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米国メディア「戦争ロボットに人を殺す権利があるのか?」人間性ある判断が入らないキラーロボット懸念

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻した。ロシア軍、ウクライナ軍ともに軍事ドローンによる攻撃を行っている。そのような中、米国メディアのFreeThinkが「Should war robots have “license to kill?” | Hard Reset」(戦争ロボットは人を殺す権利があるのか?)という動画を制作して公開した。

動画の中でウクライナにおける両軍の軍事ドローンによる攻撃を紹介しながら、近い将来にAI(人工知能)技術の発展によって、自律型殺傷兵器に発展していくことを懸念。「無人兵器の未来:AI、ロボット、自律型兵器と未来の戦争(原題:Army of None)」(早川書房 、2019年)の著者のポール・シャーレ氏が登場して、自律型殺傷兵器の脅威を伝えるイメージ動画とともに訴えている。動画の中にも女性が登場してきて、兵士なら人間らしい感情と理性ある判断が入り市民なのか軍人なのかの判断ができるが、ロボットではそのようなことはできないと伝えている。ポール・シャーレ氏は「人間の生死をロボットに任せてはいけません。攻撃に際しては人間性のある判断が入ることがとても重要です」と語っている。

AI技術の発展とロボット技術の向上によって、軍事でのロボット活用は進んでいる。戦場の無人化が進むとともに「キラーロボット」と称される人間の判断を介さないで攻撃を行う自律型殺傷兵器が開発されようとしている。

人間の判断を介さないで標的を攻撃することが非倫理的・非道徳的であるということから国際NGOや世界30か国が自律型殺傷兵器の開発と使用には反対している。ロシアやアメリカ、イスラエルなどは反対していないので、このように積極的に軍事分野での自律化を推進しようとしている。

2021年12月にスイスのジュネーブで国連の特定通常兵器使用禁止制限条約(Convention on Certain Conventional Weapons: CCW)の会議が開催されており、自律型殺傷兵器について議論されていた。だがCCWでも一致した結論は出ずに「これからも自律型殺傷兵器の開発や使用については継続して協議をしていく」こととなった。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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