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清宮が甲子園に帰ってくる!! センバツ出場校決定 その選考過程は!?

森本栄浩毎日放送アナウンサー
センバツ出場校が決定!今回は実力重視の選考で、21世紀枠では部員10人の不来方も

近年、実力重視が強まったかと思えば、昨年のように「地域性」で、意外な選出があったりと「迷走」の感をぬぐえないセンバツ選考。しかし今回は、九州で初めて4枠を2県で占めるなど、「実績重視」の選考を貫いた。21世紀枠も含め、選考過程を検証する。

出揃った晴れの32校。下段には補欠校も
出揃った晴れの32校。下段には補欠校も

抱き合わせ地区は実力を順当に評価

関東・東京、中国・四国は、最後の1枠を比較して決定する。関東5番手の慶応(神奈川)と東京2番手の日大三が比較対象になり、「投打に日大三が上回る」(磯部史雄・関東地区選考委員長)として慶応が涙をのんだ。東京決勝で、早稲田実に逆転サヨナラ負けを喫したとはいえ、日大三の左腕・桜井周斗(2年)は、怪物・清宮幸太郎(2年=タイトル写真)からの5打席連続を含む、計14の三振を奪った。打線も、金成麗生(2年)ら上位の左打者が快打を連発し、「迫力がある」(磯部氏)と強調した。群馬勢が関東3、4番手になったが、慶応は覆せず、日大三も逆転できなかったことで、地域性は功を奏さなかった。これで全国屈指の激戦・神奈川から3年連続センバツなしとなった。また中国・四国は、総合力の高い創志学園(岡山)が3番手になったことで、英明(香川)との実力比較で上回るとされた。とりわけ、4番でエース・難波侑平(2年)の活躍が高い評価を受けた。

近畿は京都、和歌山がゼロに

神宮枠を得た近畿は7校目が焦点となったが、近畿大会で1勝した高田商(奈良)が滑り込んだ。近畿は大阪、兵庫、奈良が2校、滋賀1校と極めてバランスが悪いが、「近畿は枠数も多いので、もともとあまり地域性は重視してこなかった。地域性は実力で同等と判断したときだけ」(杉中豊・近畿地区選考委員長)と、それぞれ3校が揃って近畿大会で初戦敗退した京都、和歌山勢を寄せ付けなかった。

神宮覇者の履正社を大阪大会で破った上宮太子は、「2校ルール」で圏外に
神宮覇者の履正社を大阪大会で破った上宮太子は、「2校ルール」で圏外に

近畿は昨年も準々決勝コールド負けの市和歌山が選出され物議をかもしたが、今回も準々コールド敗退の高田商が選ばれる同様の結果になった。近畿からはこれまで88回のセンバツの歴史上、公立校が選ばれなかったことはなかったが、今回も高田商が「近畿公立」の伝統を守った。なお、大阪1位の上宮太子は、「一般枠同一都道府県2校まで」の内規により、大阪2校が選出された時点で対象から除外された。この除外当該校は、補欠でも2番手になるというのも内規で定められているようである。

九州は初めて2県で独占

九州も上位が2県で占められたため、準決勝敗退の熊本勢を逆転するチームが出るかと思われた。それでも、「九州で2県で4枠はこれまで一度もなかったが、熊本勢の力が地域性を上回る」(松元泰・九州地区選考委員長)とされた。とりわけ、4番手評価となった秀岳館については、「新チームの始動遅れの影響があった」と準決勝での完敗を庇ったが、準々決勝敗退校に決め手がなかったというのが本音だろう。ここ数年は、実力重視といいながら地域性が頭をもたげる地区もあったりして一貫性に欠けていたこともあったが、今回は集客も期待できる慶応や、京都、和歌山勢を外し、全ての地区で「実力実績第一」を貫いたことは評価できる。

21世紀枠10人チームは明暗

21世紀枠は、東日本から不来方(岩手)、西から中村(高知)が決まり、3番目に多治見(岐阜)が入った。選考経過によると、西は15人の特別選考委員の評価点は中村が突出し、洛星(京都)と高千穂(宮崎)が続いた。この3校で検討した結果、中村が、地域との密着度や練習試合もままならない環境面の困難さ、それにもかかわらず、秋の県大会で明徳義塾に完封勝ちした戦績も加味され、選ばれた。東は、不来方、石橋(栃木)、多治見がほぼ横一線で検討。「部員10人という少人数ならではの良さ。一人一人が自分をかけがえのないものと自覚している」として選ばれた。最後の1校は、前出で選に漏れた4校で比較検討し、多数決で多治見が選ばれた。多治見は、東海大会に地元の応援団が駆けつけるなど地域から愛されている点が決め手となったようである。同様に部員10人で期待された洛星は補欠2位(1位は高千穂)になった。

主催者が全面バックアップを約束

部員10人に対しては、特別選考委員の浅井愼平氏から、不測の事態への危惧も示されたが、「全国の少人数で頑張っているチームへ主催者からのメッセージが込められていると思っていただきたい」と八田英二・日本高野連会長が、不来方の選出理由に力を込めた。また、渡会文化・毎日新聞大阪本社代表も、「けがや病気などのリスクも、我々主催者が責任を持って引き受ける」と全面バックアップを約束した。過去、10人で出場(一般枠)したのは、昭和62年(1987)の大成(現海南=和歌山)があるが、21世紀枠では初めて。また、中村も部員16人と、40年前の12人に続き、今回も「定員未満」だ。

今から部員が増える!?

不来方は10人で昨秋、岩手準優勝と奮闘したが、2月15日までに部員登録が岩手高野連に認められれば、増員も可能だ。部員になれば、堂々とベンチにも入れるし、何よりリスクが緩和される。甲子園出場を機に、入部希望者が出てきても不思議ではない。しかし、選出の最大の理由がこの部員10人を評価した点で、「少人数でも頑張っている全国の球児へエールを送る」(渡会氏)ためだから、主催者の言葉を信じて、甲子園でも10人で堂々と戦って欲しい。それぞれのチームの選出理由こそが、21世紀枠の意義そのものであり、責任でもある。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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