【コラム】U-17日韓戦 「韓国は文句を言い、日本は戦った」
なかなか壮観な"図"だ。
2021年3月(A代表) 日本 3-0 韓国
2022年6月(U-16代表) 日本 3-0 韓国
2022年6月(U-23代表) 日本 3-0 韓国
2022年7月(A代表) 日本 3-0 韓国
2023年7月(U-17代表) 日本 3-0 韓国
ここ2年間、各世代代表の公式戦として行われた日韓戦の結果だ。日本は5連勝。いずれも3-0の勝利だから合計スコアは15-0だ。7月2日に行われたU-17アジアカップ決勝により「3点」が加わったのだ。
その国のサッカーの強さというのは「年代別代表の強さ」で図られるものではない。いかにイケてる国内リーグを持っているか、そしてA代表の成績によって図られるものだ。年代別代表の強さというのはそれらの発展の可能性を高めるもの、という位置づけにとどまる。
現に日韓とて、A代表はこの3年間で日本が2連勝中だが「W杯での成績はほぼ同じ」。カタールW杯では日韓両国は同じくベスト16だった。
そうではあっても、2日のU-17日韓戦後の韓国メディアの「荒れっぷり」はなかなかのものだった。44分に韓国の一人を退場にし、日本GKとの交錯シーンでPKを与えなかった主審への恨み節。これで溢れかえった。2日後の7月4日にも「同主審は今大会日本戦で笛を吹くのは4回めだった」といったファクトを出してきて、また言う。
恨み、恨み、恨み…「日韓戦敗北」 U-17アジアカップ決勝後の韓国メディアは「審判批判」で溢れ返る
シンプルに日韓戦の好勝負を期待したなか、判定にガッカリしたか。
あるいは「感情は吐き出し尽くした方がいい」という韓国的な考え方か。かの超人気ドラマ「愛の不時着」でも、ヒロインのユン・セリが号泣した際に、恋人のリ・ジョンヒョクがこう聞くシーンがあった。
「泣き尽くした?」。もう泣かないで、とは言わずに。
しかし。
ちゃんと見ないと、韓国側とてこの日韓戦のポイントを見誤る。
そもそもは1ゴールを争う攻防で審判の判定が作用し、決着がついたわけではない。1966年イングランドW杯決勝の延長前半、スコアが2-2の状況で放たれたジョセフ・ハーストの「かの」ゴールとは違う。3点差がつくゲームだったのだ。
さらに言っておくなら、韓国は強かった。
試合中継でも触れられていたが、日本の先制点は今大会で最も遅い時間帯(45分+1分)に決まったものだった。前半アディショナルタイム。この大会での日本はすべて前半に先制点を取りゲームを進めてきたが、同じ展開とはならなかった。
今大会の韓国、勝ち進んでいくにあたって、国内の高評価を得ていた。
「黄金世代」
ソウル新聞、毎日経済、スポーツ京郷、オーマイニュース…そういったメディアがチームをこう表現していた。
2010年にユース世代の強化で提携を結んだスペインの影響、そして2008年から始まり定着してきた「Kリーグアカデミーを高校チームとして運営する手法」などの波に乗り、合理的な指導を受けた技術の高い選手たちが揃った。
この「黄金世代」は、これまでの縦に速い韓国スタイルとは違う「クリエイティブなサッカー」を標榜してきた。ただし、2010年代中盤以降、社会的な人権意識の高まりによって「強い指導」が禁じられる風潮のなか、かつての「韓国らしい強さ」が失われるのではという指摘もあるのだが。
いずれにせよ確かに試合を観ていても、韓国の技術に驚くことが多かった。ビルドアップで日本選手を食いつかせ、アウトサイドの切り返しでかわした後に、斜めのボールを果敢に入れる。右サイドバックがボールキープしたまま、くるっと回って日本のプレスを剥がす。試合を通じてのインターセプト数は「韓国10:4日本」だったから、いい形でボールを奪って攻撃を始められていたのだ。
現に前半戦の攻防を、韓国メディア「OSEN」はこう報じていた。
「韓日戦は両チームが鋭い攻撃を繰り広げながら激しい戦いを展開した。両GKがスーパーセーブを連発し、失点シーンはなかった。両チームは決勝戦らしい攻撃的なサッカーを披露し、優劣をつけることが難しい試合だった」
ではこういった時に日本はどう戦っていたのか。
バチバチとやり合っていたのだ。
AFC(アジアサッカー連盟)の公式データには、試合のデータがこう掲載されていた。
■タックル回数
韓国11:24日本
■タックル成功率
韓国63.6%:日本83.3%
■デュエル勝率
韓国40.7%:日本59.3%
■空中戦勝率
韓国43.8%:日本56.3%
韓国では日本戦対策として長らく(およそ2000年代中盤から2010年代後半まで15年くらい)有効だった戦い方がある。特にACL(AFCチャンピオンズリーグ)の現場で韓国サイドから幾度もこんな話を聞いてきた。
「日本相手には強めに当たっておけば、すぐにひるむから大丈夫」
「中盤を省略してゴール前だけ固めておけば大丈夫」
「前半攻めさせておいて、後半にガス欠した時に一気に攻めれば大丈夫」
日本は変わった。
韓国も10年以上をかけてスタイルを変え、「黄金世代」を作ってきたが、同じく日本も変わった。そこのところを見ないといい日韓戦にはならない。
日韓の差がついて見えるのは、変化の速度が日本の方が速いからだ。もう「ポゼッションだけで勝負しましょう」という時は過ぎている。「それはやれる時にやりましょう」という風に。
まあそうは言いながらも、「本大会(各世代W杯)での結果は韓国の方がいい」ということが度々起きていて、そういう点こそ韓国の強さだとも思うのだが。
だからこそ勝った直後のいま、上から目線からモノ申そう。韓国はあの試合、誰と戦ったんですか? 誤審があったとて、お互い与えられた時間は90分+@だった。取り戻す時間はあった。
これまで、韓国にはさんざん嫌な思いをさせられてきた。1985年、2010年、2012年などなど…日本は今回、一本やり返したに過ぎない。これからもやり返そう。15-0など、全然足りてない。