Yahoo!ニュース

世界遺産・佐渡 ブラタモリが紹介した場所と、3つの不都合な真実とは?

とらべるじゃーな!穴場ずらし旅、愛好家

関東圏の穴場ずらし旅の愛好家、とらべるじゃーな!です。

無事、佐渡(佐渡島の金山)の世界遺産登録が決まりました。関係者の方のご尽力に思いを馳せつつ、お祝いの言葉を申し上げます。

しかし、観光客が世界遺産を知るには、難しい資料に目を通さなければならない面があります。そこで今回は、分かりやすさに定評があるブラタモリで、佐渡がどう取り上げられたのかをふり返ってみます。

ブラタモリ佐渡編のテーマは「黄金の島・佐渡はキセキの島?」

おおまかに言えばブラタモリ佐渡編では江戸期以降の佐渡に、世界遺産では江戸期を含むそれ以前の佐渡にスポットを当てています。

ブラタモリは、遺構の残存状況からくる分かりやすさを重視、世界遺産では歴史上の希少性を重視したと言えます。

ブラタモリでは、佐渡観光の定番として坑道見学も可能な江戸期の相川金銀山と、ジブリの風景に似ているとされライトアップも行われる、昭和期の北沢浮遊選鉱場(きたざわふゆうせんこうば)を中心に扱いました。

一方世界遺産登録では、観光集客上の軸の1つとなっていた北沢浮遊選鉱場は除外勧告を受け、平安期に端を発する西三川砂金山(にしみかわさきんざん)、戦国時代に端を発する鶴子銀山(つるしぎんざん)、そして相川金銀山が選ばれています。

ブラタモリではあまり触れられなかった西三川砂金山、鶴子銀山

砂金採取はもっとも原始的な金の入手方法のため、歴史上は重要です。

西三川砂金山(にしみかわさきんざん)は、佐渡島の西岸南寄りの山中に位置し、平安時代の『今昔物語集』にも登場する佐渡最古の砂金山です。

佐渡の国には金の候ふにや。金の候なめりと見て給へし所の候しを、事の次でに、己がどち申し候しを、聞食たるにこそ候なれと。守、然らば、其の然見えけむ所に行て、取て来なむや。(今昔物語集 巻二十六第十五話)

本格的な砂金採集は室町時代に始まりました。山肌を削り崩して砂金を採取した跡が、虎丸山に残されていますが、比較的地味な風景であるためか、ブラタモリではあまり触れられていません。

鶴子金銀山(つるしぎんざん)は、佐渡島西岸の山中にある鉱山遺跡で、相川金銀山の約1.2km南に位置しています。戦国時代の1542年に越後国の商人によって発見されました。

当初は地表から銀を採掘しましたが、岩見銀山(島根県)と交流があり、坑道掘りの技術が伝えられました。こちらも残存する遺構は少し地味な印象を受けます。

ブラタモリは、道遊の割戸(相川金銀山の1つ)からスタート

ブラタモリは、鶴子銀山の技術を継承した道遊の割戸(どうゆうのわりと、相川金銀山の1つ)から、金山の見学をスタートしています。

江戸時代初期に発見された金鉱脈で、手掘りで掘り進むうちに山頂から裂け目が入る形になりました。裂け目の深さは、約74mで、佐渡金山を象徴する分かりやすい、絵葉書になりそうな景色として見学の定番です。

地学要素を重視するブラタモリでは、道遊の割戸に近づき、白い筋を発見します。

この筋の正体は石英。金は白い石英に、黒く封じ込められるのです。佐渡では1tの金鉱石から採れる金はわずか5g。金鉱石を砕き、金を取り出すには大変な苦労がありました。

坑道が400キロにおよんだ宗太夫鉱(相川金銀山の1つ)

続いてタモリさんが訪ねたのが宗太夫鉱(そうだいふこう、相川金銀山の1つ)。観光名所の佐渡金山の1コースとして見学できます。

アリの巣のように広がる坑道の総延長は400キロに及び、東京・佐渡を結ぶ長さとなります。

内部では、人形を使って採掘の様子が再現されています。タガネをペンチで挟む独自の掘り方で、2日で1本がすり減ってなくなります。

佐渡金山が世界遺産に登録された背景には、海外では機械掘りが進んだなか、手掘りが発展し、その資料や遺構が十分に残されている点で、世界的に共有する価値があると見なされたものです。

佐渡は世界にとって、古い宝が入った開かずの金庫のような存在だったのです。

世界遺産登録で触れられなかった3つのこと

江戸時代、多くの働き手が集まりお金が動く場所の常として、佐渡には遊女の歴史がありました。また、佐渡金山には、戸籍のない日本人の無宿人(むしゅくにん)や朝鮮の人々を酷使した歴史も確認されています。

このほか、佐渡金山は、関ヶ原の戦いがあった17世紀に世界有数の産出量を誇り、徳川を支え江戸時代を下支えしたという歴史家もいますが、その産出量には確たる証拠がないとの意見も根強く残ります。

このような点は、佐渡をより深く知るには少しだけ意識しておきたいことです。

このほかブラタモリでは、地学的な観点から、佐渡金山の発展を支えた固い金鉱石を砕く「球顆流紋岩」、またトロッコの線路跡を辿り北沢浮遊選鉱場跡も見学しています。全ロケ地は下のページをご確認ください。

【ブラタモリ佐渡 全ロケ地】世界遺産・佐渡金山の歴史を探る#46(とらべるじゃーな!)

穴場ずらし旅、愛好家

宿泊歴500泊。関東周辺の穴場★ずらし旅スポットを紹介。日本テレビ(2023年)、TBSテレビ(2024年)に旅の専門家として登場。Yahoo!ニュースエキスパート公式旅行ライター(2023年7月企画賞)。JTB運営・地理旅行検定取得済み。東京都在住。

とらべるじゃーな!の最近の記事