大企業の給料は高いのか安いのか
経団連の実施した「定期賃金調査結果」がなぜか注目を集めているようです。
【参考リンク】大企業の平均給与「月39万円」ってどうなの!? 経団連調査に驚きの声...これでは賃上げ無理?
一応言っておくと、毎年やっているものなのでタイミングや中身になんらかの意図があるものではないです。
ただ、見慣れない人にとっては新鮮な内容なのは事実でしょう。良い機会なので要点をフォローしておきましょう。
調査結果から浮かぶ日本企業のリアル
まず定期賃金調査結果というのは、毎月支払われる月例賃金について経団連傘下企業を対象に取りまとめたものです。
役職別の賃金もまとめられ、役職ごとの年齢も示されていますが、これは平均年齢であって昇格した年齢というわけではありません。
昇格する年齢は係長でおよそ20代後半~30代前半、課長で30代半ば~40代前半といったところでしょう。
上記のレンジはそのまま昇格できるタイミングを示しており、その間に昇格できなければずっと上がれないことになります。
なお係長ポストは組織のフラット化にともない廃止する企業も多く、課長以上が実質的な管理職ポストとなっている企業が大半です。
誤解する人も多いですが「きちんと勤続すれば20年目あたりで課長ポストに上がれる」というような意味での“年功序列”はすでに形骸化しています。
筆者の感覚でいうと、大卒総合職であっても、その過半数は課長以上に上がれないまま生涯ヒラ社員というのが実際ですね。
また、今回の調査結果からは、各ポストの高齢化がほとんど改善されていない点も見てとれます。
日本企業では、50代半ばにさしかかった管理職のポストを外したり(役職定年制度)、思い切った若手の抜擢などを通じて組織の若返りを図り続けています。
筆者はそろそろ役職者の若返りがはっきり数字に表れてくるかと期待していましたが、少なくとも本調査を見る限りでは目立った効果は出ていないように見えます。
大企業の給料は高いのか安いのか
なお本調査は毎月支払われる給料が対象であり賞与は含まれていません。また、ここ最近の日本企業のトレンドとして、基本給ではなく賞与を通じて従業員に報いようという動きが顕著です。
毎月の給与だけを見るとパッとしない印象でも、賞与として6か月分くらい上乗せしてみればだいぶ印象も変わってくるでしょう。
ただ、それでも他国のグローバル企業と比較すると、従業員規模3,000人以上の企業でせいぜい年収700~800万円程度というのは寂しい気もします。
残念ながら、日本人の平均賃金は米国の6割弱しかなく、OECD平均をも下回っているというのは厳然たる事実です。
まとめると、たぶん「定期賃金調査結果」を初見の人の印象よりは大企業の従業員は多く貰ってはいるけれども、それでも世界的に見ればとても高給取りとは言えないということになります。
やはり「終身雇用では一度雇ってしまうと解雇も賃下げも難しい=だから労使で協力しつつ安く抑える」という構造的な問題にメスを入れない限り、日本人の給料は頭打ちという状況が続きそうです。