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仕事を持ち乳幼児がいる母親は日中の育児を誰に任せているのだろうか(2023年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
幼い子供には大人のサポートが欠かせない。母親が仕事の時には?(写真:アフロ)

幼い子供は心身ともに不安定で行動も目を離せないところから、大人の世話が欠かせない。仕事を持ち乳幼児(生まれた直後から小学校就学まで)がいる母親は、日中の育児を誰に任せているのだろうか。厚生労働省が2023年7月に発表した「国民生活基礎調査の概況」(※)から確認する。

児童(18歳未満の未婚の人)を末子に持つ世帯において、母親が仕事をしているか否かの比率は次の通りとなる。全体では3/4強、末子が3歳ならば7割強が「母親は仕事あり」と回答している。

↑ 仕事ありの母の割合(児童あり世帯比、「母の仕事のあり無し不詳」は含まず、末子の年齢階層別)
↑ 仕事ありの母の割合(児童あり世帯比、「母の仕事のあり無し不詳」は含まず、末子の年齢階層別)

子供、特に「乳幼児」に該当する時期は、大人のサポートが欠かせない。その時期に母親が働きに出る(必要が生じた)場合、育児の問題が大きな課題となる。そこで今調査では「末子が乳幼児」「母親が仕事を持つ」の条件に合致した世帯において、誰がその末子を日中は保育するのか、複数回答で末子の年齢階層別に尋ねている。その結果と、上のグラフ「末子の年齢別、仕事ありの母親の割合」をかぶせたのが次のグラフ。「仕事ありの母親の割合」とその他の項目とは調査母体が異なるが、比較値として見る際の参考として欲しい。

↑ 「仕事あり」の母親の世帯における日中の保育の状況の割合(複数回答、末子の乳幼児の年齢階層別)(2022年)
↑ 「仕事あり」の母親の世帯における日中の保育の状況の割合(複数回答、末子の乳幼児の年齢階層別)(2022年)

ゼロ歳児の場合はさすがに父母が保育する場合が多く3/4近く。今回はグラフ作成を略するが、全般的に「末子の年齢が上になるに連れて(働いている場合の)母親の就業時間は長い」傾向があるため、短時間は父親や祖父母に任せて母親が働きに出るとのパターンが想定される。また幼少児は何かと手間がかかりリスクも大きいため、他人には任せ難いとの事情もある。一方、ゼロ歳児から1割強は認可保育所を活用しているのも確認できる。

これが1歳になると、父母の育児率はゼロ歳における値のほぼ1/3となる27.5%にまで減り、その分認可保育所や認定こども園の利用が増える。以後「父母」「祖父母」は減少し続け、2歳ぐらいまでは認可保育所・認定こども園が増加。3歳以降になると幼稚園も活用できるために幼稚園利用率が急激に増え、その分認可保育所利用率が漸減する形となっている(認定こども園は漸増、あるいはほぼ横ばいを維持。幼稚園の機能を合わせ持つからに他ならない)。

主要な項目の動向をざっとまとめると次の通りとなる。

・父母…ゼロ歳児では高い値。1歳になると急激に減り、あとは漸減。

・祖父母…2歳ぐらいまでは1割近く。後は数%。

・認可保育所…ゼロ歳児時点で1割強が利用。2歳児の6割強がピークで、以後おおよそ漸減。

・認定こども園…ゼロ歳児時点でも一部が利用。5歳にかけて利用率はほぼ増加。

・幼稚園…法的利用年齢の3歳以降急増。

・認可外保育施設…2歳時に最多の5%近く、あとはほぼ漸減。

三世代世帯、あるいは近所に祖父母世帯がいる家庭ならば、母親の就労時に保育をお願いする事例も多々考えられる(「お爺ちゃんっ子」「お婆ちゃんっ子」なるもの)。しかし三世代世帯は全世帯のうち1割を切っており、期待はできそうにない。

↑ 全世帯数に占める世帯種類別構成比(2001年以降)
↑ 全世帯数に占める世帯種類別構成比(2001年以降)

厚生労働省の「出生動向基本調査」など各種調査結果でも、子供を持てない・持たない理由(≒少子化の遠因)として、(特に乳幼児期の)育児問題がクローズアップされている。以前のように三世代世帯が当たり前で、母親の就労も比率的に低いのなら問題視されなかった話で、母親の就労そのものが原因になっている場合や、幼稚園・保育所・認可外保育施設・認定こども園、そして待機児童の話と合わせ、状況は複雑に絡み合っている。

乳幼児の保育はどのような状態がベストで、それに向けていかなるかじ取りをすべきなのか。この問題は専門家、政策担当、そして現場の人たち、そしてもちろん当事者自身が意見を通わせて模索していかねばならない。その際には「自分の周辺でこのような状態を見たから」「自分はこのようにしたいと考えるから」との狭い視野だけの判断ではなく、今件のような資料を元にすることも重要。

なお今件記事の主旨とはやや外れるが、世帯の母が「仕事無し」、つまり専業主婦における保育状況は次の通りとなる。

↑ 「仕事無し」の母親の世帯における日中の保育の状況の割合(複数回答、末子の乳幼児の年齢階層別)(2022年)
↑ 「仕事無し」の母親の世帯における日中の保育の状況の割合(複数回答、末子の乳幼児の年齢階層別)(2022年)

「仕事無し」の専業主婦が家事に没頭しているのか、自らの技術向上に励み修練をしているのか、趣味を楽しんでいるのかまでは分からないが、おおよそ「2歳までは夫婦で」「3歳以降は幼稚園を多用」「認可保育所や認定こども園も利用する事例が多々ある」とのパターンに集約できる。兼業主婦の保育状況はよく問題視されるが、それと比較する形での専業主婦の状況はほとんど事例が呈されることはないので、今件傾向も合わせて覚えておくことをお薦めする。

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※国民生活基礎調査

今調査は全国の世帯および世帯主を対象とし、各調査票の内容に適した対象を層化無作為抽出方式で選び、2022年6月2日に世帯票・健康票・介護票、同年7月14日に所得票・貯蓄票を配ることで行われたもので、本人記述により後日調査員によって回収され、集計されている(一部は密封回収)。回収の上集計が可能なデータは世帯票・健康票が20万3819世帯分、所得票・貯蓄票が1万9140世帯分、介護票が5499世帯分。今調査は3年おきに大規模調査、それ以外は簡易調査が行われている。今回年(2022年分)は大規模調査に該当する年であり、世帯票・健康票・介護票・所得票・貯蓄票すべての調査が実施されている。

また1995年分は阪神・淡路大震災の影響で兵庫県の分、2011年分は東日本大地震・震災の影響で岩手県・宮城県・福島県(被災三県)の分、2012年は福島県の分、2016年は熊本地震の影響で熊本県の分、2020年は新型コロナウイルス流行の影響で全体のデータが取得されておらず、当然各種結果にも反映されていない。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項のない限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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