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本人は出場しなくても、そのバットと下着(!)がワールドチャンピオンをもたらした

宇根夏樹ベースボール・ライター
左からJ.ヘイワード、M.シーザー、D.ロス Oct 14, 2016(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

シカゴ・カブスのマット・シーザーは、外野手や代打としてレギュラーシーズンの107試合に出場したが、ポストシーズンでは、どのシリーズもロースターに入れなかった。にもかかわらず、シーザーはポストシーズンで時の人となった。

チームメイトのアンソニー・リゾーは、リーグ・チャンピオンシップ・シリーズ第4戦の2打席目を終えた時点で、28打数2安打(打率.071)とスランプに陥っていた。長打と打点はどちらもなかった。だが、リゾーは3打席目にシーザーのバットを借りてホームランを打つと、その後もシーザーのバットを使い続け、37打数16安打(打率.432)、3本塁打を含む長打8本、10打点を記録した。

同じくチームメイトのアディソン・ラッセルも、リーグ・チャンピオンシップ・シリーズ第3戦までは24打数1安打(打率.042)と打てず、やはり、長打も打点もなかった。それが、第4戦にホームランを含む3安打を放ち、以降は40打数12安打(打率.300)、3本塁打(5長打)、13打点を記録した。ワールドシリーズ第6戦では、史上最多に並ぶ6打点を挙げた(「ワールドシリーズの1試合6打点は、今年のラッセルが4人目。その価値は7年前の松井秀喜より高かった」)。

ラッセルが使ったのは、シーザーのバットではない。アンダーウェアのレギンスだ。アンダーウェアを忘れたラッセルが、シーザーにもらったらしい。シーザーはインスタグラムに「僕から幸運のアンダーウェアを借りなくても、@saxxunderwearで買えるよ!」と書き込み、その商品を紹介している。

リゾーやラッセルのように、ジェイソン・ヘイワードもシーザーから何か借りるべきだったかもしれない。ヘイワードは好守で貢献し、失敗なしで4盗塁も決めたものの、打席では48打数5安打(打率.104)、0本塁打、1打点に終わった。ワールドシリーズで対戦したクリーブランド・インディアンスは、7試合とも右投手を先発させたが、ヘイワードは左打者ながら、最初の3試合はスタメンから外された。FOXスポーツのクリス・バーは、第2戦が始まる前に「ジェイソン・ヘイワードは再び第2戦もカブスで最も高給取りのベンチウォーマーに」と題した記事を発表した。ヘイワードは昨オフ、8年1億8400万ドルでカブスに入団した。

シーザーは2014年にメジャーデビューし、2年続けて出場試合を増やしている。まだ27歳。これからポストシーズンに出場する機会はあるだろう。その時はもちろん、幸運のアンダーウェアを履き、幸運のバットを手にして。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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