なぜ、森保ジャパンは4失点を喫したのか? 画期的なマネージメントは不発だった
国際親善試合のベネズエラ戦、日本代表は1-4で敗れた。FWサロモン・ロンドンにハットトリックを許し、前半のうちに4失点。後半は内容を立て直したが、すでに大量リードされた相手の掌の上。完敗だった。
とはいえ、結果そのものにヒステリックになる必要はない。来年3月からワールドカップ南米予選が始まるベネズエラにとって、日本戦はチームの総仕上げだ。6月のコパ・アメリカ以降、新戦力の組み入れが順調に進み、直近の試合ではコロンビアに0-0で引き分け、ボリビアに4-1で勝利、トリニダード・トバゴに2-0で勝利など、結果、内容共に充実していた。間違いなく、ベネズエラは強い。
一方、そんな強敵に対し、森保ジャパンはベストメンバーではなく、テストメンバーで臨んだ。キルギス戦後に南野拓実や吉田麻也など欧州組の主力をクラブへ返し、スタメンは中島翔哉、柴崎岳といった一部の主力と、控え選手を交えながら構成した。苦戦は想定済みだろう。ある程度の連係ミスを犯すのも仕方がない。
だが、ある程度ではなかった。
4失点はすべて連係ミス
前半8分に先制を許した場面は、室屋成と橋本拳人の守備連係が合っていない。ジェフェルソン・ソテルドがボールを持ったとき、室屋成は横向きになり、極端なワンサイドカットで縦に誘う1対1の体勢だった。加えて、中のドリブルコースには橋本が立っており、2人で同じ方向を切っている。
そして、誘っているはずの縦方向へドリブルで仕掛けられると、室屋は一歩対応が遅れた。クロスが蹴られ、中央では佐々木翔に競り勝ったサロモン・ロンドンがあっさりとヘディングシュートを決めてしまった。
首をかしげる対応だった。室屋と橋本、2人そろって相手を縦に行かせ、そのまま相手が得意とするクロスとヘディングで失点している。室屋としては縦に誘って、ボールを奪う自信があったのかもしれないが、これでは2人いる意味がない。
室屋が縦を空けて対応するのなら、橋本は縦のカバーに走ったほうがいいし、あるいは逆に、室屋が縦を抑えてソテルドを中へ進ませ、橋本に対応させることもできる。しかし、そのような守備連係がないため、単純な1対1になってしまった。
さらに室屋が相手を縦に誘うのなら、佐々木もクロスが入ってくることを覚悟し、準備しなければならない。だが、その様子はなかった。ロンドンへの間合いを空けてしまい、遅れて寄せている。佐々木は競り負けたというより、競ることができなかった。
続く2失点目、前半30分の場面は、佐々木がマチスに1対1で抜かれて中へ釣り出され、陣形が崩れたとき、その佐々木のスペースを橋本がカバーするのか、中島がカバーするのか、非常に曖昧だった。橋本は中の選手を捕まえに行き、一方の中島は大外の選手だけを見てしまい、2人のすき間をマチスに突かれた。これはU-22コロンビアと戦ったU-22日本代表も同様だったが、相手に陣形を動かされたとき、そのずれたポジションをどうカバーするのか。まったく明確ではないし、コミュニケーションも少ない。
その後の3失点目は、すでにパニック状態だった。前半33分、サイドの対応で原口元気と室屋がマークの受け渡しをできず、状況は2対2だったが、フリーでクロスを蹴られた。一方、中央は空中戦をどうにか避けようとしたのか、希望的オフサイドトラップで相手をフリーにしている。前半38分にカウンターを食らった4失点目は、植田直通のポジションがあまりにも深く、佐々木は1対2の数的不利にさらされ、置き去りになった。
連係ミスというより、連係が存在しない。組織やグループで守る意識がない。
この日が初招集やデビュー戦の選手であれば仕方がないが、決してそうではなかった。主力が抜けたとはいえ、スタメンの選手はそれなりに森保ジャパンで招集された期間が長く、試合で起用された経験もある。もちろん、選手によっては招集ブランクもあるので、ある程度の連係ミスはやむを得ないが、それにしても想像を越えていた。
2試合と1試合の違い
彼らが無残にも思える。なぜなら、このベネズエラ戦だけで彼らの11月が終わってしまったからだ。
代表活動は2試合続けて行うことに大きな意味がある。過去の日本代表を思い返しても、1試合目で下手な内容を披露してしまった後、2試合目で内容が大きく改善されたケースは多かった。たった2試合とはいえ、マッチ・トレーニング・マッチのサイクルを回すことは大事だ。
ところが、今回のベネズエラ戦のメンバーは1試合で終わってしまった。山ほど出てきた課題を、改善する機会がない。次の代表ウィークは4カ月後の2020年3月だ。この悔しさや熱、記憶は冷めてしまう。国内組の選手には12月のE-1選手権もあるが、メンバーが異なるため、ベネズエラ戦の課題を直接共有することはできない。
キルギス戦、U-22コロンビア戦、ベネズエラ戦。11月は試合に応じて3チームを動かす画期的なマネージメントを行い、うまく選手をやり繰りした。しかし、その一方で、各チームが1試合ずつしか公式戦を行えず、マッチ・トレーニング・マッチのサイクルを回せなかったデメリットが小さくない。
準備段階の落とし込み、試合からの改善。それらの不足は1チームだけではなく、3チーム共に感じられた。結果として、すべてが中途半端になったのではないか。
この11月は、森保監督や技術委員会が兼任のメリットを生かそうとして、デメリットに足をすくわれた。その一面はある。