようだ。

※以下、大きなネタバレはありません。

(C)2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
(C)2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

『バットマンvsスーパーマン〜』でスーパーマンがこの世を去った後の世界が舞台となる『ジャスティス・リーグ』。恐るべき敵、ステッペンウルフの出現により、一人では対抗できないと悟ったバットマンが、超人たちをスカウトしてチームを結成する物語が展開する。

ヒーローたちが集結する設定は『アベンジャーズ』と同じだが、映像のテイストは大きく異なるので、まったく別の世界観を打ち出していたのは予想どおり。音楽もダニー・エルフマンで(1989年にエルフマンが手がけた『バットマン』のフレーズも出てくる!)、幻想的なムードも漂っていたりする。

では、またもやダーク&シリアス方向なのか……と心配すると、軽さやユーモアが加味され、その挿入の度合いが絶妙なのである。超人たちのリーダーながら、自分は超人能力を持っておらず、財力で解決するバットマンの言動にも、今回はユーモアを感じさせる「余裕」があり、観ていて息苦しくない。

ユーモアの匙加減、連係プレーの快感

そして今作の主役と言っていいのが、そのユーモアを一身に背負うフラッシュだ。おしゃべりでオタク、若さゆえに仲間にいじられる役割が、完璧なスパイスになっている。極端に言えば、マーベルにおける「デッドプール」的な存在。演じるエズラ・ミラーの軽妙さが、これまた愛おしいほどハマってる! その他にも水陸両棲のアクアマンの筋肉野獣ぶりや、元体育会系でマシンで甦ったサイボーグの意外な機能フル活動、そしてじつは陰のリーダーでもあるワンダーウーマンの理性と正義心(このあたりはキャプテン・アメリカに近い立ち位置)など、キャラ立ちがパーフェクト。

アクションとしての最大の見どころはチームプレーで、MCUなら『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』のラストや、『シビル・ウォー〜』の飛行場シーンのように各自のパワーが駆使されるわけだが、たとえばフラッシュの高速とワンダーウーマンの剣、サイボーグのマシン操縦が助けるアクアマンの空中戦など、各自の能力の瞬間的な連係が強調されているところが、ヒーロー映画としてうれしい。「萌える」ではなく本気で「燃える」瞬間が何度か訪れるのだ。

監督はザック・スナイダーだが、プライベートでのショックな事件(娘の自殺)により、最後の仕上げは『アベンジャーズ』のジョス・ウェドンが引き継いだ。そのニュースは不安を煽ったものの、完成作を観る限り、しっかりと世界は構築されている。何ヶ所か、見せ場となるシーンで、もう少しドラマチックな演出があっても良かったとも思ったが、それは贅沢な注文か。

今週から各国で公開が始まる『ジャスティス・リーグ』は、おそらく観客には好意的に迎えられることだろう。DCエクステンデッド・ユニバースの未来は明るく切り開かれるか。

注)この記事は11/14に一度、公開しましたが、諸事情により11/15に再度公開としました。ご了承ください。

『ジャスティス・リーグ』

11月23日(木・祝)全国ロードショー

配給/ワーナー・ブラザース映画

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、スクリーン、キネマ旬報、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。連絡先 irishgreenday@gmail.com

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