令和・渋沢栄一新紙幣スタート「旧紙幣使えなくなる詐欺」に気をつけて!
本日2024年7月3日から紙幣が切り替わります。福沢諭吉から渋沢栄一になるというほうが伝わりやすいでしょうか。最近ウェブ上の記事を読んでいると、新紙幣への切り替えに際して、旧紙幣が使えなくなるという話題が出てくることがあります。旧紙幣を使えなくするニュースには2種類ありますので、解説いたします。
■詐欺の火元としての旧紙幣利用不可説
まず、はじめに旧紙幣が使えなくなるという話は、噂であって事実でないという点をお伝えします。
そのうえで、紙幣の切替を詐欺に利用するとしたら、どんなことが考えられるでしょう。多くの人の頭に思い浮かぶ方法としては、「旧紙幣が使えなくなるから交換できる」というものではないでしょうか。
例えば、行政を装った者が高齢者を訪問します。新紙幣を見せながら、「旧紙幣の今後の利用に関する注意喚起」と称して、チラシや説明文書を配布もしくは説明します。その際に「タンス預金」が狙われていると囁いて、交換して差し上げると提案します。
足の悪い高齢者や、認知機能の衰えた高齢者は、新紙幣を目の当たりにして、旧紙幣からの交換の必要性を感じます。特に、ATMで大金の出金ができなくなっている昨今、足の悪い高齢者は金融機関にいくのも一苦労です。
もし、旧紙幣の恒久的な利用に関して心配があれば、新紙幣との交換に心が傾いてしまうかもしれません。タンス預金を持ってきたら、預かってそのまま逃走することもあるでしょう。タンス預金をたくさん保有しているのであれば、資産家あるいはかくれた資産家である可能性が高いため、後日強盗などの被害に合わないとも限りません。
行政が使えますというアピールをするのも、逆に怪しい感じがしてしまいます。すでに、旧紙幣を使えなくする案が、信頼性の高い媒体にも掲載されているため、「旧紙幣が使えなくなることは噂に過ぎない」と説明するのも難しそうです。
タンス預金をしている人が悪いと評してしまえばそれまでですが、かといって犯罪である詐欺を未然に防がなくていいという理由にはなりません。
ここは、ゆうちょ銀行や金融機関が訪問して現金と通帳をお預かりて、後日貴重済みに通帳をお返しするような面倒で、金融機関にとって利益にならない不採算行動をお願いすることが必要かもしれません。
なお、SNSで旧紙幣が使えなくなるという内容をつぶやいたり、いいね、引用、リポストするなどの行為を行うと、詐欺行為に間接的に加担してしまう可能性がありますので、ご注意ください。そして、旧紙幣が使えなくなるという投稿の主を特定しておくと、怪しいSNSアカウントを見分けることができるようになるかもしれません。
現在、新紙幣に限らず様々な金融詐欺が跋扈しております。筆者とていつ騙されるかわかりませんので、「君子危うきに近寄らず」の精神を維持したいものです。
■政策としての旧紙幣利用不可政策
一方で、真面目な話(政策)として旧紙幣を使えなくするという考えもあります。タンス預金の定義が曖昧なため、正確にいくらあるのかわかりませんが、60兆円~100兆円あると言われています。最近は物価上昇のため、円の価値下落の対策として、タンス預金を投資に振り分けている人もいることでしょう。
もし、政府が本気で旧紙幣を利用できなくなるとすると、どのような理由があるのでしょうか。1つには投資余力を増やし、株式市場に投資資金を投下させたいと考えているかもしれません。
現在、新NISAのスタートで毎月1.5兆円近く金額が投資されているようです。1年間で20兆円規模で投資され、日本と世界の株式市場に資金が投下されています。タンス預金が株式市場に流れ込めば、数年分の資金が一挙に市場に流入しさらなる株価の押上げ、下支え要因となり得ます。
他にも、自動販売機やATMなどで、新旧両方の紙幣を使えるようにするには、それなりのコストがかかります。最近では新500円貨幣が一部自動販売機などで使えなくなったことを体験した人もいるでしょう。
新紙幣のみに対応する機械と新旧両方の機械に対応する機械を作るのではどちらが安価に作れるでしょう。新旧紙幣に対応するコストは経済的に合理性を欠く可能性があります。また、設備投資にも繋がりますので、旧紙幣を使えなくするというよりも、世の中が新紙幣しか対応しなくなることで、実質的に旧紙幣が使いづらくなる状況は考えられます。
ただ、困るのは被災時です。筆者も自宅に千円札を災害時の現金決済用に保管しています。当然旧紙幣ですから、一度新紙幣に変えておくような手間がかかります。一方で、もし新紙幣対応の機械が故障すると、旧紙幣対応の古い機械での対応とならざる得ない場合もあるかもしれません。
そのため、当面は新旧両紙幣を保持しておくほうが、紙幣が利用できなくなったときの、対応としては無難であると思います。全額デジタルにしてしまうのは、停電時などに不便ですから、災害の多い日本においては、完全な電子マネーによるデジタル化も不便です。
となると、結果として新旧紙幣と電子マネーの3つを併存させるという高コスト方式が、もっとも安心なのかもしれません。色々書いておいて、落とし所が併存というのも残念ですが、タンス預金を大量に持っておくことは避けるべきでしょう。
最後に、タンス預金は普通預金と比べて、盗難の危険性が高く、失念リスクも高い管理方式です。最近では、普通預金の金利も上昇してきましたので、タンスから金融機関に預けどころを変更されてはいかがでしょう。一定額以上の現金を所有することは、詐欺ではなく別の事件に巻き込まれるリスクを高めます。
金融機関や国に財産を把握されたくないというお気持ちはわかります。ただ、物価上昇によるマイナスの資産運用を回避するには、タンスから金融機関に資金を移動することが、一歩目として必要です。
すでに、コロナ禍から始まった物価上昇で、消費者物価指数は10%近く上昇しています。タンス預金はマイナス10%の評価減となっていると知っておくのもいいでしょう。
高齢のご家族がいらっしゃる方は、事前に詐欺に気をつけるよう、注意喚起をお願いします。