地球上でブラックホールは発生し得る?発生するとどうなる?
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「地球上でブラックホールは発生し得るのか?」というテーマで動画をお送りしていきます。
ブラックホールというと、宇宙空間に存在して周囲の物を何でも飲み込んでしまう、巨大な質量の天体を思い浮かべると思います。
しかし、地球上でもブラックホールが発生する可能性があると言われています。
実際に、粒子加速器を使って地上に小さなブラックホールを作り出そうという試みがあります。
ブラックホールはどうやってつくられる?
ブラックホールはどのようにしてできるのでしょうか?
通常考えられているブラックホールは大質量の星が進化の末に行きついた姿です。
諸説ありますが、太陽の30倍以上の大質量星が一生の最期に超新星爆発を起こし、その中心部分が重力で潰れてブラックホールになります。
このようにしてできたブラックホールは少なくとも太陽質量の3倍以上の重さがあり、半径は最小でも9km以上あります。
しかし生成過程を恒星の最期に限定しなければ、理論的にはブラックホールの大きさには下限はなく、素粒子より小さなものもあり得ます。
このようなミニブラックホールは量子効果によって蒸発し、特に小さなものは生まれてすぐに爆発・消滅します。
生まれた直後の宇宙は大きさは今よりもずっと小さいのに、現在の宇宙と同じ質量を含んでいたので、極端に高密度な状態でした。
このときの密度のばらつきがもとでブラックホールができていた可能性があります。
この段階で形成されたブラックホールは「原始ブラックホール」と呼ばれ、原始ブラックホールには理論上、質量の下限がありません。
非常に小さい原始ブラックホールはガンマ線を放って蒸発した可能性がありますが、このガンマ線など、原始ブラックホールが存在していた根拠は今の所発見されたことがありません。
地球上でブラックホールは発生し得る?
地球には、常に何億、何兆もの超高速粒子がぶつかってきています。
その中には非常に高いエネルギーを持つものもあります。
アインシュタインの相対性理論によると質量とエネルギーは同じものです。
したがって理論上、高エネルギー粒子が地球の大気にぶつかったときに、その衝撃によってブラックホールができる可能性があります。
このブラックホールも素粒子レベルの大きさのため、すぐに蒸発してしまいます。
また、現代の物理学者たちは、物質を細かく砕いて宇宙がどのようなものから出来ているか調べています。
そのために粒子加速器という装置を使って、高エネルギーの粒子をぶつけて、新しい粒子が発生するか調べています。
その際にミニブラックホールが生成される可能性も考えられます。
私たちは空間が3次元だと認識していますが、その他に余分な次元があるという説もあります。
もしこのような余剰次元があれば、ミニブラックホールの生成の可能性はより高くなります。
まとめると、地球上でブラックホールが生成される可能性は確かにありますが、生成されたとしてもそれは素粒子サイズで非常に小さく、一瞬で蒸発してしまうため観測することは極めて困難です。
コインサイズのブラックホールが地上に現れたら
粒子加速器でブラックホールができたとしても、すぐに蒸発してしまいます。
ブラックホール蒸発による放射が検出された後は何も起きません。
では、もし仮にコインサイズ(半径1cm)のブラックホールが地上に現れたらどうなるでしょうか?
このコインサイズのブラックホールの質量は、地球と同じくらいの質量になります。
逆に言えば、地球を圧縮してブラックホールにするには、半径1cm未満まで圧縮する必要があるんですね!
ブラックホールの近傍では強い重力が働くため、付近の物質は粉々に破壊されます。
例えば、人間の足元にブラックホールがあったとします。
ブラックホールに近い程、重力は強くなるので、足にかかる重力は頭にかかる重力よりも桁違いに大きなものになります。
そのため、ブラックホールのすぐそばにいる人は、ものすごい力でスパゲティのように引き伸ばされます。
この力を潮汐力といいます。
ブラックホールが足に接している場合、潮汐力は地球の重力の8兆倍のさらに1億倍というとてつもない大きさになります。
人間などひとたまりもありません。
ブラックホールから少し離れた場所ではどうでしょうか?
ブラックホールから20kmの位置では、潮汐力は地球の重力の約10倍(10G)です。
宇宙飛行士の訓練では8Gや9Gの重力加速機訓練がありますが、一般人なら失神してしまうレベルです。
ちなみに「世界最大加速」を売りにしている富士急ハイランドのジェットコースターの重力加速度は3.75Gです。
それでは、より遠くの場所ではどうでしょうか。
ハワイにブラックホールが現れたとしましょう。
その時、日本にいる人には自分の体が1.7倍ほど重くなったように感じるでしょう。
また、地面が東西方向に30傾いているように感じられます。
これは、今まで地球の中心に向かっていた重力が、地球とブラックホールの共通重心に向きを変えたためです。
共通重心の位置は地球の中心とブラックホールの中間地点になります。
また、ブラックホールの潮汐力は地球のマントルやマグマにも影響を与えます。
日本列島を含む火山帯では火山が一斉に噴火するかも知れません。
実際に、木星の衛星イオでは火山活動が確認されており、その原因は木星の潮汐力と考えられています。
また、土星の衛星エンケラドスや海王星の衛星トリトンも惑星の潮汐力により変形し火山活動が発生しています。
地球の大気もブラックホールの影響を受けることになります。
ブラックホールの周りの大気が吸い込まれるため、気圧が低くなり低気圧ができるのです。
そのため、外から中心にあるブラックホールに向けて暴風が吹き込みます。
地球の自転によりコリオリ力が働くため、北半球では反時計回り、南半球では時計回りに渦を巻きます。
その結果、ブラックホールを中心とした猛烈な台風が発生するでしょう。
地上に現れたブラックホールですが、いつまでも地表に留まっていることはありません。
ブラックホールは地球と同じ質量を持っているので、重力で地球の中心方向に強く引き付けられています。
そのため、ブラックホールは地球を掘り崩しながら地球中心に向けて沈み込んでいくでしょう。
やがて地球の中心まで到達するとブラックホールの進行は停止します。
地球のすべての物質はいずれブラックホールに飲み込まれてしまうはずですが、それまでにはどのくらいの時間がかかるのでしょうか?
ブラックホールを球体と考えてその表面積を求めると、約13cm^2になります。
この領域に落ち込んでくる物質は光速まで加速されているとします。
この条件で一秒間に吸い込まれる物質の量は体積にして約4000m^3です。
これは50mプール7.5個分の体積です。
東京ドーム1個の体積を吸い込むのに5分余りというものすごい勢いですが、それでも、地球全体が飲み込まれるまでは数十億年単位でかかることになります。
ブラックホールが現れたことによる、地球外への影響も見ていきましょう。
地上にブラックホールが現れたことで、地球の衛星である月に及ぼす重力は倍になり、その軌道にも影響を及ぼします。
現在の月の軌道では重力と遠心力の釣り合いが崩れ、より地球の近くの軌道を回ることになるでしょう。
そして、軌道の形もより潰れた楕円形に変わると考えられます。
地球に置き換わったブラックホールは太陽系全体にも影響を与えます。
ブラックホールの重力は、小惑星の軌道をより内側に引き込みます。
それによって、以後数百年間は、今よりも頻繁に小惑星同士の衝突や惑星と小惑星の衝突が発生するようになるでしょう。
他の惑星もブラックホールの力を受けますが、軌道を大きく変えるまでには至りません。
地球を乗っ取ったブラックホールは、今の地球と同じ軌道で太陽を回り続けます。
コインサイズのブラックホールといってもその破壊力はあなどれませんね。
しかし、このようなことが起きる可能性はほとんど無く、発生確率は実質ゼロなので、ご安心ください。