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秋には珍しくお辞儀をする台風14号は雨に警戒

饒村曜気象予報士
台風14号と前線の雲(10月9日16時)

台風14号の進路

 西日本の南海上には台風14号があって東へ進んでいます。

 海面水温が台風が発達する目安の27度以下の海域を進んでいますので、徐々に衰弱していますが、依然として暴風域を持っています(図1)。

図1 台風14号の進路予報(10月9日21時の予報)
図1 台風14号の進路予報(10月9日21時の予報)

 秋の台風は、転向して進路を東に変え始めると、上空の偏西風に乗って加速し、温帯低気圧に変わって足早に日本列島を去ることが多いのですが、台風14号は違います。

 秋になっても、上空の偏西風がなかなか南下せず、この影響で東に向きを変えても、台風はあまり加速しません。

 それどころが秋には珍しく、日本付近でお辞儀(南下)をし、12日には熱帯低気圧に変わる予想です。

 少し古いのですが、昔の筆者の調査で、矢印の大きさで頻度を示しているものがあります(図2)。

図2 月別・海域別の台風の進行方向(10月の一部、昭和26年(1951年)~昭和52年(1977年))
図2 月別・海域別の台風の進行方向(10月の一部、昭和26年(1951年)~昭和52年(1977年))

 この図では、東南東・南東・南南東・南・南南西・南西・西南西に進む台風は、数が非常に少ないので、全てをまとめて南へ矢印を引いています。

 この調査では、10月に日本の東海上を進む台風で、南寄りの進路を取る台風はありませんでした。

 つまり、台風14号は、非常に珍しい進路を取る台風といえそうです。

 台風14号が偏西風に乗って足早に日本列島を去らないということは、台風による雨の期間が長引くことを意味します。

特に八丈島の雨

 台風14号の北上に伴い、前線の活動が活発となり、西日本や東日本の太平洋側では大気の状態が非常に不安定となって激しい雨や非常に激しい雨の降る見込みです。

 台風14号はあまり加速しないことから、降雨期間が長くなりますので雨に警戒が必要です。

 10月10日に予想される雨量は、多い所で、伊豆諸島300ミリ、東海地方250ミリ、近畿地方180ミリ、関東甲信地方(伊豆諸島を除く)140ミリとなっています(図3)。

図3 24時間予想降水量(10月10日)
図3 24時間予想降水量(10月10日)

 特に、台風14号の予想進路上にある八丈島では、前線による雨が2日間にわたって降り続いています。

 1時間雨量では30ミリ位が最大であっても、長時間続く雨で、10月7日と8日の2日間に雨は412.5ミリも降っています(図4)。

図4 八丈島の毎時降水量
図4 八丈島の毎時降水量

 八丈島の雨量の統計開始が平成15年(2003年)と比較的新しいのですが、これまでの、48時間雨量の記録は373ミリですから、これだけで新記録となります。

 八丈島など伊豆諸島南部では、これからが本番、台風14号の雨が降ります。

 厳重な警戒が必要です。

タイトル画像、図1、図3の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:饒村曜・宮沢清治(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計―月別発生数・存在分布・平均経路、研究時報、気象庁。

図4の出典:気象庁ホームページをもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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